65.まさか、暴走?
会場がざわつき、運営の多分偉いおじさんが、デス抹茶さんに言う。
「不正は不正ですよ。どんな理由があろうとも、です」
その後、審判でもある運営のお姉さんからマイクを借り、運営のおじさんが叫ぶ。
その叫んだ内容は、デス抹茶さんを失格にして、もう2度とテイマーズグランプリには参加できないようにするということだった。
そして、それによって優勝は現時点で唯一の準優勝者である、私になりそうな話だった。
デス抹茶さんに負けた参加者もいたので、そこに関しては不公平になってしまい申し訳ないと、運営の人達は会場の皆に頭を下げた。
互角の戦いだったし、私としては最後まで戦いたかったけど、今後の運営の風紀に関わる的な意味で、運営はそれを許してはくれなかった。
確かに、不正は駄目なことだからね。
よっぽどのことがない限り、決められているルールを破ることは駄目なことだと、私でも思う。
実際私はテストの点数が、5教科合計100点代くらいしかとれないくらいの脳味噌だけど、カンニングしようと思ったことはない。
まだ将来のこと深く考えてないし、特にいい点を取りたいともそこまで思わないからね。
それにルール違反は大きなリスクがある。
だから、私はそんなことできない。
でも、デス抹茶さんはリスクをおかしてでも、勝ちたかったんだろうね。
私の場合はなんとなく手に入れた強い力で、この大会を勝ち上がってきた。
だから、勝ちたいって想いでは、デス抹茶さんに負けてたんだろうなって思う。
というか、私の場合ルール違反してないってだけで、私がモンスター枠で参加するのも割とズルいと思ったりするけどね。
皆に肯定されて、最初に感じた”ちょっとズルいかも”って感覚が消えかかっていたのは、反省点だと思う。
それもあって、戦いは最後まで続けたかった。
「デス抹茶さん……」
試合の中止が、運営の偉いおじさんに正式に宣言されたあたりから、私は変身を解除している。
私はデス抹茶さんになにか言葉をかけようとしたけど、そんな雰囲気じゃなかった。
「くそっ……! くそおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「!?」
デス抹茶さんが叫ぶ。
そして、その叫びでエラードラゴンの目が赤く染まる。
「エラアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
エラードラゴンのHPゲージが全回復したと思ったら、今度は咆哮。
けど、その咆哮はただの咆哮ではなかった。
「お、おかしい! HPゲージが!」
皆のHPゲージが消失していた。
ということは……このフィールドをただのダンジョンと同じ仕様にしたってこと!?
試しに自分のほっぺをつねったけど、痛い!
痛覚もあるし、やっぱり普通のダンジョンと同じ仕様だ!
なんで!?
「み、皆逃げろ!」
お客さん達が叫びながら逃げる。
よく見たら、エラードラゴンは私の視界から消えていた。
暴走している!?
フィールド内を移動して、この会場を次々と破壊していく。
「ったく! ようやく出番だぜ!」
ココロちゃんが刀で飛んできた破片を、次々と斬っていく。
運営の人達も、そのおかげで無事だ。
「おい、エラードラゴンをカードに戻せ!」
通常のダンジョン化した今の会場では、皆痛覚もあるし、死んだら2度とダンジョンには入れなくなる。
「私からもお願い!」
私も言ってみたけど、駄目だった。
「止められるものなら止めてみろ」
止める気はないみたいだ……。
「もっと暴れろ! ……って、は?」
一瞬の出来事だった、エラードラゴンが主であるデス抹茶さんに襲い掛かった。
危なかった! けど……!
「ちっ! 大丈夫か?」
師匠がデス抹茶さんを、間一髪で助けた!
私もなんだか戦うことになりそうだし、スキル【魔法少女】で変身する。
私はマジカル☆ファイアをけん制として、エラードラゴンに放つ。
相変わらず、火球を弾かれちゃうけどね。
「ちっ! 駄目か!」
師匠もデス抹茶さんを安全な場所に置いた後、エラードラゴンに剣で攻撃するけど、攻撃が通用しない。
『師匠! 師匠は運営の人達とデス抹茶さんの避難を!』
「はぁ!? 子供だけ置いていける訳ないだろ」
『でも師匠の攻撃性能じゃ、エラードラゴンは無傷だよ! 多分こうなったら私くらいの攻撃性能を持ってないと、無理だと思う!』
「だが……」
『大丈夫! 私の場合なぜか変身してると痛覚がほぼ0だから!』
「だとしてもだ。いいのか? ここで死んだら2度とダンジョン探索できなくなるんだぞ!? おまけにあいつは暴走してる。さっきよりも強力だ」
確かに、師匠の言う通りだ。
でも、やるしかないんだ!
だって、まだ勝ってないしね!
『師匠! チョココロネダンジョンみたいな感じでなんとかします!』
皆の力でね!
試合外だから許して。
「……ったく、またダンジョン探索付き合う約束だけしておくぞ」
そう言うと、師匠は運営の人達やデス抹茶さん、そして避難が完了していない人達の避難の手助けを始めた。
そして……。
「お待たせしました!」
『ソラちゃん!』
ソラちゃんが来てくれた!
よしっ! じゃあ、あれをやろうか! ココロちゃん! ソラちゃん!
『ソラちゃん。【融合】を!』
チョココロネダンジョンの時みたいに、ソラちゃんのスキルでココロちゃんと融合すれば、力は大幅にアップする。
多分勝てるハズだ!
「えっと……覚えていませんか?」
『なにが?』
「あの後、融合使えなくなったって言いましたが……」
って、そういえばそうだった!
『ピ、ピンチだね!』
「いえ、そうでもありません」
『え?』
「融合には劣るかもしれませんが、1つになる方法はなにもスキルを使うだけじゃないのですよ!」
ソラちゃんはカードから、メカキメラのライムを召喚する。
「ぶっつけ本番ですが、いきますよ! ルカさん、ライム!」




