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64.デス抹茶の過去

☆☆☆


 現高校3年生のデス抹茶は中学1年の時、Utubeで動画投稿を始めた。

 中学生の間、空いた時間のほとんどをUtubeにささげた。


 たかが数年と思うかもしれない。

 だが、中学生の数年は非常に重要な時期であり、貴重な時間だ。


 そんな貴重な時間を犠牲にし、デス抹茶は動画制作を行っていた。


 しかし、だ。


「なんで? なんでチャンネル登録者が増えないの……?」


 デス抹茶 (当時は全く別な名前だった)のチャンネルは、動画をほぼ毎日投稿しても、チャンネル登録者がほとんど増えなかった。

 勿論、こんな風に愚痴をこぼすようになったのは最初からではない。


 半年間は、「最初はこんなものだよね」といった感じで愚痴を言わずに、地道に動画をアップしていたのだ。

 だが、問題はその後だ。


 明らかに他の投稿者に比べて、伸びが悪いと感じ始めた。

 数字で言ったら、半年間でたったの10人しかチャンネル登録をしてくれなかったのだ。


 デス抹茶は焦った。

 イライラすることも増えたが、なんとか耐えていた。


 そんなある日、関連動画にある、とある動画を思わずクリックした。


「なんだこれ……?」


 内容はゆっくりしている某実況ソフト……のキャラクターだけを使い、ボイスや動きはなく、黒背景に読みにくい配列の文字が、デカデカと表示されているだけのものだった。


「ふふっ」


 デス抹茶は笑顔になった。

 きっと、小学生が頑張って編集したのだろう。

 そう考えると、微笑ましかった。

 応援したくもなった。


 が。


「は……?」


 その笑顔はすぐに消えた。


「は?」


 チャンネル登録者数。

 それがデス抹茶の目に入った。


 チャンネル登録者数……23人。


「なんで? なんでこんなに雑な編集でチャンネル登録者が……? おまけに動画の時間もほとんどが2分以内。私はちゃんと動画時間もこれよりは長いし、有名Utuberを参考に、編集に莫大な時間をかているんだぞ?」


 怒りが爆発しそうだった。

 どうして自分のチャンネルより、チャンネル登録者数が多いのだろうか?


 いや、待て。


「そっか……数年前に始めたからか!」


 そうだ。

 長年やっているからだ。


 だとすれば、おかしくない。


 デス抹茶は、チャンネル開設日を見る。


「2か月……?」


 デス抹茶の予想は外れた。

 自身のチャンネルより、もっともっと後に作成されたチャンネルだったのだ。


「返せ……」


 デス抹茶は自室で静かにつぶやいた。

 そして、その後机を思い切り叩き、叫ぶ。


「返せ!! 私の大切な時間を返せえええええええええええ!!!!!!」 


 その後、デス抹茶は布団に顔を押し付け、1人で泣いた。


 そして後日、デス抹茶は色々調べ……あることを決意する。


「チャンネル登録者を買う」


 Utubeのチャンネル登録者を増やすサービス。

 そんなものが実在する。


 Utubeの利用規約違反だが、別にかまわなかった。


 デス抹茶は天井に向かって、1人つぶやく。


「多分、私が登録者を買っていることがバレたら……。

 “そこまでして人気になりたいのか”……そう言ってくる人もいるかもしれない。

 で? それのなにがいけないのかな? そこまでして人気になろうと思うことのなにがいけないのかな?」


 デス抹茶の最終目標は、“有名になること”であった。

 動画を投稿するのはその手段に過ぎない。


 だからこそチャンネル登録者という数字が、何よりも欲しかったのだ。


 動画という媒体を選んだ理由に、楽しそうだったからというのも勿論あるが、それでもあくまで最終目標は有名になることだ。


 なので仮にバレた時にその行為ではなく、そこまでしてでも有名になりたいという、気持ちが否定されるのを考えると思わず叫んでしまいそうだった。


「だが、今は買えない」


 現在は中学生。

 バイトはできない。


 となると、実行できるのは高校に入ってからということになる。


 ということで、デス抹茶は計画をたてた。

 中学生の間は動画投稿に集中し、できるだけ動画のクオリティもあげる。


 そして、高校生になったらバイトをして、そのお金で登録者を買うのだ。

 ただ、高校に行くには勉強も頑張らないといけない。


 かなり困難だが、登録者を買いまくって有名になることを考えると、苦には感じなかった。


 そんなデス抹茶だが、中学3年生のある日、ストレス発散の為にダンジョン探索を始める。


「かわいい……」

「エルーン!」


 そして、緑色のトカゲのようなドラゴンのような、モンスターと出会う。

 多分弱いだろうということが、ダンジョン探索者素人のデス抹茶にもなんとなく分かった。


 その後、今は貴重品だが、当時はそこまででもなかったテイムグローブを使用してテイマーとなる。


 だがモンスターが弱いだけでなく、探索者の才能も悲しいことになかったデス抹茶は探索するたびにストレスがたまっていった。

 しかし、エラードラゴンはかわいい。

 探索しない日でも、エラードラゴンとの交流を目当てに、ダンジョンに行くこともあった。


 そして、ある日偶然にも、グレートシードを見つけてしまうのだ。


 当時のデス抹茶はよくわからず、このアイテムをエラードラゴンに使用した。

 すると、エラードラゴンの姿は大きくなり、見ただけで強そうになったのが分かった。

 更には知能も高くなったようで、指示も不要になった。


 そして、テイマーズグランプリの存在を知り、参加することになった。


 Utubeとは違う形にはなったけど、やっと有名になれる!

 これで不正をしなくてもすむ!


 そう思った彼女であったが。


「あのアイテム使ったモンスターを参加させると、不正になるの!?」


 なんと不正になるのだった。

 だが、調べてみると今まで成功例がなく、バレない可能性が高いことが分かった。


☆☆☆



☆龍崎 ルカ


 デス抹茶さんはしばらく、放心状態になっていた。

 多分1分くらいだと思う。


 もし言いがかりだったら、かわいそうだ……。

 なにか私にできることがないかと考えていると、デス抹茶さんは叫んだ。


 なんだか、少し怖かった。


「不正っていうのはなぁ!! 運も才能もない人間に与えられた特権なんだよ!

 私みたいな人間が、運や才能の差を埋める為に必要な行為だ! それのなにが恥ずかしい!?

 それに……それに……私はただ、努力に対して、結果という名の報酬が支払われてなかったのを、貰っていただけなんだよ!! それのなにがいけない!!」


 デス抹茶さんの叫びが、会場に響き渡った。

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