第9話 レベルとジャンク屋
薄皮を剥いて塩をひとつまみ、そのまま箸を口に運べばホクホクとしたアオゾラ豆の素朴な風味が口いっぱいに広がった。
「うーん春だねぇ」
日本酒、錦桜。こいつをちびちびやりながら舌鼓を打つ。
名前に惹かれ頼んでみたが、これはなかなかまろみがあって悪くない口当たりだ。
「いい店だろ?」
「ああ、気に入った」
ゴウがパーティー仲間とよく利用している店だけあって俺の懐事情からするとちょいと高めだが、偶の機会だ、今日はケチらず楽しもう。
「で、さっきはどうして止めたんだ?あのナイフ、粗悪品には見えなかったが」
「粗悪品ではないが、価格には見合わんな。そもそもゴブリンナイフにしては要求レベルが高すぎる」
「要求レベル?そんなの書いてあったか」
「ウェポンカバーに45と書かれた紙が貼られていただろう?ああいう店ではあれが必要レベルの表記なんだ」
「45、マジかよ。それじゃあ使えねぇな」
モンスターを倒すことで上がるレベルは身体能力や肉体の強度・スキルの効力・寿命などさまざまなもんに影響している。
例えばレベル1のまま生涯を終える人の平均寿命は日本だとだいたい100歳くらいだが。
上位の冒険者、とくに国家指定戦力と呼ばれるレベルが四桁もあるような連中は歴史の教科書に載ってるような時代から生きてるわけだ。
まあ寿命に関しては二桁くらいのレベルではそこまで伸びないので、冒険者だからといって必ずしも長生きというわけではない。
むしろ、モンスターとの戦いで命を落とし早死にするイメージのほうが強いくらいだ。
「というかハジメ、ジャンク屋に居たってことはまさか?」
「おう、ちょっとしたトラブルがあってなダンジョンに潜り始めた。とはいえまだレベルは5だし、あの時買うのを止めてくれて助かったぜ」
冒険者の強さの指標でもあるレベルだが、これは装備にも関係していて。
要求レベル45の武器をレベル5の俺が使ったとしても、本来の性能の1%も発揮できないのだ。
ちなみに本人なら感覚的に分かるレベルだが、他人のレベルや武具の性能を看破する『鑑定』系のスキルは割と一般的なものなので見栄を張ってレベルを盛っても、見る人が見ればすぐにバレちまう。
「ダンジョンって……おいおい、一体何があったんだ?」
「――ってなわけで、ガボチャ芋の木は全滅。新たな食い扶持を求め、ダンジョンへってわけだ」
「そうか……そいつは大変だったな。とはいえこの短期間でレベル5になるとは、流石ハジメだ」
「褒めても何も出ねぇぞ」
ゴウは昔からこういう奴だ。
スキルが一つしかない俺をバカにするんじゃなく、一つしかないスキルを褒めてくれるような男だ。
「そういうことなら、いきなりジャンク屋を使うのはオススメしないぞ。ああいう店に格安で卸される品の大半は要求レベルに問題があるか性能に問題があるかのどちらかだからな」
「性能?ゴブリンナイフはゴブリンナイフじゃないのか?」
「同じゴブリンナイフでも特効値なんかに振れ幅があるんだ。大袈裟にいえば特効値が1でも100でも同じゴブリンナイフとして売れる、店側としては嘘はついていないからな」
「うげえ、マジかよ」
「ああ、とはいえ質のいい品は高いからな……。いっそのこと、自力でのドロップを狙ったらどうだ?」




