第4話 新規メッセージ(27)
あれから分かったのは、一対一じゃ割と余裕だった緑スライムも複数いると面倒だということだ。
魔法のような範囲攻撃が使えない俺は、緑スライムの群れに火球を撃ち込んでドーンと一網打尽とはいかない。
どうしても一体ずつ相手することになるため、キックでコアを露出させているうちに別の個体が攻撃を仕掛けてきたりするわけだ。
とはいえ、緑スライムの攻撃はその場で力を溜めてからすっ飛んでくるタックルだけなので何度かくらったあとはだいぶ避けられるようになってきた。
「よしよし、けっこう素材も集まってきたな」
緑スライムの素材の中で一番価値があるのは無色魔石だが、コイツらの大きさが座布団くらいなので、一体から採れる魔石の量もかなり少ない。
定期的に再発生しているのか、緑スライムはそこらじゅうに居るのでかれこれもう数十体は倒してきたが、目標金額の一万円にはまだまだ全然届かないだろう。
(けど、なんだかいい気分だぜ)
モンスターを倒して素材を手に入れる、確実に何かを得ている達成感。
畑仕事でも芋って名前の癖に木に実るガボチャ芋を枝からもぐ時が一番楽しかったし、そう考えるとダンジョンの中で何かを得る作業は一番楽しい収穫を繰り返してるようなもんだ。
「おっと」
緑スライムを倒しながら真っ白なフロアを進んでいると両開きの大扉が現れた。
一瞬、強力なモンスターが宝を守るボス部屋の可能性が頭を過ったが。ボス部屋はストーンドアのダンジョンには出現しないはずなのでただエリアを区切るための扉だろう。
(だいぶ戦闘にも慣れてきたし、ちょっと覗いてみるか)
いきなり全開にはせずマズそうならすぐ閉められるよう、片方の扉をゆっくりと押していく。
(あれは……!)
ドアの隙間から先のフロアの様子を伺えば、角を生やした緑肌の小鬼……所謂ゴブリンがいた。
奴は耳の穴に指を突っ込みほじくるのに夢中になっていたので、ドアの隙間から覗く俺にはまだ気付いていない。
(どうする、やってみるか……?)
緑スライムと同じ低級モンスターとはいえ初の人型だ。
ただの枝っきれのようだが、棒状の武器を持っているし戦闘力は緑スライムより上だろう。
「……!」
ドアに手を掛けたまま暫し思案していると、突然、ポケットに入れていたスマホが激しく振動した。
(ちょちょちょ)
慌てて扉を閉じ、スマホを取り出せばホタルからの着信がちょうど切れた。
そういえば、YouTu-neで動画を見た後通知音が鳴らない集中モードに切り替えたのをすっかり忘れていた。
着信だけバイブレーションがオンになっていたせいで、急にビックリさせられたぜ。
「でえ!?」
(新規メッセージが27件!?)
すべてホタルからだ。
まさかアイツに何かあったのか?
(ッ、とにかく戻らねぇと)
「で、ハジメ。今何時だと思ってるわけ」
「……夜の9時です」
「翌日の、ね」
「ご心配おかけしましたー!!」
現在、4月8日夜9時。
ダンジョンに入ったのが4月7日夜8時頃なので、どうやら俺はほぼ丸一日ダンジョン内に籠っていたらしい。




