第2話 ボコる棒
午後8時。
俺はそこらの駆け出し冒険者より酷い見た目の装備を纏いダンジョンの入り口に立っていた。
流石に何も準備せずダンジョンアタックするほどの冒険野郎ではないので、安い素材を買い付けアイテムクラフトの知識を生かし武器や防具を自作していたらこんな時間になってしまった。
見てくれを整えるだけの技術がないので不格好なつくりになってしまったが、武器も防具も最低限の性能は確保してある。
「頼むぞ、我が愛刀ボコる棒」
メインウェポンのボコる棒……文字通り木の枝を握りやすく加工しただけの棒だがレシピ通り作ったので武器攻撃力は『5』あるはずだ。
攻撃力5、冒険者でない人にはぴんとこないかもしれないが市販されている金属バットや包丁の攻撃力を数値化するならおおよそ『3』になるため、ボコる棒は十分武器になりえる性能だ。
金属バットや包丁より木の棒のほうが強いのもなんだか不思議な話だが、ダンジョン産、もしくはアイテム職人がダンジョン産の素材を使いクラフトしたアイテムは理屈に囚われない力をもっているのだ。
だからそう、余った素材でこしらえたこのボロい丸盾も制作者である俺自身が不安になるような見た目をしているがキッチンにある鍋の蓋とかよりは高い防御力を誇るはずだ……はずだよな?
作ったアイテムの素材は全て自費なので、臨時収入の一万円はもうほとんどなくなってしまった。
家にはまだ手を付けていないクラフト素材があったが、あれはギルドに納品するアイテム用の物なので勝手に使うわけにはいかない。
とはいえ、ギルド関連の店で売られている完成品をそのまま買えばもっと高くつくわけで、ギリギリ一万円以内に収めた自分を褒めてやりたいくらいだ。
おっさんだって褒められたいのだ、他人に褒められないのなら自分で褒めるしかない。偉いぞ俺。
「それじゃ、いくか」
回復薬とうのアイテムを詰めた登山用のバックパックを背負い、いよいよ準備万端。
俺の初ダンジョン攻略が幕を開けた。
「ほほう、結構広そうだな」
背中越しにストーンドアが閉まる音を聞きながらそんな感想を抱く。
ダンジョン内は光源らしきものが見当たらないのにコンビニの店内くらい明るく、これなら用意したダンジョン用ランタンの出番はしばらくなさそうだ。
(こんなに明るいのは入り口近くだけかもしれないが、周りが見やすいってのは助かるな)
ランタンは流石に俺の腕前では作れないので持ち込んだアイテムの中じゃ一番高くついたが、最悪ダンジョン攻略が無理となってもコイツがあれば、いや、いれば電気代が多少ケチれるので完全に無駄になる事はない。
「それじゃあ一先ず、お前さんは休んでていいぞ」
ランタンの中にいる『光りツムリ』を無駄に刺激して疲れさせないよう、バックパックのサイドホルダーに固定しておく。
電球のように周囲を照らす不思議な甲羅を持ったこの小さなカタツムリもダンジョン産の生き物だ。
「さて、とりあえず行けるとこまでいってみるか」
ヤバそうになったら引き返せばいい。
まずはそうだな、初期投資した分のお金を取り戻すことを目標にしてみよう。




