第15話 属性相性
「緑スライムのコアに苔花付きスライム苔……粘液を少々と」
ヒバナにショートソードをクラフトエンチャントしてもらうことに決めた俺は、彼女から渡された必要素材のメモを確認していた。
クラフトエンチャントは再構築する際に素材を追加するのだが、特定の素材を足したからといって必ずこの効果が付与されるといった法則は今のところ判明していない。
ただ、強力なモンスターの素材の方が強力な効果が付きやすいことは確かで、そのぶんクラフト自体が難しくなるので職人の腕が問われるわけだ。
ヒバナはまだ見習いなのであまり難易度の高い素材は扱えない、まあ扱えたところでそもそも俺が調達できないが。
このメモに載っているような素材はアヤカさんの鍛冶屋にも在庫はあったのだが。練習とはいえ、タダで打ってもらうのに素材まで出してもらうのは悪いので自力で集めることにした。
「おいおい、また変わってやがるぜ」
準備を整えダンジョンに突入すると、またまたフロア内に変化が起きていた。
黄緑に色付いた緑ブロック、苔むした苔ブロックは前回もあったが。今度は新たに濃い緑の深緑ブロックが出現していた。
(ぱっと見スライムたちには変化が起きていないが……)
記録のためにアップと引きで何枚か写真を撮影しておく。
「あとは……ゴブリンの小角だけだな」
スライムフロアでの素材を集め終え、メモ書きの最後にあった小角を採りに次のフロアへ向かう。
(まだエンチャントまえだが……こいつを試してみるか)
ショートソード。
攻撃力はボコる棒と同じ5だが、刃物なので物理攻撃の中でもゴブリンに一際有効な斬撃属性で攻めることが出来る。
「っ……!」
フロアドアを開けた瞬間、一匹のゴブリンと目が合った。
思わず息を呑むが、これは好都合だ。
(スライムのフロアに一匹だけ誘導しよう)
「ギャギャ!」
俺を発見し突っ込んでくるゴブリンを足払いでこかし、その隙にフロアドアを急いで閉じる。
「ギャギャ!?」
「へへ、これでもうお仲間は呼べないぜ」
なんだか悪役みたいな台詞が出ちまったが、前回は増援に苦しめられたからな。
「ぬッ」
ゴブリンの攻撃を丸盾で防ぎ、押し返す。
そのまま引かず、一歩踏み込み、枝を持った奴の右手を――。
(斬るッ!!)
「ギャイ!?」
確かな手ごたえ。
痛みから枝を手放すゴブリンだが、腕の切断には至らない。
(まあ、想定内だ)
モンスターも人と同じく、レベルの分だけ肉体の強度が増す。
普通だったら刃物で切られて血がドバドバ出るような場面でも、ちょっとしたかすり傷ですんじまう、俺たち冒険者が身を置くのはそんな世界だ。
じゃあなんで解体用ナイフはあんなスパスパ刃が通るんだと疑問が湧くが。
理由は大きく二つあって、一つは死ぬとレベルの効果が解けるから。それでも硬いやつは硬いが、生存時ほどではなくなるわけだ。
人間の場合、高レベル者が亡くなると伸びた寿命の反動などで肉体が瞬時に崩壊し、灰のように消えちまうが……モンスターには基本寿命がないので高レベルのモンスターを倒したからといってその死体が一瞬で消滅するようなことはない。
二つ目の理由は解体用ナイフ自体にあって、冒険者が使うダンジョン産のナイフには死体特効が付与されている。これにより死んだモンスターの素材がある程度楽に剥ぎ取れるわけだ。
ただ、死体特効があるからといって間違ってもアンデッド系のモンスターに解体用ナイフで挑んではいけない。アイツらの中には死体のように見える奴もいるが、見た目がそうなだけで実際に死体が動いてるわけではないからだ。
「ギャ……ガッ……」
二回目ということもあり、今度はだいぶ冷静に立ち回ることが出来た。
(やっぱ同じ攻撃力でも、ボコる棒より少ない手数で倒せたな……)
つまりそれだけ、属性相性が重要ということだ。
モンスターの中には弱点属性でしかダメージを与えられない奴もいるというし、魔法が使えない俺はいずれ色んな属性の武器を揃える必要がでてくるだろう。
「よし、これで素材は揃ったな」




