第13話 ハンマー女
「おーい!おっさん、その武器どうするんだ?」
「誰がおっさんじゃ!って、誰だあんた?」
鑑定の結果ただのコモン品と判明したショートソードを腰にぶら下げ歩いていると、片手に金槌を持った女に声を掛けられた。
まだ春だというのにランニング一枚だし、なんだか目もキマってるし、もしかしなくても不審者か……?
「あ、あれ……?あたしなんか警戒されてる……?」
「そりゃ――」
(ウェポンカバーをしてない剥き出しのハンマーを持ってんだから、警戒されるだろ……)
冒険者のような一部の職種は街中での武器の帯刀・所持を許可されているが、外を出歩く際はウェポンカバーと呼ばれる収納具に必ず仕舞う決まりになっている。
市街地にモンスターが出現した際などの緊急時は独断で武器を抜くこともできるが、そういった場面でもないのに武器を使って人を脅したりすれば、あたりまえだが犯罪になる。
「えっ……あ゛!? このハンマーは違くてさっ、誤解、誤解だって~!!」
俺の視線に気付いたのか、ハンマー女は手をわたわた振りながら慌て始めた。
「お、おい落ち着け。というかハンマーを振り回すなっ」
「うわ~んごめんなさーいっ」
薄々気付いていたが、この様子を見るに危険人物ではなさそうだ。
「あイタっ!?」
……自分が振り回したハンマーで自滅してるしな。
「すまない、うちのバカ弟子が迷惑をかけて……」
「ずびばせんでした……」
「あーいや、べつに被害を受けたわけでもないし、そんな、顔を上げてくれ」
どうやら俺に話しかけてきたハンマー女こと赤井ヒバナは鍛冶屋見習いだったらしく、騒ぎを聞き駆けつけてきた師匠のおかげで誤解が解けた。
「まったく、外に出る時は道具を置いてけと何時も言っておるだろ」
「イタタタ……!イタひでふ師匠!ほっぺをつねらないでくだひゃいよ~!」
頬をつねられ涙を浮かべている弟子のヒバナは俺と同じ人間族だが、師匠のアヤカさんは異界化浸食融合によってダンジョンと同時期にこの世界に現れた友好種族の一つ、鬼人族の女性だった。




