第12話 鑑定屋ムフユ
アイテムの納品を済ませるついでに、これまで集めたモンスターの素材をギルドに買い取ってもらった。
一番いい値段がついたのは苔花付きのスライム苔で、次いで無色魔石、ゴブリンの小角といった感じだった。
だが、実際に取引してみて初めて分かる改善点も多く。
まだ慣れてない最初の頃に剥ぎ取った苔なんかは無駄な切れ込みなどがマイナス評価となり買い取り額が下げられてしまった。
特に顕著だったのは魔石で、俺がコアをぶっ叩いてスライムを狩っていたせいか中にある魔石にも細かなひびや傷が入っていて、こいつもマイナス評価を喰らい値段が下がった。
逆にいうとデカい緑スライムはコアを攻撃せずに倒していたため、そいつから採れたと思しき美品はちゃんと適正価格で買い取ってもらえた。
結構な数の素材にマイナスがついちまったのは残念だが、ただ厳しいだけではなくしっかり評価するものはしてくれていて、流石ギルドお抱えの素材査定師、見事なプロの仕事だった。
アイテム納品と素材の売却で多少財布も潤ったので、俺はさっそく鑑定屋でドロップした剣を調べてもらった。
「こ、これは……コモン品のショートソードですね、はい」
「コモン品?」
分厚いぐるぐる眼鏡をかけた鑑定師の女性は「簡単に言うと特殊な効果などが付与されていない品です」と続けた。
「そっか……まあ、そんなもんだよな」
そう簡単に凄い装備が落ちてたらみんな苦労しないだろう。
「どど、どうしますか?うちは買取もやってますけど」
「いや、せっかくだし持って帰るぜ。はじめてドロップした武器だし、思い入れがあるからな」
「あわわ……!そ、そうだったんですね。わたしったらそうとは知らず、すみません、すみません……うう」
「いやいや、謝ることないって。っと、それじゃあ物判じの敷紙も10枚頼む」
「は、はい!お買い上げありがとうございますっ」
上に乗せた物をその場で鑑定してくれるダンジョン産アイテム『物判じの敷紙』。
端から端まで紙の上に収まらないと鑑定できなかったり、あまりに強力すぎる品だと全ての効果が表示されなかったりと欠点もあるが、ドロップしたもんをその場ですぐに調べられるのはかなりの利点だ。
それに、ダンジョンで手に入るアイテムや装備の中には使用者にとって不利益になる効果をもった所謂『呪われた品』が紛れていることもあるので、大まかにでも鑑定できれば被害を受けるまえに対処できるってわけだ。
俺が立ち寄ったこの鑑定屋では、物判じの敷紙10枚購入で鑑定料一品無料のキャンペーンをやっていたので、一番値段が安い小サイズの敷紙を5枚、中サイズを3枚、大サイズを2枚買っておいた。
一応、特大サイズも売られていたが。特大サイズはダンジョン産の家具や彫刻なんかを持ち帰る前に使う物なので今のところは無縁な品だ。
「で、ではその、またのお越しをお待ちしております……ふへへ、ふへへ」
ぎこちない接客スマイルで俺を見送る店主さん。
キャンペーンはお得だし接客も丁寧なんだが鑑定屋はライバルが多く、最近店を出したばかりのここはまだ客足が少ないみたいだ。
だが、俺も最近冒険者をはじめたばかりで、同じく開店したばかりのこの店にはなんだか親近感を覚える。今後鑑定が必要な時はここ『鑑定屋ムフユ』のお世話になるとしよう。




