第11話 おじさん大興奮
『次はそーっと、そーっとだよ~……』
「オーケーそーっとだな……」
(刃を差し込んで、表面の苔だけ削ぎ落とす……っと)
初心者向け動画のガイドを頼りに、焦らず丁寧にナイフを走らせる。
「よしっ」
最初は少し手こずったが、何回か挑戦しているうちに苔と粘液の分離作業もだいぶ上手くなってきた。
(へへっ、コツさえ掴めりゃこんなもんよ)
粘液がついたままのグチョんグチョんな状態でも売れるらしいが、その分価値が落ちるし保存しとける期間も短い。
こういう作業は一度覚えれば後々ずっと役立つので、面倒がらずにチャレンジしていこう。
「おっと、こりゃ珍しい」
苔の表面にぽつぽつ黄色い突起物が生えている。
これは苔花といい本当は苔の一部が色付いているだけなのだが、遠目からだと小さな花に見えることからそう呼ばれるようになったんだとか。
苔花が生えた苔には毒への耐性を高める効果があるため、低級耐毒ポーションの素材になる。
解毒ポーションがあるのに耐毒ポーションがいるのか?って思うかもしれないが、ダンジョンには歩くだけで毒になるような毒沼なんかのエリアもあり、そういう場所を探索する時、発症する度に解毒ポーションを呑んでいてはキリがないので耐毒ポーションが重宝される。
「苔花付きはこっちの瓶だな」
効能が違う素材はその場で仕分けて鞄にしまう。
登山用のバックパックじゃどうしても持ち運べる量に限界があるし、そのうち金が貯まったらダンジョン産のアイテムバッグも買わないとな。
(って、おいおい。金を稼ぐつもりが、欲しいもんがどんどん増えてってるじゃねぇか)
まあ目標があった方がやる気が出るし、適度な欲はあった方がいい。
「……7時、もうそんな時間か」
8時には家を出て、朝のうちに梱包したアイテムの納品を済ませたい。
「アイツで最後にするか」
ずりずりと此方へ前進してくる、一際大きな緑スライム。
奴を倒したら一度切り上げ、朝飯にしよう。
「ラストーッ!!」
渾身の横スイングを受け、緑スライム(大)の体がブチャと弾け飛ぶ。
ひたすらスライムを倒し続けた甲斐あって、今ではサイズを見ただけでだいたい何発で沈められるか読めるようになってきた。
「さて、コアを回収し……お、おお!?」
飛び散った粘液の中に、沈む一本の剣。
震える手で粘液を払い、ゆっくりとそいつを拾い上げる。
「これは、おお、これは……!これは……えっと、なんだこれは?」
はじめてのドロップにおじさん大興奮だが、鑑定スキルがない俺にはなにがなんだかさっぱりだ。




