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REMNANT RECORD~ストーリー未読の世界一位の廃ゲーマーは、倒した敵の物語を知らない~  作者: 霜月ルイ
第一章:技神国奪還編

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7:覇王、借金を増やす。

 応接室を出た俺とミラは、ギルドの掲示板前まで戻ってきた。


「依頼が少ねぇ……しけてんなぁ。常設依頼とかねぇのかよ」


「そのように言われましても……」


 ミラは申し訳なさそうに顔を背ける。


「ま、なんとなく理由はさっき分かった。まともな報酬を出せる依頼主なんて、貴族くらいしかいねぇんだろ?何をするにも税金、税金ってこった」


「リンドウ様……あまりそういったことを言わないでください。私の首が飛びます……」


 すまんな、ミラ。

 でも愚痴の一つも言いたくなるんだよ。

 冒険者の数が減ってるのもそういう理由だろう。


「そういえばさ、モンスター狩ってきたときに素材って売ることになるだろ?買取でどのくらい税金もっていかれんだ?」


「そうですね……倒したモンスターによりますが、素材売却税は、平均で売却額の2割ほどですね」


 ってことは100Gで売れても20Gは税金で持ってかれるってことか。

 世知辛いねぇ……。


「それともう一個聞いていいか?」


「私が知っていることでしたら何なりと」


「この辺……具体的に言うなら、アルセディアから一番近くの鉱山で採れる鉱石って、鉄と銅、魔鉱、それとミスリルだよな?」


 掘りつくされて枯れてるとかないよな……?

 それがないとだいぶ詰みなんだが……。


「……リンドウ様、それらの鉱石は確かに採掘できますが――」


「お、ラッキーだな。じゃあ討伐依頼ついでに鉄とミスリル掘りに行くか」


「話は最後まで聞いてください。鉱脈の採掘権は貴族の方がお持ちなので、勝手に採掘するのは重罪に当たります」


 おーい……なんだよそれ。

 結局詰みじゃねぇか。


「ですが、抜け道はあります」


 お、なんだいミラえもん!

 そんなグレーな方法があるのかい?


「まだ発見されていない鉱脈から採掘し、採った鉱石を市場へ流さず、ご自身で使用するのであれば……発覚する可能性は低いかと」


「市場に出したら?」


「ほぼ確実にギルドの調査が入ります。どこで、何を、どれだけ採掘したのかを確認されます」


「新しい鉱脈だった場合は?」


「国による調査のあと、採掘権がオークションへ出されます。最終的には、ほとんどの場合、貴族の方の手に渡ります」


「……ほんと、ぐちゃぐちゃに腐ってんなこの国」


「……否定はしません」


 なぁるほどね。

 まぁ、この国の上の連中を血祭りにあげてやることが目標の俺からしたら、別に街の外で誰にも見つからず素材や鉱石を蓄えるのは造作もないことだ。


 ただ、利権というものが絡んでくるなら話は別だ。

 見回りの兵士なんかもいるだろうし、見つかったら一発でお尋ね者だ。


 今のレベル1の状況でそれは避けたい。

 まだ召喚士の()()もしてないことだしな。


「はぁ~。じゃあ暫くは、ちょっと遠めのモンスター討伐依頼で稼ぐしかねぇのかぁ……」


「そうなりますね」


 まったくもって、面倒くさいことこの上ない。


「単発の高額依頼とかあったりしない?」


「あるにはありますが……」


 ミラは一枚の依頼書を手に取った。


「こちらになります」


 渡された依頼書は採取系のものだった。


 えー、なになに?

『娘の病気を治すために、月光草という希少な薬草が必要だ』


 月光草?そんなもんその辺に生えてるだろうに。

 基本報酬は無し……ランクも不問、成功報酬で50,000G……5万!?


「おい、ミラ」


 俺は小声でミラに声をかける。


「月光草って、そんなに希少なものなのか?」


「そうですね、市場への流通がほとんどなく、貴族様のオークションでは一株30万Gで取引されることもあるとか……」


「30!?」


 あんなどこにでも生えてる草が?!

 ってことはこの依頼主の貴族、相当冒険者の足元見てんな……。


 あーでも、なんか『レムオン』で月光草納品のサイドミッションやったなぁ。

 あれって、何の病気だったんだっけか……。


「ちなみにこの依頼主の娘さんはどんな病気なんだ?」


「クライブ伯爵のご令嬢ですね。なんでも睡眠時間が日増しに長くなり、最期には目覚めなくなる病気だとか……」


「ほーん……」


 あのミッションそんな内容だったのか。

 でも、まぁいい。即金で5万G手に入るならやらない手はない。


「じゃあ、ミラ。この依頼受けるから、ちょっと出てくるわ。流石に夜中にはギルドって閉まってるよな?」


「いえ、ギルドは夜間でも営業しておりますよ」


「え、マジ?」


「はい。三交代制なので、昼夜問わずギルドは開いております」


 税金の支払いにしてもそうだが、色々やってる24時間営業の施設とか、やっぱりここコンビニじゃねぇか……。


「そういうことなら分かった、夜中には戻ってくる。ちなみになんだが、コレットって村に井戸はまだあるか?」


「コレット村でしたら存じておりますが、井戸があるかどうかまでは流石に把握しておりません……」


 よし、村自体はまだ残ってんだな。

 なら直接行って確認するか。


「オッケー、分かった。それじゃあ最後に一個だけ聞いていいか?」


「はい?なんでしょう」


「この国の一番強いやつのレベルっていくつだ?」


「そうですね……一番強い方となると、騎士団のサイラス団長でしょうか。レベルは50代だったかと……」


 あぁ、そりゃあゼフィロス(天鯨)にも負けるわ。納得。

 七災は基本的にプレイヤーレベル100のカンストが前提として設計されている。

 さらに、レイド組んでやっと倒せるモンスターだ。

 俺はソロで討伐時間20分切ってたけど……。


「これは思ったよりも早くどうにかできそうだな」


「何がですか?」


「ほら、あれだよ。国家転覆」


「本当に、今すぐ実行へ移されるおつもりなのですか……」


 ミラがあきれ顔でこちらを見てくる。


「何言ってんだ、本気も本気だ。こんな腐った蜜柑が俺の国だなんて認めねぇ」


「……ですが、実際問題どうされるおつもりですか?」


「頭を挿げ替えるだけなら一か月あればできる。レベル50程度の戦力しかいねぇならどうとでもなるんだが……。困ったことに後釜がおらんのだよ」


「リンドウ様がまた統治なさればいいではありませんか」


「やだよ。俺内政とか全部周りにぶん投げてたんだから」


「これが初代覇王とは、周りが聞いたら眩暈で倒れるでしょうね」


「これっていうな、これって」


 ミラのやつ、ここ数時間で言うようになりやがって……。

 ん?ってかこいつって上級受付とかって言ってなかったか?

 ということは結構事務能力高いのでは?


「よし、なんかいい感じで行けそうだな」


「何がですか……」


「お前、国取り終わったら俺の補佐な」


「寝言は寝て言ってください。というか、20Gも払えない人の補佐は嫌です」


「お前ほんとさぁ……」


 あのガキんちょがこうまで捻くれて育つだなんて誰が思うよ?

 まぁ、ミラを補佐に引き込めれば内政は何とかなるだろ、きっと、おそらく、めいびー。


「ま、とにかくだ。月光草採ってくるから、夜中にまた顔出すわ」


「私は勤務時間外ですが」


「そう固いこと言うなよ。じゃ、日が変わったらギルドに月光草持ってくからよろしくな」


 そう言って俺は意気揚々と街を出たのだった。


 ♢


 さてさて、これから月光草を採りに行くわけだが、あの草は夜の決まった時間、それも5分間だけしかポップしない特殊な草だ。


 月光草は、月の魔力が溜まる特定の土地にしか根づかない。

 ただし『レムオン』では採取地点が攻略サイトに載っていたため、初心者でも簡単に手に入れられる薬草だった。

 毎晩21時から、わずか5分間だけ花を開く。


 採取地点と時間さえ知っていれば、入手自体は難しくない。

 代わりに、時間帯を指定されるというちょっとだけ入手が面倒臭いアイテムなのだ。


 そういえば、あのミッションって月光草を納品して終わりだったはずだが、本当に草だけで病気が治るもんなのかね?


 まだ夕方だし、とりあえずコレット村に井戸があるかだけでも確認しに行くか。

 そう遠い距離でもないしな。


 そんなことを思いながら歩くこと数時間。

 俺の記憶からは程遠い、かなり寂れたコレット村に到着した。


 村人は住んでるみたいだが、どこか空気が重い。


 さて、お目当ての井戸は残ってるのかねぇ……


 結論から言うと、井戸はあった。


「よし、それじゃあステ画面で詳細確認でもしますかね」


『レムオン』のステータス画面には、『詳細表示』という異世界もののラノベなどでよく見る鑑定に近い機能がついている。

 アイテムや設備、モンスターへ視線を合わせれば、名称や基本的な情報が表示される。


 もっとも、プレイヤー同士のステータスは確認できない仕様だったのだが。

 それは置いといて、さっそく井戸に視線を合わせ、『詳細表示』を起動する。


【次元の井戸】

『10,000Gをこの井戸で消費することでスキル『インベントリ』を獲得できる』


 よっし、変わってないな。

 初心者の頃は革の鞄などで持ち物のやりくりするのだが、この井戸で散財することで無限に入るストレージスキルを獲得することができる。

 これがアプデで追加されるまでは本当に地獄だったなぁ……。


 っといかんいかん。


 俺は慌ててステータス画面のワールドクロックを確認する。

 現在時刻は20時20分。


 よかった、月光草が採取できるようになるまであと40分もある。

 これで時間がすぎてたら明日の夜まで野宿になるところだった。


 それからコレット村を出て、近くの草原に向かう。


 待つこと30分。

 月の光に照らされ、白い花が開く草が現れる。


「お、いいね。3つあるなら一つは納品して、残りは……売ればかなりの金になるな」


 とはいえ、今の国で希少素材を堂々と売れば、採取場所を嗅ぎ回られるのは間違いない。

 ひとまず持ち帰ってから考えるか。


 無事、月光草を手に入れることに成功し、アルセディアへと向かう。


「にしても、腹減ったなぁ…」


 それもそのはず、ここはゲームではなく現実。

 何も食わなければ腹は減る。水を飲まなければ喉が渇く。


 近くを流れる川の水をたらふく飲んで空腹を紛らわす。

 途中少し休憩を挟みながら帰りを急ぎ、ようやくアルセディアの城門が見えた頃には、午前2時を回っていた。


 さすがにもう限界だ。

 腹は減った。足は痛い。今すぐギルドへ月光草を持ち込んで、飯と寝床を確保したい。


 そんなことを考えながら門をくぐろうとすると、夜番の門兵が俺の前へ手を出した。


「通行税、20Gだ」


「……は?」


「街へ入るなら20G」


「俺、今日の朝にもそれ聞いたんだけど……」


「街へ入るたびに必要だ」


「……」


 手持ちは当然、0G。


 結局、俺はもう一枚の立替証を受け取ることになった。


 どうやら通行税20Gを返すために街を出た結果、俺の借金は40Gに増えたらしい。


お読みいただきありがとうございます!


プロローグが終了し、今回より第一章「技神国奪還編」開幕です。


国を取り戻すと宣言したものの、現在のリンドウはレベル1、所持金0G。

しかも通行税を返すために街を出た結果、なぜか借金が40Gに増えました。


まずは金策、レベル上げ、そして武器作りから。

世界一位だった覇王の、120年後の攻略がいよいよ始まります!


ここまで読んで「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークと下の☆☆☆☆☆からの評価で応援いただけると嬉しいです。


作品への感想やレビューもお待ちしています!

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