↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
REMNANT RECORD~ストーリー未読の世界一位の廃ゲーマーは、倒した敵の物語を知らない~  作者: 霜月ルイ
第一章:技神国奪還編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/83

35:覇王、国を取り戻す――王城

今日は四話投稿です。

奪還編、最後まで見届けてください。

 王城の正門へ着いた頃には、王都の夜はすっかり騒がしくなっていた。


 魔術通信塔から流れるミラの声。


 大通りを西門へ向かう市民。


 何が起きているのか分からず、持ち場を走り回る兵士たち。


 それでも、目の前にある王城だけは変わらない。


 高い城壁。

 堀に架けられた石橋。

 左右へ並ぶ監視塔。


 百二十年前、何度も通った場所だった。


「……面影だけは残ってんな」


 基本的な構造は変わっていない。

 だが、正門の上には巨大なラングレイ家の紋章。

 城壁の縁には金色の装飾。


 石像や旗まで増やされ、誰が支配する城なのかを嫌というほど見せつけている。


 俺が建てた城を、ずいぶん趣味の悪い飾りつけにしてくれたもんだなぁおい。

 建築した奴の前で違法改築とは、いい度胸じゃねぇか。


「取り壊すにしても、金属部分は全部回収だな」


 溶かせば武器か農具には使える。

 建築物を見るだけで再利用まで考えてしまうのは、鍛冶師の職業病かもしれんな……。

 まあ、いいさ。

 改築費用は、王家の財産からきっちり取り立てるんだからな!


「止まれ!」


 正門の上から声が飛んだ。


 弓兵が一斉に矢を構える。

 橋の向こうでは、白銀の鎧を着た王家直属兵が隊列を組んでいた。


 数は、およそ百。

 後ろには魔導士。

 城門の内側からも、まだ増援が集まってくる。

 俺一人を相手にするには、随分と大人数だ。


「武器を捨てろ!」


 隊長らしき男が叫ぶ。


「王都を襲撃した反乱者として拘束する!」


「俺一人に百人以上並べといて、拘束で済ませる気あんの?」


「抵抗しなければ命は保証する!」


「じゃあ、こっちからも一回だけ言ってやる」


 俺は『フィーア』を肩から下ろした。


 巨大な四枚刃が夜の光を反射する。


「武器を置け」


「何?」


「ラングレイ王政は今夜で終わる。降伏する奴は斬らねぇ」


 兵士たちが顔を見合わせる。

 全員が事情を知っているわけではない。

 通信塔から流れた証拠を聞き、迷っている奴もいる。


 それでも、隊長が剣を抜いた。


「放て!」


 矢が空を覆う。


 話し合い終了……っと。

 悲しいねぇ、俺ぁ。


「そっちが選んだんだからな!」


 『フィーア』を投げ放つ。


 四枚刃が回転し、正面から飛んでくる矢をまとめて弾き飛ばした。


「『座標転移(グリッド)』!」


 視界が切り替わる。


 飛翔する『フィーア』の座標へ移動。


 石橋の上に並んでいた兵士たちの頭上へ出る。


「上だ!」


「遅ぇよ!」


 空中で『フィーア』を召喚解除。


 巨投剣が光の粒子へ変わる。


「『ツヴァイ』!」


 右手に漆黒。


 左手に月白。


 二本の剣を召喚し、落下しながら振り抜いた。


 黒い刃で兵士たちの影を切る。


「身体が――!」


 影を断たれた兵士の動きが、一瞬だけ止まった。


 月白の剣を横へ薙ぐ。

 三日月の斬撃が空中へ残る。


「囲め!」


 左右から槍が迫った。

 二本を交互に振るたび、次の剣が軽くなる。


 『双環加速』。


 連撃速度が段階的に上がっていく。


 槍の穂先を切り、剣を弾き、盾の縁を断つ。


 一歩進むたび、兵士が武器を失っていく。


「下がれ!」


「隊列を崩すな!」


「魔導士、撃て!」


 後列から魔法陣が展開された。


 火球、氷槍、雷撃。


 飛んでくる魔法を見ながら、俺は月白の剣を振るう。


 一つ。二つ。三つ。


 空中へ残った『残月』が、少し遅れて魔法へ走った。


 火球が裂ける。

 氷槍が砕ける。

 雷撃の軌道に隙間が生まれた。


 その間を抜け、黒い剣を地面へ突き立てる。


「『影断』!」


 魔導士たちの足元から伸びる魔法陣の影を切断した。


 展開途中だった術式が崩れ、魔力が霧散する。


「馬鹿な……魔法そのものを斬っただと!?」


「人の武器を見て驚いてる暇があったら、早く降伏しろ!」


 兵士の一人が、震える手から剣を落とした。


「俺は……戦えません」


「貴様!」


「通信で聞いたんです! 王家が村を焼いたことも、冒険者を死地へ送ったことも!」


 さらに二人。


 三人。


 武器を置く兵士が増えていく。


「壁際へ下がれ! 武器を持たない奴には手を出さねぇ!」


 それでも向かってくる者は、斬る。


 致命傷を避けられるなら避ける。


 だが、俺を殺そうとしている相手へまで遠慮するつもりはない。


 『フィーア』を再召喚し、城壁の上へ投げる。


「『座標転移』!」


 兵士の列を飛び越え、正門の内側へ移動。


 着地する前にフィーアを解除。


 再びツヴァイ。


 黒と白の斬撃で門の開閉装置を守る兵士たちを吹き飛ばした。


 正面突破。


 ゲームだった頃なら、もっとスマートな侵入方法も使えた。


 隠密。転移設備の悪用。

 空から直接中庭へ降りる。


 だが、今日はこれでいい。


 俺が正面で暴れるほど、敵はここへ集まる。


 その分、ほかの二十五人へ向かう兵が減る。


『全班へ。残る目標は、王城のみだ』


 ザフィラの声が通信へ流れた。


「そうか」


 西門。

 通信塔。

 騎士団本部。

 奴隷市場。


 全部、あいつらがやり遂げた。


 サイラスも討ったのだろう。


 ……よくやった。


 顔を見て言ってやるのは、全員で帰ってからだ。


「なら、こっちもさっさと終わらせるぞ!」


 ツヴァイを振り抜き、王城の正門を守る最後の兵士を倒した。


 ♢


 城内へ踏み込んだ瞬間、灰色の炎が廊下を埋め尽くした。


「死になさい!」


 聞き覚えのない女の声。


 だが、姿には見覚えがある。


 灰色の外套。


 細身の剣。


 王家直属のSSランク。


 『灰炎』メルディア・グレイン子爵。


「西門と騎士団本部から二回も逃げた奴だな」


「撤退よ!」


「逃げた奴は、みんなそう言うんだよ」


 メルディアの顔が引きつる。


「奴隷どもが調子に乗ったくらいで、王家が倒れると思わないことね!」


 剣先から灰炎が広がる。

 俺ではなく、廊下の窓へ向かって。

 その先には城下街。


「王都ごと焼く気か!」


「反乱者へ協力した民に、生きる価値などないわ!」


「お前ら、全員同じこと言うなぁ?!」


 月白の剣を振るう。


 『残月』が幾つも空中へ残り、窓へ向かう炎を切り裂いた。


 灰色の火が細かく分断され、城壁へ届く前に消える。


「私の炎を……!」


「まだ終わってねぇよ……っと!」


 メルディアの足元へ踏み込む。


 漆黒の刃を、彼女の影へ突き立てた。


「『影断』!」


 床に広がっていた灰炎の起点が切れる。


 メルディアの周囲に浮かんでいた火球が一斉に消滅した。


「嘘……」


「スキルへ頼りすぎなんだよ」


 月白の剣を首元へ突きつける。


「投降しろ」


「私が、奴隷に負けた者へ従うとでも?」


「俺は奴隷じゃねぇ」


「奴隷を率いる者も同じよ!」


「そういうところを反省しろって言ってんだよ!」


 メルディアが懐から小さな魔石を取り出した。


 内部に、圧縮された灰炎が揺れている。


 自爆用か。


 城下を巻き込んで、証拠ごと消すつもりだ。


「道連れよ!」


「投降を勧めたからな」


 黒い剣で魔石を持つ手を切り上げる。


 宙へ舞った魔石へ、月白の刃を振るう。


 『残月』が魔石を幾つにも切り裂き、内部の魔力を分散させた。


「な――」


 もう一歩。


 二本の剣を交差させる。


「終わりだ」


 振り抜いた。

 メルディアの身体が、その場へ崩れ落ちる。


『《灰炎》メルディア・グレインを討伐しました』


「三度目はなかったな」


 ♢


 王城の奥から、焦げ臭い匂いがした。


「今度は何を燃やしてんだぁ…?」


 匂いを追い、階段を駆け上がる。


 記憶にある資料室。


 以前は国庫の取引記録や、生産職の納品書を保管していた場所だ。


 扉を蹴破る。


「全部燃やせ!」


「王が逃げるまで、何も残すな!」


 室内には二人の男。


 宰相バルガス・ローデン公爵。


 財務卿オズワルド・ベイル侯爵。


 兵士たちが帳簿を暖炉へ投げ込もうとしていた。


「はい、証拠隠滅の現行犯ねぇ~。おじさん達ぃダメだよ?そんな悪いことしたら」


「誰だ貴様は!」


「今さら自己紹介いる?」


 フィーアを召喚し、暖炉へ投げる。

 巨投剣が炎の前へ突き刺さり、帳簿を投げ込もうとしていた兵士をまとめて吹き飛ばした。


 すぐに座標転移。

 バルガスの背後へ移る。


「ぐっ!」


 首筋へ手刀を落とし、床へ倒す。

 オズワルドが窓へ走った。


「逃げんな、財務担当!」


 フィーアを召喚解除し、ツヴァイの柄を後頭部へ叩き込む。


「国の金をどこへ隠したか、あとで全部聞くからな」


 二人を拘束。

 生きていることを確認する。


「燃えた資料は?」


 暖炉の中を覗く。

 表面が焦げた程度。

 原本の多くは残っている。


「間に合ったか」


 回収はあとでミラたちへ任せる。

 今は王を逃がさないことが先だ。


 ♢


 王城の最下層。

 記憶どおりなら、この先に緊急転移設備がある。

 百二十年前。

 魔物による王都襲撃や、ユニークボスの侵入に備えて作った脱出用の転移陣。


 正直、使ったことは一度もない。ただの飾りだったし。

 俺たちは、襲われたら逃げるより全員でボスへ突っ込む連中だったからな。


 扉を開ける。


 室内では、巨大な転移陣が青白く光っていた。


「起動済みか」


 術式は大きく書き換えられている。

 転移対象は王家の血族。

 行き先は、王都北部の離宮。

 王だけは逃がす。

 残された市民や兵士がどうなるかは、考えていない。


「最後まで徹底してんな」


 管理者権限を試す。


『登録情報が変更されています』


『現管理者権限を確認できません』


「俺が作った設備なのに、俺を締め出すなよ」


 解除している時間はない。

 なら、壊す。

 フィーアを肩へ担ぐ。


「違法改造された設備は、建築主の判断で撤去しまぁす!」


 転移陣の中央へ投げ放つ。

 刃が中枢核へ突き刺さった。

 遅れて魔力が暴れ始める。

 暴走する前に、座標転移。

 フィーアを掴み、そのまま核を床から引き剥がした。

 青白い光が消える。


『王城緊急転移設備が停止しました』


「これで逃げ道は一つ減った」


 地下通路はテオ班が押さえている。

 転移も使えない。

 あとは、玉座の間だけだ。


 階段を上がる。

 廊下には倒れた兵士。

 武器を捨て、壁際へ座り込む者。

 俺を止めようとする者は、もうほとんどいなかった。


 城の最上階。

 大きな両開きの扉の前へ立つ。

 金色の装飾。


 ラングレイ家の紋章。


 その向こうに、現在の王がいる。


 百二十年前。

 ここに玉座なんてものはなかった。

 俺が座っていたのは、会議室に置かれた安物の椅子だ。

 内政官や生産職の代表たちと、夜中まで言い合いをした。


 誰かが飯を持ち込み。

 誰かが机で寝て。

 最後には投票で決めた。


 俺一人の言葉だけで、国が動く場所じゃなかった。


「さて」


 扉へ手をかける。


 勝手に作られた玉座と。


 そこに座る偽物を見に行こう。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


西門、通信塔、騎士団本部、奴隷市場。

仲間たちがそれぞれの役目を果たす中、ついにリンドウが王城へ到着しました。

『フィーア』による投擲と座標転移。

そして、新たに完成した双剣『ツヴァイ』。

これまで準備してきた多武器戦闘を駆使し、リンドウは王城の正面から帰還します。

『灰炎』メルディアを討ち、宰相と財務卿を拘束。

王家の転移設備も停止し、残された場所は玉座の間のみ。


次話――初代覇王と、百二十年間その名を利用してきたラングレイ王が対峙します。

王を倒すのではなく、王ではなくなる瞬間を見せるための戦いが始まります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。