20:覇王、伏魔殿へ。
一か月で、今のアルセディアを落とす。
そう宣言したところで、俺たちはたった26人しかいない。
俺一人が強くなれば、王城へ殴り込むことはできる。だが、通信塔、騎士団本部、奴隷市場――王都の各所を同時に押さえるには、部隊を任せられる奴が必要だ。
まずは指揮官を育てることにした。
アウラ、テオ、カレン、ノアの四人を高レベルまで引き上げ、残る二十人を率いる隊長にする。
ザフィラは……まぁ勝手にあいつは強くなるだろ。
そのための場所として選んだのが、アルセディアの北にある高難度ダンジョン――推奨レベル65以上の『蝕月の伏魔殿』だった。
ついでに、そこでしか手に入らない素材も回収する。
国を取り戻すために必要な、俺自身の新しい武器を作るために。
♢
翌朝。
俺はアウラ、テオ、カレン、ノアの四人を連れ、拠点を発つ準備を整えていた。
武器、食料、ポーション、野営道具。
ダンジョンへ籠もることを考え、必要な物資は多めに『インベントリ』へ入れてある。
一方、ザフィラも残る二十人を連れ、『亡者の地下墓地』へ向かうところだった。
「ザフィラ。残る20人はお前に預ける。俺が帰ってくるまでに、全員まともに戦えるようにしろ」
「簡単に言うな!」
「表のグールキングを延々と周回させりゃいいさ。個人のレベル上げより、まずは連携だ」
「それくらい私にも分かっている!5人ずつ四班に分け、交代で攻略させるつもりだ」
おっ、ちゃんと考えてるじゃねぇか。
脳筋黒猫から、少しずつ指揮官らしくなってきたじゃねぇの。
うんうん、いい傾向だねぇ。
「あ、それとな、お前自身もレベル80を超えとけ」
「20人見ながらか!?」
「ああ」
「無茶を言うな! 私は四つの班を順番に見なければならないんだぞ!」
「班が休んでる間に、ロードをソロで回せばいいだろ」
「私に寝るなと言っているのか!?」
「総指揮官になる奴が、部下より暇なわけねぇだろ。これだからお前は駄目猫なんだよ」
「いつ!私が!総指揮官になった!」
「今だ今。それじゃ、頼んだぞ~!」
「勝手に決めるなぁぁぁああああ!」
黒い尻尾が勢いよく地面を叩く。
だが、本気で嫌がっているわけではない。
文句を言いながらも、ザフィラの金色の瞳は既に20人の姿を追っていた。
誰が重い荷物を持っているか。
誰の顔色が悪いか。
誰と誰を同じ班にするべきか。
自然と全体を見ている。
「……一人も死なせんじゃねぇぞ」
「当然だ」
短く答え、ザフィラは俺を真っすぐ見た。
「そちらこそ、4人を無事に連れ帰れ」
「誰に言ってんだ」
「いつも無茶をする、馬鹿な男に言っている」
「心外だな。俺ほど安全第一の男はいねぇぞ?」
「どの口が!!」
最後まで怒鳴るザフィラへ手を振り、俺たちは北へ向かって歩き始めた。
♢
目的地は『蝕月の伏魔殿』。
アルセディアの北端を越えた先にある、推奨レベル65以上の高難度ダンジョンだ。
拠点からは徒歩で丸二日。
まだレベル20前後しかない四人にとっては、入口付近のモンスターに触れられただけでも即死しかねない。
だからこそ、レベル上げには都合がいい。
今のこいつらに必要なのは、適正レベルの敵を安全に倒し続けることじゃない。
高レベルのモンスターから得られる大量の経験値だ。
「荷物なら、私がもう少し持てる」
街道を歩き始めて間もなく、アウラがノアの荷物へ手を伸ばした。
「だ、大丈夫です。これくらいなら……」
「無理をするな。昨夜も遅くまで杖の練習をしていただろう」
アウラは自分の荷物に加え、大盾まで背負っている。
それでも他人の状態を見て、荷物を持とうとする。
前衛としては悪くない。
ただし――。
「アウラ。全部自分で背負おうとすんな」
「だが、私が一番体力に余裕がある」
「お前一人が疲れ切ったら、戦闘になったとき誰が前に立つんだ?」
「……確かに」
「助けることと、何でも代わりにやることは違う。覚えとけ」
アウラが小さく頷く。
その先では、テオが一人でかなり前まで進んでいた。
「テオ! 戻れ!」
呼びかけると、木の上から狼耳の少年が音もなく降りてくる。
「周囲にモンスターはいない。街道の先も確認した」
「それを報告しないまま先に行ったら、残された俺たちには何も分からねぇだろ阿呆」
「でも、俺なら見つからない」
「見つかるかどうかの話じゃねぇ。偵察で得た情報を持ち帰らなきゃ、散歩してるのと同じだつってんだよ」
「……分かった」
テオが少し不満そうに耳を伏せた。
こいつの能力はそこらの斥候職よりはるかに高い。
だが、一人で生き延びるための動きが染みついている。
仲間へ情報を渡すという意識が、まだ足りない。
「遅いですね……」
今度はカレンが振り返った。
「この速度では、到着まで二日以上かかってしまいます……」
「予定どおり進んでる。焦んな」
「早くレベルを上げたいんです!今のままでは、王都で足手まといになってしまいます……!」
「だからって移動で体力を使い切ってどうすんだよ」
「私はまだ動けます……!」
「お前だけ動けても意味ねぇんだって」
カレンは唇を結び、歩調を落とした。
強くなりたいという意志は、四人の中でも特に強い。
だが、前に出ることしか考えていない。
最後尾では、ノアが杖を抱えながら淡い光を生み出していた。
白い魔力が四人の身体を包み、僅かに足取りが軽くなる。
「ノア。その補助魔法は今すぐ止めろ」
「ですが、皆さんの疲労を少しでも……」
「まだ戦闘もしてないのに、今から魔力を使い続けるな。必要なときに空っぽじゃ話にならねぇ」
「……はい」
ノアは名残惜しそうに魔法を解く。
この子は優しい。
だからこそ、全員を助けようとして自分を削る。
こいつらは戦える。
それぞれ、自分の得意なことも分かっている。
だが、まだ自分の仕事しか見えていない。
隊長になるなら、自分だけじゃなく、周囲の状態まで見られるようにならなければならない。
今回の目的は、単なるレベル上げじゃない。
四人に、他人の命を預かる戦い方を覚えさせることだ。
♢
二日目の午後。
俺たちはアルセディアの北端へ到着した。
かつては国境を示していたのであろう石柱が、街道の両側に傾いている。
刻まれていた国章は風雨に削られ、ほとんど形を残していない。
周囲に衛兵の姿はない。
関所らしき建物も、屋根が半分崩れたまま放置されていた。
「ここが国境なのですか?」
カレンが眉をひそめる。
「昔は、もっとまともだったはずなんだけどな」
ゲームだった頃の北部街道は、生産素材を運ぶ商人や高レベルダンジョンへ向かう冒険者で賑わっていた。
道は整備され、野営地も一定間隔で置かれていた。
今は雑草が街道を覆い、獣の骨が転がっている。
魔物の足跡さえ、処理されずに残っていた。
「国境すら維持できてねぇのかよ……」
国が衰退しているのは分かっていたが……。
だが、かつて自分が歩いた場所を目の前にすると、思っていた以上にくるものがあるなぁ。
俺たちは俺たちで、力をつける。
だけど、王家を倒した後まで考えるなら、腕力だけじゃ足りない。
ラングレイ王家が何をしてきたのか。
その証拠を集められるかどうかは、ミラの働きにかかっている。
ほんと、頼むぞ……マジで。
街道をさらに北へ進む。
日が傾き始めた頃、深い谷の底に巨大な石門が見えた。
月を呑み込む竜。
その彫刻が、左右の柱へ刻まれている。
石門の向こう側に広がっているのは、完全な闇だった。
『『蝕月の伏魔殿』を発見しました』
『推奨レベル:65以上』
「着いたぞ」
四人が石門を見上げる。
「中が見えないな」
アウラが盾へ手を掛けた。
「ダンジョンに入れば見える。嫌ってほどな」
俺は四人をパーティーへ招待し、石門の内側へ足を踏み入れた。
その瞬間、空気が変わった。
外はまだ夕暮れだったはずなのに、門の向こうには夜が広がっている。
頭上には空がある。
しかし星は一つもなく、巨大な黒い月だけが浮かんでいた。
月の大半は何かに喰われたように欠け、残された細い輪郭だけが青白く光っている。
「これが……ダンジョンの中なのですか?」
ノアが不安そうに空を仰ぐ。
「そうだ。一本道を最奥まで抜ければ終わり」
「一本道なら、迷う心配はないですね!」
カレンの言葉に、俺は笑った。
「一本道だから楽だと思ったか?」
「違うんですか?」
「ここから先は、絶対に立ち止まるんじゃねぇぞ……?」
「なんでです?」
「前だけじゃなく、後ろからも湧く」
「先に言ってください!」
地面から黒い腕が伸びた。
同時に、前方の闇から無数の赤い光が浮かび上がる。
『『黒影兵』が出現しました』
『『シャドウウルフ』が出現しました』
『『月喰いの大蝙蝠』が出現しました』
♢
「『フィーア』!」
投げ放った巨投剣が、前方を塞ぐ黒影兵をまとめて切り裂く。
光の粒子へ変わる魔物たちの間をフィーアが通過し、そのまま闇の奥へ飛んでいく。
「『座標転移』!」
座標を入れ替え、敵陣の中央へ転移。
着地と同時にフィーアを掴み、周囲のシャドウウルフを薙ぎ払った。
レベルだけなら格上。
だが、動きも湧く場所も全部知っている。
攻略法が分かっている相手なら、今の俺でも問題ない。
「止まるな! そのまま進め!」
四人へ声を飛ばし、さらに前方を切り開く。
「リンドウ! 後ろだ!」
アウラの声。
通り過ぎたはずの地面から、新たな黒影兵が立ち上がっていた。
そのさらに後ろでは、シャドウウルフが四人を囲もうとしている。
「アウラ! 後方を塞げ!」
「分かった!」
アウラが大盾『バスティオン』を地面へ打ちつける。
黒影兵の剣が盾へ殺到し、火花を散らした。
「カレン! アウラが止めた敵を削れ!」
「任せてください!」
『望月』と『朔月』が月光を弾く。
二本の剣が盾の左右から伸び、黒影兵の首と胴を同時に斬り裂いた。
「右上! 蝙蝠が七!」
テオが投げナイフを放つ。
だが、七体のうち二体を倒したところで、別のシャドウウルフが側面へ回った。
「テオ、見つけた敵を自分だけで処理しようとすんな! 声に出せ!」
「今、言った!」
「数だけじゃ足りねぇ! どこへ来るかまで伝えろ!」
「右後方! 狼が三体、ノアを狙ってる!」
「アウラ、右へ寄れ!」
アウラが盾を滑らせ、シャドウウルフの突進を受け止める。
その背後で、ノアが『冥杖・ウロボロス』を掲げた。
白い魔力がアウラを包む。
「アウラさんへ防御強化を――」
「ノア、アウラだけ見るな! カレンの左腕が切れてる!」
「ですが、アウラさんも――」
「全員へ均等に魔力を配るな! 今、一番必要な奴を瞬時に選べ!」
ノアが一瞬迷い、カレンへ白い光を送った。
「カレン、一人で突っ込むな! お前が前へ出た穴を誰が埋める!」
「このまま押し切れます!」
「後ろを見ろ!」
振り返ったカレンの目に、ノアへ迫る黒影兵が映った。
カレンは舌打ちしながら戻り、その剣を受け止める。
「お前が倒すべき敵は、目の前の一体だけじゃねぇ! 後ろの仲間に近づく敵もだ!」
前から、後ろから、上から。
影の魔物が途切れることなく押し寄せる。
一体一体は、そこまで厄介じゃない。
厄介なのは数だ。
倒しても、倒しても、闇の中から次が現れる。
迷うことはない。
だが、進み続けなければ飲み込まれる。
四人は何度も隊列を崩し、そのたびに俺の指示で立て直した。
そうして、どれだけ戦い続けたか。
ようやく前方に、巨大な扉が見えた。
扉の手前へ足を踏み入れた途端、背後から追ってきていた魔物たちが闇へ溶けていく。
「ここが唯一の休息地点だ」
四人がその場へ座り込んだ。
「これを……もう一周するのか?」
テオが息を切らしながら尋ねる。
「今日は二周な」
「嘘だろ……」
「安心しろ。まだボスが残ってる」
「どこに安心する要素がある!」
♢
巨大な扉を開く。
その向こうには、円形の広間が広がっていた。
頭上には、先ほどまでより遥かに大きな黒い月。
月光の下に、二頭の竜が伏せている。
一頭は、光さえ吸い込む漆黒の天殻。
もう一頭は、冷たい月光を宿す青白い天殻。
『『黒蝕のヴェルノクス』が出現しました』
『『狂月のルナグレス』が出現しました』
二頭が同時に目を開いた。
「よく見とけ。こいつらは片方だけ先に殺すな」
「なぜだ?」
「片方が死ぬと、残った一頭が『双竜喪失』状態に入る。能力が跳ね上がって、攻撃パターンも変わる」
「つまり、同時に倒す必要があるのか」
「ほぼ同時にな。体力を均等に削って、最後だけ合わせる」
ヴェルノクスが影へ沈む。
同時に、ルナグレスが咆哮を上げた。
青白い月光が広間全体へ降り注ぐ。
「四人は入口から動くな!」
フィーアを投げる。
月光に焼かれる直前、座標を入れ替えて上空へ逃れた。
眼下の影から、ヴェルノクスが飛び出す。
「そこだ!」
落下しながらフィーアを振り下ろし、黒い翼を切り裂く。
着地と同時に、狂月の斬撃が迫った。
身を捻って躱し、フィーアをルナグレスへ投げる。
命中し、即座に転移。
二頭の間を行き来しながら、体力を均等に削っていく。
ヴェルノクスが分身を生む。
ルナグレスが狂乱の咆哮を放つ。
だが、この俺が『レムオン』時代に何百周したと思ってる……!
分身の見分け方も、咆哮の範囲も、体力が減った後の行動順も……。
全部覚えてんだよ!!
二頭の体力が残り僅かになった瞬間、フィーアをヴェルノクスの胸へ突き刺した。
「『座標転移』!」
手元へ呼び戻すのではなく、俺自身がフィーアの座標へ移る。
刃を引き抜き、その勢いのままヴェルノクスの核を砕く。
振り返り、ルナグレスが『双竜喪失』へ移行する前に、フィーアを投げ放った。
四枚の刃が青白い首へ食い込み、そのまま核を断ち切った。
二頭の巨体が、ほぼ同時に光へ変わる。
『『黒蝕のヴェルノクス』を討伐しました』
『『狂月のルナグレス』を討伐しました』
背後から、立て続けにレベルアップ通知が響く。
確認すると、四人ともレベル40前後まで一気に上がっていた。
「一周で、こんなに……」
ノアが自分のステータスを見て呆然としている。
「これがパワーレベリングってやつだ」
「今の戦いを、もう一度やるのか?」
アウラの問いに、俺は笑顔を返した。
「あと一周な」
四人の顔が揃って引きつった。
♢
二周目。
今度は、四人にも通常戦闘へ参加させることにした。
一周目より敵の動きが見えている……と思いたい。
アウラは自分が受け止められる数を考え始めた。
テオは敵を発見すると、位置と数を全員へ伝えるようになった。
カレンも勝手に追撃せず、隊列へ戻るようになった。
ノアは全員へ魔法をばら撒くのを止め、崩れかけた場所へだけ支援を送れている。
まだ粗いし、判断も遅い。
それでも、一周目とは見違えていた。
双竜戦では俺が二頭を引きつけ、四人にも攻撃へ参加させる。
「カレン! 黒いほうを削りすぎだ!」
「分かって、ます!」
「分かってる奴は、体力差を二割も開かせねぇ!」
「細かいですー!」
「同時に倒すボス戦で細かくなくてどうすんだ!」
アウラがルナグレスの斬撃を盾で受け止める。
テオがヴェルノクスの本体を見抜き、投げナイフで印をつける。
ノアが狂乱の影響を抑え、カレンが二頭の体力を調整する。
最後は俺が核を砕いたが、戦闘そのものには四人もしっかり参加できていた。
『『黒蝕のヴェルノクス』を討伐しました』
『『狂月のルナグレス』を討伐しました』
討伐通知に続き、四人のレベルが再び跳ね上がる。
アウラ、レベル50。
テオ、レベル49。
カレン、レベル52。
ノア、レベル50。
そして四人の前に、新たな通知が表示された。
『上位職への進化条件を満たしました』
「おい。選択肢が出ても、まだ押すなよ」
「なんでですか……?」
カレンが不満そうに俺を見る。
「ステータス配分と、これからの役割を決めてからだ。上位職は、なりゃいいってもんじゃねぇ」
休息地点へ戻り、一人ずつステータスを確認する。
「アウラはVITを最優先。次にSTRだ」
「攻撃力より、耐久力を上げるのか?」
「お前の役目は敵を一番多く倒すことじゃねぇ。後ろの五人を、一人も欠けさせずに帰すことだ」
「……五人?」
「その話は後だ」
次にテオ。
「AGIを最優先。次にLUK」
「STRはいらないのか?」
「最低限は必要だ。だが、お前は正面から力比べする職じゃねぇ。それと、暗殺者だからって全部AGIへ振るな」
「どうしてだ?」
「運が低けりゃ、罠も毒も肝心なところで外す。致命傷を狙う職だ、LUKを舐めんな?」
カレンはSTRとAGIを均等。
攻撃力だけを求めれば剣が重くなり、速度だけを求めれば一撃が軽くなる。
『双月』の長所を最大限に生かすなら、両方が必要だ。
ノアはINTを最優先。
次にVIT。
「魔術師なのに、耐久力ですか?」
「お前が倒れたら、回復も支援も死霊も全部止まる。後衛だから攻撃を受けない、なんて考えは捨てろ」
「はい」
四人がステータスポイントを振り終える頃には、黒い月がさらに高く昇っていた。
もっとも、伏魔殿の中は最初からずっと夜だ。
時間を確認しなければ、朝なのか夜なのかも分からない。
簡単な食事を取り、四人は休息地点へ横になった。
さすがに二周分の疲労が溜まっていたのか、すぐに寝息が聞こえ始める。
俺は全員が眠ったのを確認し、静かに立ち上がった。
「さてっと」
フィーアを肩へ担ぐ。
「ここからは俺の時間だな」
目的は二つ。
俺自身のレベル上げ。
そして、双剣『ツヴァイ』を作るために必要な二種類の天殻。
黒い石門を抜け、三度目の伏魔殿へ踏み込んだ。
♢
ソロなら、四人を守る必要はない。
前から来る黒影兵をフィーアで吹き飛ばす。
後方から迫るシャドウウルフは、座標転移でまとめて置き去りにする。
蝕月の魔術師が詠唱を始めるより早く、その懐へ飛び込んで核を砕く。
最短ルートを、最速で駆け抜けた。
そして三度目の双竜戦。
ヴェルノクスを影から引きずり出し、ルナグレスの月光を転移で回避する。
二頭の体力を調整し、ほぼ同時に核を破壊した。
『『黒蝕のヴェルノクス』を討伐しました』
『黒蝕竜の硬鱗を獲得しました』
『黒蝕竜の爪を獲得しました』
『『狂月のルナグレス』を討伐しました』
『狂月竜の硬鱗を獲得しました』
『狂月竜の牙を獲得しました』
「……天殻は?」
ないんかーい……。
ってなんか既視感あるなこの展開……。
まあ、そう簡単に出るとは思っていないさ。
天殻はドロップ率0.02%、死霊核と同じ超レアドロップだしな。
頼むから、物欲センサーさん……。
仕事しないでくれよ……?
レベル上げは、思った以上に順調だ。
問題は――。
「素材集めのほうが、面倒になりそうだな……」
お読みいただきありがとうございます。
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