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REMNANT RECORD~ストーリー未読の世界一位の廃ゲーマーは、倒した敵の物語を知らない~  作者: 霜月ルイ
プロローグ

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2/9

2:覇王、無職になる。

 こうして、覇王リンドウの物語は終わった。


 悔いはないと言ったら嘘になる。


 まだまだ作りたい装備のレシピはあったし、今後のアップデートで追加されるはずだったユニークモンスターにも挑みたかった。


 それでも、これでよかった。


 少なくとも、あの瞬間の俺はそう思っていた。




 でも……おかしい。

 俺は死んだはずだ。

 こんな物思いに耽る余裕があるだなんて……。

 まさか現実での自殺は失敗したのか?


 だが、世界は暗い。

 眠っているのに頭だけ起きているような感覚に似ている。


 どこか夢を見ているような感覚だ。


 少なくとも、完全に死ねたわけではないらしい。


 はぁ……やらかした。


 身体を動かそうとしても、指一本動かせない。

 これは植物状態になったか、脳のどこかに障害でも残ったか?


 考えても仕方ない。


 手足の感覚はある。

 少し冷たい風を感じる。


 部屋の冷房もつけっぱなしだったから、きっとそのせいだろう。

 それでも動けないんじゃなぁ……。


『肉体の再構築が完了しました』


 頭の中に、『レムオン』で親の声よりも聞き慣れたアナウンスが流れた。


 何だよ再構築って……『レムオン』はもう終わったはずだろ。

 まさか、サービス終了は嘘でした~とかそんなオチか?


『魂の完全な定着まで残り5…4…3…2…1…、――定着に成功しました』


 今度は魂の定着だと?

 何の冗談だよ、まったく。


 これ以上俺を期待させないでくれ。


『レムナント・レコードの安定を確認。意識の強制覚醒を行います』


 何言ってるのかさっぱりわからんが、とりあえず――


「あばばばばばっばばばばば!!!!」


 身体に異常な電流のようなものが走った。


「いってぇなクソが!!!なんだってんだよ!!!」


 AEDを使うにしろもう少しやさしくだな……って。


「あれ……?」


 知らない天井だ……とはならなかった。


 見覚えのありすぎる草原。

 そして、俺のもたれかかっていたであろう背には大樹。

 眼前には、見知った景色が広がっていた。


 大樹の下から見下ろせる城と、そこから伸びる街並み。

 形は変わり、建物の数も減っている。城壁も、以前より黒くくすんでいた。


 それでも、この場所を見間違えるはずがない。


「アルセディアだ……」


 極めつけにこいつだ。


『覇王:リンドウ ここに眠る』


 俺の作った墓標。

 だが、その墓石は苔むして少し崩れているところもあった。


「『レムオン』……なのか、ここは……」


 いや、でも……。


 頭の中でいろいろな思考が渦巻く。


 俺は死んだはずじゃなかったのか?

 それとも、どこかのラノベみたいにゲームに閉じ込められたか?

 そんな馬鹿げた話があるか、さすがに最終学歴が中卒の俺でもわかる。

 そうだ。これは、俺が見ている胡蝶の夢。いずれ終わるものだ。


 だが、その気配は一向にない。


 でも、さっきのアナウンス……。


 肉体の再構築に、魂の定着。

 レムナント・レコードってのはよくわからんが……。


 そのあたりの情報をまとめて、ひとつの言葉にするなら――。


「……転生?」


 自分でも言ってることが非現実的だということは分かるが、この状況を説明するには『転生』という言葉が一番しっくりくる。


「………おい、おいおいおい。……マジかよ!」


 魂が歓喜に震えた。

 俺は、俺は……!


『レムナント・オンライン』の世界に、転生したのだ!


 ♢


 そうと決まれば話は早い。

 さっそく検証と洒落込もうじゃあないか。


「ステータス!」


 そう言葉にすると、眼前にホログラムが浮かび上がる。

 ゲームではおなじみのステータス画面だ。


 ビンゴ!

 少なくとも、ステータス周りのシステムはゲーム時代と変わらないらしい。


 これでステータス画面が見られないとなると、かなり厳しかったところだ。


 なになに?

 レベルは1、職業欄は空白で……装備も村人の服一式。


「あちゃぁ、これは初期装備だな。しかもレベルもリセットされてるし……」


 ただ、残っているものはあった。


『プレイヤーネーム:リンドウ』


 俺の名前はそのままなんだな……。

 そして、なぜか年齢が17になっている。

 俺を転生させた神様だか、謎のシステムだかが、『レムオン』を始めた頃の姿まで若返らせてくれたらしい。


 レベルも1、装備も、職業もリセット。

 あれだけ積み重ねたものは、全てきれいさっぱり消えている。


 なのに、不思議と悔しくはなかった。


 終わったはずの世界に、もう一度立っている。

 また最初から、積み上げることができる。


 ってことはだ。


「また、一からこの世界を楽しめるんだな!」


 なんという僥倖!圧倒的感謝だ!


「さぁ~て、何から手を付けようか!ワクワクが止まんねぇなぁ!おい!」


 といっても、やることは決まっている。


『レムオン』には職業システムがある。


 剣士、魔術師、拳闘士といった戦闘職。

 鍛冶師、調合士、錬金術師といった生産職。


 プレイヤーは、その中から好きな職業を二つ選ぶことができた。


 戦闘職を二つ組み合わせて純粋な戦闘力を伸ばすもよし。

 以前の俺のように、戦闘職と生産職を組み合わせ、自分の装備を自分で作るもよし。

 生産職を二つ選び、職人として生きることすらできる。


 その組み合わせによって、プレイヤーの戦い方も生き方も大きく変わる。

 それが『レムオン』におけるビルドの基本だった。


 職業を教会か冒険者ギルドで設定する。

 それが、『レムオン』を始めたプレイヤーが最初に行うことの一つだった。


 もちろん、今回の人生でも俺が目指すのは最強。


「それじゃあいっちょ、無職を卒業しに行きますか!」


 目指すは、ハローワーク……もとい、冒険者ギルドだ!


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