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異世界教皇と転生令嬢~最悪のシナリオを塗りつぶす!~  作者: 悠月 風華
第二章 偽りの令嬢
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第4話 「レイシアの実家」

レイシアの実家まで馬車で揺られて何時間かした後、

夕方頃になりアース公爵家の本邸へとやってきた。


教皇であるアリアが令嬢としてアスカ国に来ることになり、

その旨は既に遠隔用通信機で伝えていたため、

レイシアの両親は大袈裟には驚いてはいなかったが、

その表情から緊張していることはヒシヒシと伝わってくる。


「あなた方がレイシアのご両親ですね?

私はアリア・アリシア・チュトラリー。

教皇の位にいるものです」


「初めまして、お会いできて光栄でございます。

レイシアの父、グレアムと申します」


腰をおり、深くお辞儀を返してくるレイシアの父が、

お辞儀をするのと同時に、

端に控えていたメイド達も深々とお辞儀をする。

公爵家であるアース家にとっては、

最敬礼のお辞儀をする相手は王族しかいないが、

アリア達、神聖国のトップの位にいる者にとっては、

国という壁など関係ない。


例えアスカ国の王族であっても、

世界の守護者・創世神の代理人である教皇へは、

最大限の儀礼をもって出迎えることは当然のこと。



それから、各々の話を伺った後、

レイシアの部屋へ向かい、

そこにレイシアの従兄弟を呼んでもらうように、

侍女に頼んだ。


「確かその従兄弟達は、

貴女が転生者であることを理解していると言っていたわね」


「はい。

私自身も信じてはもらえないだろうと思っていましたが……

なんの疑いもなく信じてくれました」


丸い形のテーブルの上には、

豪華なティーセットが並べられていて、

二人は対峙するように向かい合わせに座り、

お茶を楽しみながら話をしていた。


「貴女のご両親とは大違いね。

あの二人からは、欲望しか感じ取れなかったわ」


「えぇ……。私が一番苦手なのは父の隣にいた義母の方です。

彼女はいつも私には怒鳴り散らし、

義妹には優しくしている……。

だから、苦手なのです。

父も私が少しでも上手くいかなければすぐに怒鳴り散らし、

上手くできたとしても、

それが当たり前だと褒めてはもらえませんでしたから」


「それはおかしいわね。

上手く出来たらその事に対して褒めて、

悪いことは悪いと叱ることが親の愛だと思うのに……。

でも確かにあの様子だと、

自分たち優先で動いているでしょうね」


彼らはアリアの前だったからか、

その態度は控えてはいたが、

普通の人よりも長く生きた彼女にとっては、

分かりきったことだった。


親から愛は貰えず、虐げられる日々。

あの公爵夫人にとっては夫の前妻の娘。

それに加えてその前妻の生まれも、

公爵家に嫁ぐ身としてはアスカ国の中で最も良き身分にあった。


だからこそ、初恋の相手であろうとも、

家同士の政略結婚に手出しなどできるはずもなく、

公爵が自分を愛してくれるように裏で色々と動いて、

やっと掴み取れた愛なのだろう。

しかし公爵家には憎き前妻と似た娘がいた。


公爵のグレアムはレイシアに対して、

家族としての情も抱いていないことを知った公爵夫人は安堵して、

今好き勝手にやっているといったところだろうか。

確か公爵夫人の実家は子爵家だったはず。

プライドの高かった前アース公爵が、

彼女を娶ることは許さなかったのだろう。


つまりは公爵夫人にとって、

レイシアの母は愛する人を横取りした女、

ということになる。

レイシアの母にもグレアム以外の愛しい人がいて、

その彼から引き離されたかもしれないのに。

どうやら、どこまでも自分の幸せだけを考えているみたいだ。


そしてレイシアの魂は別世界に元々生きた存在で、

この世界に関してはまだまだ知らないことは多くある。

彼女自身も好き好んでこの世界にやってきたのではないが、

もしかすればこの世界にはない常識を知るレイシアを気味悪いと感じ、

忌み嫌っているのかもしれない。


今でも、転生者という存在がどうして生まれてしまうのか、

それは初の転生者が現れてから800年経った今日こんにちでも、

アリアには分かっていない。

ただの神の気まぐれか、

それとも何か特別な意味があるのか。

それは彼女たち転生者を、

この世界に連れてきた神々にしか分からないことだ。


「レイシア様、御二方をお連れ致しました」


「ありがとう」


どうぞ、というレイシアの声と共に

閉じられていた部屋の扉が開き、

そこからレイシアよりも少し年上の青年が二人入ってきた。


「初めまして創世神の代理人、教皇聖下。

僕はユージと申します」


「弟のリドです。」


レイシアの従兄弟であるこの二人を呼んだ侍女は、

二人が部屋に入ったと同時に、

部屋の外に待機してもらっている。

それは今から話す内容が、

誰にでも聞いていても問題ないことではないからだ。


「では、ここからが確認なのだけれど」


「確認、ですか?」


二人にも空いていた席に座ってもらい、

ゆったりとした体勢で、アリアは話を進める。


「あなた達は、

レイシアがこの世界とは別の世界で生きた存在、

”転生者”であることを知っている。

その上で彼女と接しているとレイシア本人に聞きました。

それは本当ですか?」


「えぇ、レイシアが聖下に仰った通りです。

僕達はレイシアが転生者と呼ばれる存在であることを知っています。

その上で今までと同じように接しております」


「それを聞いた時、あなた達はどう思いましたか?」


「初めは驚きました。

そんなことを言われても、

本当なのかどうか確証がありませんでしたから。

しかし、レイシアは真面目で素直な子です。

彼女が僕たちに対して嘘をついている訳では無いのだと、

当時語ってくれた時に僕たちを見つめていたその強い瞳が、

真実だと告げていました」


アリアの試すような質問に、

ユージ達は緊張に姿勢をビシッと伸ばしながらも、

真実だけを語っていく。

『転生者』という存在は、

あまり広く知れ渡っているわけではない。

しかし、別世界から来た者を『聖女』として扱う国もある。

そのひとつが、今アリアがいるアスカ国なのだ。


特に、アスカ国の王家に近しい者や婚約者などは、

転生者に関しては王族の一員として教育を受ける。

特にレイシアはこのアスカ国の第二王子の婚約者であり、

転生者当人でもある。

そうなれば、彼女の家族たちも当然知ることになるだろう。



「聖下がこちらへお越しになられた理由は、

既にレイシアからの遠隔用通信機で聞いております。

この家ですと、叔父達がいて窮屈でしょう。

既に執事に命じて、お部屋と一通りのものも用意しております」


「話が早くて助かるわ。

あなた達が、レイシアの味方であること、

それがレイシアにとっての何よりの幸福でしょう」


「「ありがとうございます、聖下」」


それから、弟のリドがレイシアの父と義母に、

アリアはこちらの家で客人として滞在させるということを伝えに行き、

夜も更けてしまっていたが、

すぐ近くということでそのまま二人の屋敷へと馬車で移動した──。

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