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14.ラチカとクエスト・1



 数日後のある日。

 たまたまではあるものの、今日の演習はラチカと二人組だった。


 現在、広大な学園内にある野外スペースにて。疑似冒険者の訓練を行っている。

 荒野と森林地帯の間の子みたいな場所で、物陰からの奇襲、および平地での行動をメインに鍛えることができる場所のようだ。


「……ここ最近は毎日みたいにダンジョンで酷い目に遭ってるから、ちょっと寝不足気味ね」

「大丈夫か?」


 眼の下にやや薄い隈を作ったラチカは、あくびを噛み殺しながらつぶやく。

 心なしかトレードマークのツインテールにも、元気がないような気もする。キューティクルが死んでるのか、とは、勿論口が裂けても言わないけれども。


 この数日ほど。

 結局ラチカは、毎日ダンジョンへとついてきている。

 当初は二、三日に一度くらいのペースを、俺もサリエナさんも想定していたのだが……、見上げた根性である。

 そしてそのせいか、格段に実力も向上していた。

 そう――――今の授業カリキュラムレベルの敵ならば、余裕で倒せるくらいには。


魔力素(マギア)……、大気素レギア……、定型(ユレア)……、地原子(アムド)――――、」


 周囲の魔力を呼応させ、杖の先へとチカラを収束させる。そして、


「『絢爛の炎拘束(マギ・ルス・フレア)――――!』」


 呪文を発声すると同時、収束された魔法は一気に解き放たれ、巨大なファイヤ・リザードを炎の檻に閉じ込めた。

 徐々に焼かれていく大きなトカゲ状の魔物。

 本来ならば炎に耐性のある生物だが……、それを打ち破るほどの強い魔力を帯びていた。


「飲み込み早いよなぁ。力圧しも十分にできるようになってきたし」

「だっしゃあああっ! ふふん、どんなもん……よ!」


 若干疲れながらも、拳をにぎり自身を鼓舞するラチカ。……最序盤とはもう全然キャラが違うじゃねえか(というか本来ならば元々こういった性格なのか)。

 根性や泥臭さ丸出しで……、うん、結構嫌いじゃないですね。


「同族性や耐性を持つやつでも、更にそれを上回ればダメージを与えられる。アンタの言ったとおりね」

「そうだな。……とりあえず、もう一回おさらいしとくか?」


 今は学園の授業中ではあるものの、特に監視がついていない状況だ。なので、気兼ねなくこういった話をすることができる。

 ……一応監視魔法の探知も行っておいた。俺には後をつけられた前科があるのでな。

 俺の問いにラチカは「そうね……」とわずかに頷き、続けた。


「まぁ単純な話ではあるわよね。

 火、水、土、闇や光……、攻撃魔法だけでも様々な属性はあるけれど、これらに耐性を持つ奴らがいる」

「うんうん」

「で……、耐性を持つっていうのにも種類があって、」

「大まかに二つ。効かないような環境で生きることで、そういう風に『進化』したパターン。

 もう一つが、そもそも『概念』的に効かないっていうパターン……よね?」

「あぁそうだ。きちんと復習してるんだな。偉い偉い」

「馬鹿にしないで。当然よ」


 フンとそっけない態度をとりながらも、口元は少しだけにやついていた。

 ……うん、ラチカって意外と分かりやすい。わかりやすいのは良いことだ。


 ちなみにこの属性については、魔物側(ほんにんたち)から説明を受けたことを教えている。

 この知識は、カリキュラムではまだ通っていないところのようだ。おさらいをするように、ラチカは知識の復唱を続ける。


「さっきのファイヤ・リザードは、前者にあたるのよね? 炎の多い地域や、暑い地域で育ったこと、自身も炎を生成する器官をもつことによる、『進化』の炎耐性」

「あぁそうだ。そういう生物には、きちんと炎の攻撃も通じる」

「あとは威力の問題……、と。うん、分かってきたわ」


 言葉にすれば割と簡単ではあるものの、実際の戦いの中において実行するのは難しい。

 同じ土俵の勝負、単純なパワー比べで、相手を負かさなければならないのだから。

 それには効率のいい魔力運用が必要になってくるのだが……、まぁ、ラチカすげーって話です。はい。


「で。もう一つの、『概念』的に通じないっていうほうは……、ぶっちゃけ俺も、よくわかってない」

「まぁそうよね……。

 一応該当するのは、炎の精霊とか、身体自体が炎で構成されているような生物……ってことで良いのよね?」

「まぁそうだな。基本的に、その系統の魔力素で体が構成されているような生物には、たぶん効かない」


 下手をしたらその魔力を吸い取られてパワーアップさせてしまうかもしれない。

 だからまぁ、よっぽど困ったときじゃない限り、同属性の魔法は使わないほうが吉である。


「今はおさらいも兼ねてなのと……、たぶん今のラチカなら負けないだろうから、あえて同属性で勝負させてみたけどな」

「分かってるわよ。大体、炎っぽいやつには水系で攻めるっていうのが、魔法以前に普通の冒険者としての定石でしょ?」

「ま、そうだな」


 つまり今は、ナメプさせたってことなんだけども。

 それが出来るようなレベルにまで、この短期間で劇的進化を遂げたということでもある。マジ、ラチカ、スゲー。


「さてと、後はもう何体か小型のモンスターを倒せば終わりだったよな……。どうする? 手分けしててきとうに倒すか?」

「うーん……、あぁでも、ちょっと疑問もあるからさ。まだ教わりながらでも良い?」

「了解だ。……ん?」

「どうかした?」


 平たい大地に伸びた、木々の間から。

 こちらへゆっくりと向かってくるモンスターがいる。


 体長は一メートルないくらいの大きさ。

 半透明でジェル状の体を流体にくねらせ、少しずつ前進してくる。


「あぁスライムか。せっかくだから、アイツも何かの手段で倒してみるか?」

「そうね……。それじゃあ、魔法の威力でも試してみようかな」


 そう言って。

 ラチカはさっきと同じように、


 杖から魔法を、放った。


 ツインテールが暴力的にはためく。


 そして――――






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