10.レッツダンジョン無双・表
補足しておくと。
この学生寮において、門限という概念は存在しない。
普通ならば規律があったり、勉学に励むための時間として強制的な学習時間になっていたりと、色々あるとは思うのだが……。
この学園は完全に実力主義。もちろん風紀を著しく乱すような素行不良はいただけないものの……、きちんとした成績さえ収めていれば、どこで何をしていようと問題ないらしい。
「まぁそもそもこの学園は、学びたいやつが自主的に来るようなところだしな……。
サボるとか、楽をするっていう考え自体があんまり無いのかも」
そこが現代の学校機関と大きく違うところだな。
もちろんキャリアのためにここを卒業したりとかもあるんだろうけど。基本的には高レベルな魔法知識について触れたいという、良い意味でのエリート意識を持ったやつらが集まるのだ。
「それに、寮の部屋一つ一つに防音魔法がかかってるしな。どれだけ外が騒がしかろうが、プライベートを害されることが無い、と」
だからこそ、自室で堂々とメアたちとの通信魔法で連絡をとりあえるし、こうしてダンジョンに潜るという任務を行えたりしてるんだけどな。
「よっと」
魔物を魔法でぶっ飛ばしつつ、一旦休憩がてら腰を下ろす。
トラップ差動装置だったようだが……、体中にまとっていた罠無効魔法により、概念ごと無効化した。
うん、使い慣れてくるとすげえ便利だ。
普通の罠解除方式としては、トラップの種類を判別し、構造やパターンを見抜き、他にもいろいろと工程をはさまなければならないが……。
「概念作用はすげえ便利だよなぁ」
単純な話、罠を罠ではなくするという魔法だ。
この魔法を纏っていれば、こちらへと危害を加えてくる現象に対してオートで発動し、罠を無効化してくれる。
「破壊じゃないから、罠そのものはなくならいからな。そこだけ注意か」
といっても……。
元のパーティに戻ったときを考えると、メアもシャルエールも、そこまで簡単にトラップに引っかかるタイプではないからなぁ。
どっちかと言えば、そういう思考に慣れていない俺が一番危ないのだ。
「おっと」
一服ついていると、目の前から低空飛行の魔物が数匹飛来する。
羽の生えた魔狼。ウィングウルフというモンスターだ。
身体に不釣り合いな大きな翼と鋭い爪が目立つ。
「二十六番、『全塵と知る』」
そんな魔物を、下級炎魔法で一掃。
……油断しているわけではないけれど。正直これくらいの魔物だったら、俺の扱える魔法の中でも下位のもので十分だ。
魔法のことを少しずつ理解していっているせいか、威力も底上げされているしな。
「――――よし、それじゃ、また進むとするか」
本日の残り時間はあと一時間ほど。
どんどん奥へと進もう。
やりたい放題というのは、たぶんこういうことだと思う。
右手から炎魔法を繰り出し、左手から閃光魔法を放つ。
壁が無く、広いエリアにひしめく無限にも思える魔物たちを……、俺は一分足らずで全滅せしめた。
「……つーか、これが普通なんだよな、うん」
俺はうんうんと一人頷き、これまでの冒険を思い出す。
メアと共に冒険するようになってからというもの、危険度が高いところにばっかり行ってたからなぁ……。ゲームで言えば、常にボス戦みたいなことが続いていたのだ。苦戦ばっかりなのも頷ける。
しかしそこはそこ。
俺の中に入っているのは、まさにチート級の魔力(出所・詳細不明)なわけで。
全力を振り絞れば女神すらも打倒し得る代物なのだ。これくらいのダンジョンの魔物なら、本気を出すまでもなく無双できる。
元部下の形状をしている魔物らには申し訳ないが……、うん、めっちゃ気持ちいい。
「まぁ、元部下と同種族を倒すのは、今に始まったことでもないけどな……」
それ言ったら、自分と同種だって屠ってきたわけだし。
なんだかんだ、十年くらい魔王やっていて、俺もこっちの世界に染まっているなあとふと思った。
良い奴は、どんな種族だろうが良い。
逆もまたしかりで、人間にだって、悪い奴はいる。
「いかんいかん、また難しいことを考えそうになっている。
……そんなに頭良くないからな。細かいことは置いておき、ぱーっといけるときはいこう」
まずはこの任務のために全力を尽くそう。
今の俺は、魔物を倒すことしかできなくて。そしてそれが役に立つというのだから、願ったりかなったりである。
「うっし……。んじゃ、もうちょい全力で!」
今日授業で習った、基礎を試してみる。
血管の中や細胞の中に、魔力が『ある』と認識する。そしてそれらを一つの場所に収束させるような『イメージ』をもつ。
……これ、基礎中の基礎らしく。これができて初めて魔法というものを具現化できるのだそうだ。順序があべこべだったんすね、俺は。
「普通の――――炎を、」
出す。
大きく開いた掌から、特大の火球が出る。
フロア一帯を覆いつくすほどの、炎の塊。
「――――おお、こいつはなかなか」
変な話だが……、魔法の『質』がこれまでと違う気がした。
なんというか……、そう、『メアっぽい』感じがする。
「鋭さか? キレっていうか……、なんか説明は出来んが、感覚的に、進化できてる気がするぞ俺!」
小躍りしたくなるような胸中だった。
すげえすげえ。勉強したことがきちんと身になるって、こんなにも嬉しいもんなんだな。
「あとこれ……、この感覚は」
アレだ。
ルーリーを、倒した時の。
初めて『本気』というものを出せた感覚にも似ている。
毛穴とかが妙に熱く、
体の内外に疲労感がうっすらと乗っかる感覚。
「……はは、今日もぐっすり眠れそうだ」
それじゃ、眠る前の運動といこう。
年取って健康を維持するには、そういうの必要らしいし。
よっこらせと、何ともオッサンくさい掛け声をつぶやきつつ通路を進む。……体は若返ってるはずなのに、不思議なもんだ。
待ち受けるは、本来ならば強いであろう魔物たち。
けど残念だったな、魔物たちよ。
今の俺のほうが、お前らよりも強いんだからな!
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