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8.定期連絡・2(メアの場合)



 全力に限りなく近いレベルの飛行を行い、ワタシは他の生物を置き去りにする。


 速く、速く、ハヤく加速する。

 加速圧と魔力の衝撃波により、ワタシの軌道上にいた生物は、全て破砕されていた。


 浮遊魔法、激化。

 飛翔魔法、激化。

 肉体強化による速度増強。

 並びに、貯蓄魔力の射出と吸収の反復。


 塵となった魔物らを確認し、ワタシはふぅと一息ついた。


 ちったあ骨のある魔物共が集まってやがる。が――――、これじゃあまだ豚のところにいた、近衛四天王とやらのほうが気概があるなァ。


 そんな風に考えつつ、更に宙から地面へと、自身の体を落下させる。

 その速力を利用し、一撃。

 高濃度の魔力を凝固させたものを、巨獣の頭蓋へと叩き込んだ。


「ギャギャギャ」


 よし、――――よし。

 戦闘勘は、鈍ってねェな。


 師匠と一緒に行動してからというもの、何のかんの制約が多かったからなァ。全力を出すっていう()が働かなくなるんじゃねぇかと若干心配してはいたが……、何てことは無かったな。


 ゴキゴキと関節を動かし、自分自身の体の好調を確認する。

 痛みは無し。違和感も無し。

 思考回路は正常で、目の前もクリアだ。


 そんな風に、眼力強く。ワタシは眼前に広がる暗黒の大陸を見て……、再び加速する。


 黒き、暗黒の大地。

 イイじゃねえか……。こいつはもうちょっと、楽しめそうだぜ。









「そんなワケでシャルエールは死んでるぞ」

『えっ!? アイツ死んだのか!?』

「バカめ。比喩だ比喩。

 疲れ果てて眠ってるってだけだ」

「あ、あぁそうことね……。

 ルミエラとメアに鍛えられてるからな……。スパルタが過ぎて、死んでもおかしくはないと思ったんだよ』

「ギャッギャッギャ」


 ルミエラに設置してもらっていた映像魔法装置により、ワタシは休憩がてら師匠に現状を報告する。

 現在は結界を張った簡易テント内の安全地帯より、連絡をとっている。

 こうしている間にもルミエラは一人で魔物を殲滅しているハズだが……、まぁ、アレの実力なら大丈夫だろう。


「シャルエールは大体そんなトコだなー……。

 今はルミエラ一人で魔物狩りしてるよ」

『たくましいなぁお前は……』

「それがとりえだからなァ」


 言ってワタシは笑い、今度は逆に師匠に対して報告を促す。


「そっちはどーなんだよ?

 ワタシとの約束、遂行してンだろーなァ?」

『うぐっ……!

 い、いやいや……、しゅ、修行でいっぱいいっぱいで、それどころじゃないかなー……』

「ほう、何かあったか」

『ぐうっ……!』


 ホントにこの豚は態度に出やすいよなァ。

 そこが可愛いところだぜ。好き。


「ワタシとの約束――――そっちでハーレム要員(・・・・・・・・・・)捕まえて来い(・・・・・・)ってハナシ。

 何かあったンだろ? 聞かせろ」

『……お前にはお見通しだな。

 いや、ハーレム要員に加えるかどうかは置いといて、いきなりラッキースケベをかましちまったんだよ。それを思い出しただけ』

「チッ! なんだつまんねえェな。

 ブチ犯すくらいのことはやってのけろよ、魔王サマよぉ」

『恐ろしいこと言うなや!』


 映像の向こうの師匠は、狼狽してこちらへとツッコミを入れる。

 愛玩動物じみたブサイクさがあるな、うん。外見が若くなったとはいえ、心根が変わってねェからか、表情の作り方は一緒だ。


 ――――あーホント、早く会いてェなあ……。


「変わらずブサイクで安心したぜ、師匠」

『え!? 突然の悪口!

 な、何だよ……! お、俺だってこの数日間は、ちょ~っとだけだけど、クラスの女の子に噂されたりしてんだからな?』

「そりゃそうだろ。師匠はイイオトコだし」

『今度は突然のお褒めの言葉!?

 俺、どんな感情でお前と話したらいいか、全然わかんないんだけど!』


 師匠が『学園』とやらに潜入してから……、約十日ほど経っているが。

 ホント、ノリが変わってなくて安心したぜ。


「で? この十日ほどで、他のオモシロやらかしエピソードはねェのか?」

『べっ、……別にないぞ』

「嘘つけ。メ神から聞いてるぞ。

 魔力制御できなくて、魔力実習? だか何だかで、教室丸ごと昏睡状態にさせたとか何とか」

『うっ……! し、知ってたのか……!』

「ギャギャギャッ」


 笑いつつも、ワタシは考える。

 現在師匠とワタシの状態は――――何の枷も無い状態だ。『相互関与呪縛(ギフト・ギアス)』なんかもほとんどない、まっさらな状況。

 つまりは、ただの魔王と勇者の関係に戻っている。


 魔王セリが、勇者アールメイアに負けた原因は、実は魔力量の高さではない。

 魔力の質は違えど、総合的な最高出力という部分は、ほぼ同じだと言ってもいいだろう。


 しかしながら、勇者(ワタシ)は勝利を収め。

 魔王は敗北した。


 その要因は簡単で。

 魔力というものを、うまく使えているかどうか。その差だ。


 ワタシは生まれながらの超絶天才だったから、この莫大な魔力をどう使えば一番効率的なのかを分かっている。理解しつくしている。だから基本的には最強でいられる。


 だからもしも。

 師匠――――魔王セリが。

 ワタシのように、十全に魔力を使える理論(・・)を理解した場合。


 下手をしたらワタシどころか、天界にいる神にだって――――


『オイ聞いてるのかよメアっ! 日々サリエナさんに振り回されてるって苦労話!

 あの人面白がって、俺を窮地に追い込むんだぜ!? ひでえよなあ、自分から目立つなって言っておいてさあ!』

「――――オウ、聞いてるよ師匠」


 まぁ、この考えは、今は置いておこう。

 仮にワタシよりも強くなったとして、だ。

 師匠の本質が変わるワケでもあるまい。……そう、ワタシは信じている。


 だからこそワタシは、好き勝手に外道でいられるんだからな。


「ギャギャギャッ! せっかくだから、童貞でも捨ててこいよ!

 そうすりゃ、ちったぁキモいのが治るんじゃねェかァ!?」

『どう……っ、童貞とかどうかは、い、今は関係ないだろっ!』

「なんだよ、結局シャルエールにも手ェだしてねえんだからよォ。

 そんなチキンだから、豚は豚のままなんだよ」

『チキンなのか豚なのかはっきりしてくれませんかね!?』


 さてさて、名残惜しいけども。そろそろ楽しい時間は終わりだな。

 少しだけ仮眠をとったら、またぞろ地獄に向かうとするか。


「んじゃな、愛してるぜ、師匠」


 そう言ってワタシは、ややパンツ部分をずり下げ、淫紋部分を見せつける。


『ぶっ!』

「やる気だせよな。まぁ、大丈夫だとは思うケド」


 うろたえる師匠のカワイイ顔を目に焼き付け、通信を切った。


「オラ起きろシャルエール。

 地獄の時間だ」


 げしっと、横になって死んでいるシャルエールを蹴る。

 うぐぐとわずかに息をして、意識を取り戻す。


 ギャギャギャ……、いいねェ。良い根性だ。


「アー……ル、メイア、か。

 ううん……、よ、よし、大丈夫だ……。行こうか」

「オウ。気合い入れろよォ?

 さっきみたいに魔獣に食い殺されそうになっても、今度は庇ってやらねェからなァ?」

「む、……大丈夫だ。同じミスはしないさ。

 ところでアールメイア、きみ……」

「あん? 何だよ?」

「何だかやけに嬉しそうだけど……、リョウスケに何か言われたのかい?」


 そう言ってシャルエールが指摘するものだから、確認のために姿見の前へ。

 ――――あぁ確かにな。嬉しそうにニヤけてやがる。


「別に何も言われてねェよ。

 けれど……、そうだなァ」

「うん? けれど?」

「フツーに、師匠と話せたのが、うれしかったんだろうさ」


 言ってワタシは、自分でも愉快なのが分かるくらいに大きく笑う。

 後ろでシャルエールが「それは御馳走様」とつぶやいた。





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