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7.定期連絡・1(シャルエールの場合)



「ギャーッギャッギャッギャッギャッ!」


 そんな風に、悪魔のような笑い声が、暗黒に包まれた大陸中に響き渡る。


 空は晴れ。だが、地面は黒い。

 魔界化という現象言葉に、なるほどと納得せざるを得ない。


「ぜー……、はー……、ぜー……、はー……、」


 地面に這いつくばる僕、シャルエールは、全身で呼吸を整えながら、絶望をかみしめていた。

 辛すぎる! エグすぎるよこの任務!

 ……リョウスケはいつもこんなことをやっていたのか。

 ところどころ小物っぽく見えていても、やはり強かったんだなぁ彼は。


「オラ! シャルエールゥ! サイクロプスが来てるぞッ!」

「……ッ! ぐぅっ!」


 眼前には、五メートルはありそうな一つ目の巨人。それも複数体。

 それぞれの個体が、この魔界の瘴気に充てられ凶暴性が増している。

 正直、僕がこれまで相手取ってきた魔物たちとは、強さの質も方向性も違う。


 なんという難易度。

 ヘビーすぎる環境下だ。


「ぐぅっ……! うおおおおおっ!」


 全身に力を込め、命を振り絞って回避する。

 一つ一つの行動が命がけだ。いっぱいいっぱいもいいところである。


「ゴァァァァッ!」

「くッ! ……ッ!!」


 僕が元いた地点へと、複数のこん棒が振り下ろされる。

 地面が砕け、抉られ、穿たれていた。

 あんなもの、一撃くらっただけで粉々だ。


「オラ、追撃! そこでぼーっとしてるから、なかなか数が減らねえンだろうが!」

「む、無茶を言うなよ……」

「回避と攻撃は常にセットだ! 考える前に行動しとけェ!」


 高レベルなことをさらりと要求するスパルタ幼女。

 み、見えてる世界が違いすぎる……!


「はぁ……、はぁ……っ!」


 脳で分かってはいるものの、その通りに身体を動かせるかと言えば、そんなことはなく……。

 優雅に剣を振るっていた過去の姿を美化するわけではないのだが、今の自分はあまりにも泥臭すぎた。


 そしてそんな泥臭さが、何だかとても心地いい。


「メアっちスパルタすぎ~。ほらぁ、そのせいか、逆にシャルっちニヤニヤしちゃってるジャン~?」

「ギャギャ、Mが目覚めたか」

「元々っしょ~?」


 好き放題言われている。が、その通りかもしれないなぁ……。


「僕は……、くじけるわけにはいかないんだ。

 リョウスケだって、きっと過酷で熾烈な任務をこなしている最中なのだろうから!」


 そうだろう、リョウスケ。

 互いにこの任務が始まってから、約一週間が経過している。


 キミもきっと今頃は、この世界を救うため、苦難を強いられているに違いない!


 僕の言葉に対して、後ろの二人は「ナイナイ」とか「いつものラッキースケベ展開でしょ」とか言っているけれど、そんなことはないよな!


「キミのためにも……、僕は負けられない!」










「――――とまぁ、そんなことがあったんだよリョウスケ。キミもそっちでは、大変なのだろう?」

『えっ!? あ、あぁうん、そうね……。

 大変だよ、うん。ある意味では、毎日生きた心地がしないっていうか、ね!』

「やはりそうなのか……! うんうん、苦労するよなぁお互い(・・・)!」

『う、……うん、ソウデスネ』


 本日のノルマを達成し、一度安全地帯のキャンプへと戻った僕は、ルミエラの遠隔通信魔法によりリョウスケと会話をしていた。


 定期報告というやつだ。

 やはりこういう、互いの確認というものは大事で。

 お互いの苦労というものを共有することで、やる気を途切れさせずに活動することができる。


「しかし過酷な任務中だというのに……、キミはぴんぴんしているね。いや、気丈にふるまっているのか。

 すごいね、そんな余裕があるなんて」

『あ、あのなシャルエール……。聞いてくれ、実は俺の任務自体は――――』

「いや、良いんだ! 僕のことを気遣ってくれなくても大丈夫だ。

 ……優しいね、キミは」

『は……、はぁ……。

 あー……、えーっと、メアは? アイツはどうしてるんだ?』


 何故かリョウスケは謎のいたたまれなさを醸し出し、アールメイアのことへと話題を移した。


「彼女は現在、四十時間ほど連続で暴れまわっている。

 ……暗黒化した大地のほうが先に崩壊するんじゃないかと、ちょっとヒヤヒヤだ」

『お、おう……。それはえげつないな……』


 まぁでも大丈夫だろうアイツならと、映像の彼は頭をかく。

 何だかんだで、彼も彼女のことを気にかけているんだな……。というよりも、そうすることが当然のようになっているのか。

 二、三か月もの間、ずっと一緒に行動してきていたんだものな。

 急に離れ離れになったことで、落ち着かないというのもあるのかもしれない。


「……アールメイアのものと比べれば、少し違うかもしれないのだがね、リョウスケ」

『うん? なんだ?』

「今の僕にできることは、これくらいだ」


 そう言って僕は、鎧を脱いでおっぱいを映像へと映し出そうとした。

 魔物種とのハーフだということを分かっている人物の前なので、気楽に肌を見せられる。


『ブッ! シャ、シャルエールッ! 何やってんだ! しまえしまえ!』


 彼の言葉に遮られ、鎧を全部脱ぐことはできなかった。まぁ仕方がないし、丁度良いから軽装のままで話を続けよう。

 それにしても……、僕は何か間違えてしまっただろうか。


『なんだってんだシャルエール! 急にどうした!?』


 そっぽを向いたままの態勢で、リョウスケはこちらへと声を飛ばす。


「いや……、アールメイアのことを気にかけていただろう? だから、毎日見ていた彼女の裸体が恋しくなったのかと思ってね。

 彼女に比べれば、僕のおっぱいはあまりにもサイズが大きいから……、趣向としてはちょっと違うかもしれないけれど、気休め程度になればと思って」

『どんな気の使い方だ! あと、別に毎日裸体は見てないから! できるだけ見ないようにしてるし!』

「そうだったのか……。

 すまないね。僕は大きな勘違いをしていたようだった」

『どういう勘違いだ……。まぁ、分かってくれたのなら良かったよ……』


 げんなりとなってしまったリョウスケに、僕は続けて言う。


「見るならオープンな感じではなく、チラリズムということだね!

 それでは今から、この場で着替えを始めるから。存分に見ていくといい」

『それはそれでどんな勘違いだ!? ちげーよ! そしてそれはチラリズムでもねえよ!』

「ふむ、そうか……。難しいね、キミの性癖は」

『そもそも性癖の話してねえからよ……』


 ツッコミに疲れたのか、リョウスケはぐったりとしていた。


「うん。酸欠だね!」


 そういうときは呼吸を落ち着けて寝ると良いと聞いた。

 やはり過酷な任務のようだ。


「元気が出るよう、マーゴット姉様にもお褒めいただいた、シャルエール式全裸応援を行おう。

 しっかり見ていてくれよ、リョウスケ!」

『い……、いらんこと、すな~……。

 ルミエラ……、近くにいねえのか~……』


 こうして僕は、近くにいたルミエラに「さすがにシャルっち攻めすぎ~」と言われながら、映像の前から退去させられた。


 ……うん。

 テンションが上がると、やや我を忘れがちになるのだね、僕は。

 今後に活かしていこう……!






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