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5.カードゲーム・3



 結論から言えば、ラチカはイカサマをしていた。

 そう彼女は俺に自白して……、現在誰もいない屋上の端っこにうずくまり、夕日に照らされている。


 あの後。

 コレ(土下座)はさすがに何か事情があると思った俺は、ラチカ以外の全員を解散させ、彼女を屋上へと連れて行った。

 どんな理由があるにせよ、他人の前では言わない方が良いと思った。……人数いると、話の進みも遅くなりそうだし。


「……さて、と」


 ラチカの足取りは重く、顔は恐怖で引きつっていた。

 俺はしどろもどろになりながらも優しい言葉を頑張ってかけたが……、あんまり効果はなかったみたいだ。

 屋上に着くや否やラチカは、上品なツインテールをがたがた震わせながら、膝を抱えた状態で謝罪の言葉を述べた。


「……す、すみませんでした」


 騙されたとすらも思っていない俺からすると、今の彼女の姿はひどく滑稽ではあるが……、まぁ、本人からしたら気が気じゃないだんだろうなぁ……。


「こっちもなぁ……。イカサマをしたのが、俺側でなくて良かったというか、なんというか……」

「へ?」

「いやいや、何でもない」


 聞いたところによると。

 彼女にしか見えない(はず)の発色魔法によりカードにガン付けをしていたラチカは、その手段を用いて高勝率をたたき出していたとのこと。……全勝しないというのが、何ともうまいやり方だ。

 食堂でおごるという言葉の、前のワードが制約魔法(ギアス)だったようで。


 なるほど……。『負けた人は、勝ったほうの言うことを一つきく』という文言か。

 ただおそらく、仮に負けていても今の俺だったら、レジストできていたとも思うけれども。


「ア……、アンタみたいに、ギアスを自ら破ってくるバケモノがいたなんてぇ……」


 震えながら言う彼女を見て、俺は頭をかく。

 ラチカから見た俺は、一手目から自分の魔法を逆手に取り勝利を手にされ、二手目にイカサマシステムそのものを破壊された相手というわけだ。

 知恵でも、チカラでも負かされたと。そして極めつけに、



ごめんお待たせ。(おまえのちからは)……続けようか?(こんなものか?)



 みたいなニュアンスの言葉。

 そりゃあ恐怖もするわな……(勿論そんなつもりはなかったけども)。


「バ、バラさないでください……! ごめんなさい! 何でも言うことをききますから……!」

「い、いや……、そんなことしないって!」


 だから顔を上げてくれ。

 おろおろとする俺に対し、ラチカの嗚咽は更に増すばかりだ。

 夕暮れの屋上で、女子を脅迫する最低野郎みたいな図式が完成してしまっている。

 ……これ見られたら、高確率で俺が悪者だろうなぁ。人除けの魔法を敷いてるから、さすがにそんな下手はうたないけどな!

 どうしたものかと考えていた、そのときだった。


「……ッ! ふぐ……っ!」

「ん? ど、どうしたラチカ!?」

「ぐッ……!」


 突如として膝をつき、彼女は全身をビキリと震わせる。

 うっすらと彼女の周りには、魔力の波のようなものが見えていた。


「何かの魔法現象、か……?」

「……かっ、……ぁ、ぁ、……ッ!」


 苦しむラチカをじっと見て、俺は少考する。


「……なるほど。これはたぶん、ギアスの『返し』だな」


 魔王時代にも、何度か見たことがある。

 ギアス――――つまるところ、相手に対しての制約魔法。

 この魔法は相手への強制力や干渉力があるかわりに、取り扱いをミスったら自分へ反動がくることがあるのだ。


「……参ったな。確かこういうときの対処法は――――」


 すまんと言いながら、俺はラチカの両肩をがしりと掴む。

 大量の汗に、荒くなっていく呼吸。顔は紅潮し、目はうつろになっていっている。

 綺麗に整えられていた金髪のツインテールも、脂汗と魔力熱のせいか乱れてしまったようだ。


「……コイツ、どこまで強いのをかける予定だったんだよ」


 ここまでの反動が来るギアスなんて、学生が扱っていいものじゃないぞ!?

 ギアス系の魔法の解除は、大体術者の体内にスイッチがあることが多い。

 炎をどかーん! とか、氷を発射! とかの、放って終わりなものと違い、バフ・デバフ・ギアスや継続的な呪いなどは、術者の体内から連続的に魔力を使っているものがほとんどなはずで。


「どこだ? どこかに、繋がりがあるはずなんだよな……」


 魔力の波を感知して、ラチカの体内の魔力の流れを見る。

 つまるところ、魔力発生源を止めてしまえば問題なくなるわけなのだが……。


「……よ、よりにもよって、ソコかよ」


 腹部である。

 腹部である!

 クリスタルの洞窟内にて、シャルエールに紋章がついてしまったことを思い出す。そんな位置だ。


「……紋章よりも、更に下だな。へそよりも下だから、その……、うん」


 生唾を飲み込む。

 あまりにもその部分を凝視することは……、その、生物学上よろしくない。


「え、えっと……」


 さ、さて! ここで説明しよう!

 ギアスの反転の解除の仕方とは!


 一つ。魔力の発生源を把握し、それを断ち切る。

 二つ。繊細な作業なので、できれば防壁などがない状態で行うのが望ましい。

 三つ。二次被害、三次被害などを防ぐために、できるだけ結界内などで行うほうが良い。


 ということなので……。


「………………もうどうしようもないな。すまん、ラチカ」


 ぐったりとし、意識を失いかけている彼女を横に寝かせ……。

 俺は、スカートの中へと手を突っ込んだ。

 下からではなく、上から。

 ウエストベルトをやや空け、その隙間から手を這わせているので、極力下半身の肌を見ないようにするためだ。

 まぁその。アレです。


「パンツ、見ないように、ネ」


 指先に触診用の魔力を集中させ、少しずつ、細かに発生源を探る。

 すべすべとした下腹部を、左手でなぞっていく、の、だが――――見つからない。


「ただただ寝てる女子高生(の年齢の子)にセクハラまがいのことをしただけで終わってしまった……」


 現代日本でなくても、見つかったら捕まりそうな事案である。

 うん……。

 もうこうなったら、力づくでギアス元を断ち切るしかない。

 実は。魔力操作を誤ると、こうなるかもしれないということは、予想していた。

 俺の魔力を他人に当てると(特に治療系)、副作用として若干の性的快楽が発生するんじゃないかって。この魔力元(どろみず)が戻って来てから、危惧はしていたのだ。


「だから頑張って、微細に送ってたんだけどなぁ……」


 これ下手したら……、メアに『天罰大痛輪(ペインズヘブン)』を使ったような状態になってしまう気がする。

 とてつもなく盛大なフラグな気がするが、もう仕方ない……!


 すぅっと息を吸い込み集中する。

 一切の邪念を排除して、魔力を送り込む――――



「強く入るなよぉ……。あ、すっげ、

  女子高生の

     おっぱい、エッロ……い。あっ!?」

「あがががががあがああがががっッッっッ!!!!??!?」


 うおー……、しくったわー……。



「痛い痛い痛い痛いっっ!!!? なっ、何コレ……ッ!?

 イタイイタイイタイいいいいいいい!!!!???」

「すまんラチカーッ!! もうここまで来ちまったら、最後までヤっちまうからなっ!」

「さ、最後までって……、ナニ――――」



 とまぁ。ある意味お約束のような結末を迎える。


 悲鳴のような。

 咆哮のような。

 金切声のような、泣き喚く声が……、

 屋上全体に響き渡った。

 良かった……。結界を張っていて、本当に良かった……。


「ばはァッ――――!!?」


 ぜいぜいと、全身で呼吸を繰り返すラチカと、いたたまれない空気に包まれた俺。

 ……うん、正直すまんかった。

 そしてすまんかったことはもう一つ。

 メアともシャルエールとも違う、刻印(・・)

 それが、俺がずっと手を押し当てていた腹部下方に、煌々と刻まれている。


「なんか……、め、めちゃくちゃ、ココ、熱いんだけど……?」


 冷や汗がだらだらと湧いてくる。

 ぐるりと、気だるそうな眼をしたまま、ラチカはこちらを見て口を開いた。


「と……、とりあえ……、ず……、さぁ……」

「は、はい」

「起きたら一発……、殴らせて……」

「はい」


 うす、甘んじて受けさせていただきます。







【読者の皆様へ】

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