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4.カードゲーム・2



 このゲームの肝はぶっちゃけると、運が良いかどうかだ。それに尽きる。


 いやまぁ、ポーカーフェイスとか……、相手に表情を読まれないような技術も必要なのかもしれないが。

 ただ、ランダムに1~14とジョーカーを手札に並べていて、選択権が相手側にある以上、細かな技術や思考などは必要としないだろう。


 先手は俺から。

 ジョーカーを加えた十五枚のカードを取り扱う勝負なので、先手が圧倒的に優位だ。

 七枚点数を出せるのと、八枚点数を出せるのとでは、合計値に大きな差が出る。


 全六勝負。

 先手・後手を交互に繰り返し、勝利数(イーブンだった場合は総合計点数)で最終勝者を決める。

 ……と、いうことなんだけれども。


 なんだろう、これ。

 勝負が開始されてから。


 カードが(・・・・)光っている(・・・・・)


 しかも点数の高い、ジョーカーが金に。次に点数の高い14が赤。13がオレンジと、高い点数が色鮮やかに発色を示していた。


「…………」

「……? どうかしたの? リョウスケの先攻だよ?」

「あ、あぁ、うん」


 ……。

 えーと。

 光っているのは俺のカードだけではなく、相手のカードも(・・・・・・・)だ。


 しかしすげえな……。さすがは魔法学校。

 簡単な遊戯一つとっても、ゲーム開始するとこんな風に魔法が作用するのか。

 ん? これって、……魔法が作用してるってことで良いんだよな?


 先ほどチュートリアルで見ていた際には、プレイヤーじゃなかったから分からなかったってことなんだろう。ちょっとした遊びにも魔法が発生するとは。


「あれ?」


 しかしちょっと待てよ?

 相手のカードが分かるっていうことならば、そもそもこのゲーム自体が成立しなくないか?

 だってこんなの、ジョーカー同士が分かっているんだから、先攻がジョーカーを引いて終わりだろう。

 確か一ターン目からジョーカーを揃えたら、即勝利だったよな……。

 あぁでもさっきはチュートリアルだったから、ジョーカーは使っていなかったんだっけ。

 だから光ってなかったとか……、そういうことか?


「――――、」


 まぁ。

 ……あんまり待たせるのもよろしくないか。

 とりあえずセオリー通り、ジョーカー(と思われるカード)を狙いにいくとしよう。失敗したところで、所詮は余興の範疇だし。


 そう思い俺は、激しく金に光り輝くカードへ手を伸ばす。


 結果は――――当然のごとく、ジョーカーだった。


 金に輝くカードを二枚、テーブルに出す。


「あ」「えっ」「え」「ぉ」「わぁ」


 周囲から驚きの声が聞こえてくる。そして対戦相手のラチカは、信じられないものをみたような表情をしていた。


「……えーと、これ、俺の勝ちってこと、かな?」

「は……、」


 空気が一瞬止まる。

 第一ゲームが終わったことを認識したのか、カードの光は収まっていた。


「う、うおおおお……!? すげえじゃん編入生! いや、リョウスケ!」

「すごいわね! わた、私、久しぶりに一ターンジョーカー見たわよぉ……!?」

「うんうん! す、すごぉーい! めちゃくちゃミラクルじゃん!」


「あ……、はは、ありがと、ね?」


 ……これ、良かったのか?

 喝采の中にも、やはり驚愕と動揺が見てとれる。

 そして何より対戦相手のラチカは……。


「すっごおおおい! すごいミラクルだね、リョウスケ! やるじゃん見直したよー!」

「あ、いやいや……。はは、運が良かっただけだ、……よ?」

「はぁーあ! いきなり一戦目落とすとか、私ツイてなさすぎじゃんー!」


 落胆はしているものの、まだ元気いっぱいの彼女がそこにはいた。

 ……よ、良かった。機嫌損ねたりはしなかったか……。

 魔法の作用がどうこうよりも、そっちの方が気がかりだったぞ。

 空気を読まず一勝を取ってしまったかと内心ヒヤヒヤしていたが、どうにか事なきを得たようだ。

 けどそれじゃあ……、カードが光ってたことについては、どういう……?


「それじゃあ第二ゲームは負けないからねー! 私が今度は圧勝しちゃうんだから!」

「あ、うん……。お手柔らかに頼むよ」


 俺の思考が終わる前に、ラチカの声が遮った。

 と、とりあえず第二ゲームの開始だな。


「ふ、む……」


 そうして、また手札を持つと……。

 やっぱりだ。

 またジョーカーと、高い数字だけが光を放っている。


 これ……、もしかして俺にだけ見えちゃってるんじゃないのか?

 ……そうだとしたらたぶんマズい。イカサマをしていることになる。

 この光は魔力で、魔法によるもの。これはほぼ確定だろう。

 で、それが俺にしか見えていないってことは……。


「泥水か……?」

「え、何?」

「あ、あぁいや、何でも……」


 なるほどなぁ。

 俺も自分の体の中に、新しい魔力の素(どろみず)を入れられたばかりだから、変な魔法がオートで発動してしまったのかもしれん。

 ……よし、それなら。


「ちょ、ちょっとタイム! や、やっぱりカードの配列考えなおすわ!」

「ふ~ん? まぁいいよ! 今の私は、カンが冴えまくってる気がするからね!」

「あ、あぁ、うん。ちょっと待っててネ……」


 眼を薄く開いて、カードを混ぜるふりをしながら互いのカードを視界に収める。

 この状況だと……、こうするしかないな。


「フッ……」


 聞こえないように、静かに息を吐く。

 微量な魔力を帯びた俺の息は、カードを纏う魔力を少しずつはがしていく。


 こうして俺は……、カードに付着しているであろう魔力を、完全に吹き飛ばすことに成功した。


「……ふぅ」


 おそらくこれは……、長いことこのカードに触れてきた生徒たちの、魔力が固まってしまったことによる現象だと思う。

 たぶん高い数字を手にしたとき、興奮して魔力が漏れ出たりして付着してしまった……とかだろう。だから、高いカードほど輝きを放ってしまっている……とか。

 仮説だけども。


 まぁなんにせよだ。

 そんなものが付いていたら、マズい。


 ……俺は、この暖かい空気の中。

 イカサマなんていう、つまらない真似をしたくない。

 そんなもの、ここにいる全員に対する裏切りだ。

 俺を迎え入れてくれた……、みんなに対しての。


 勝っても負けてもいいんだ。そんなもの関係ない。

 俺はただ、正々堂々と、こいつらと生活していきたい。それだけさ。


「ごめんお待たせ! つづけようか!」


 そうして目を開けゲームに戻ると。



 ラチカは、見たことも無い魔物を目にしたような、恐怖の表情でこちらを見ていた。



 ん?

 ……あ、あれ?


 周囲の生徒はぽかんとした表情でラチカを見ている。

 先ほどまで天真爛漫にふるまっていた彼女が、いきなり見たことも無いような表情をしているのだ。そりゃあ驚きもする。

 というかもう、キャラが変わっているくらいの豹変ぶりだった。


「ど、どうかしたのか、な? ラチカ……さん?」

「ひっ!」


 座った椅子ごと、わずかに後ずさる彼女。

 もうすでに、手にチカラが入っていないのか。青ざめた表情で足をがくがくと震えさせて、ただ一点、俺を見ていた。


「すっ……、す、す……、すっ、」


 怯え、惑う瞳。

 焦燥からくるような冷や汗と、荒くなっていく呼吸。

 ……これは、いったい?

 先ほどの魔法現象よりも不可解なことに、俺は更に戸惑っていた。


 そして。


「すっ、すみませんでした……! だ、だから、殺さないでください……!」

「はいぃぃっ!?」


 その場でばたばたと、彼女は土下座をして。

 俺に跪いたのだった。

 な……、

 何が何やら……!







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