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2.屋上で一人



 休み時間。

 俺は一人校舎の屋上へと出向いていた。

 生徒たちは屋上にくる習慣がないのか、幸いにも俺一人だ。

 交流を深められないのはやや寂しいが……、情報を頭の中で整理するにはありがたい。


「さて……」


 そんなことを考えながらも、俺は屋上からの景色を一望する。

 どこまでも続くような広大な大地に、所狭しと様々な棟が立ち並んでいた。


「俺が居るのが第三校舎……。サリ姉(サリエナさん)は第七校舎とか言ってたっけ……?」


 一つ一つが田舎の高校校舎くらいの大きさである。

 確かそれが全部で……、十五棟だったっけ。

 それでいて更に、冒険実習に使うフィールドなんかも兼ね備えているらしい。


「恐れ入るぜマジで」


 とまぁこの通り。

 ミストリカ学園の土地はめちゃくちゃ広い。

 どれくらい広いのかと言えば、それは……もう、めちゃくちゃ広い(語彙力消失)。

 東京ドーム何個分とかで言えれば良かったのだが、俺がそもそも東京ドームに行ったことがないので比率が分からない。

 まぁでも小国家くらいの大きさだと、サリエナさんは教えてくれた。

 俺とメアが邪神と戦った王都。そこよりも広大な『学園』ともなると……、いやはや、度を越しているだろう。


「今では学園長ですらも把握できていない場所があるとか何とか……」


 そんなことを言っていたっけな。

 まぁそれにも理由があるらしく(俺からすると理解不能だったけれど)。

 それはそもそも、「魔力」とは何かという話につながってくるのである。


「おさらいしとくか……」


 ごそごそとサリエナさんからもらったメモを見る。

 理解したら燃やしてくださいねと、何やら物騒な言葉と共に渡されたメモだ。

 これに、そもそも魔法とはということが書いてある。


「まぁ確かに、これ知っておかないとやばいよな……」


 何せこの学園にいる連中は、このメモに記されている『そもそも魔法ってなぁに?』ということを理解し、そのうえで学びに来ているというのが前提なのだから。


「そこ知らないで、お前何で入学できたんだよ? って思われちゃうからな」


 さて、どれどれ。


「えーっと……、要約すると、」


 魔法という学問は、そもそも一方向から見て理解できるものではない……らしい。

 メアや女神連中なんかは、使いこなしている域にいるからあまり関係ないんだろうが……、そもそも魔法という概念自体、めちゃくちゃあやふや(・・・・)なものなのだとか。


 例えば。

 ずっと理論を勉強し続けていても全然分からなかった魔法が、次の日になると感覚で出来るようになっていたことなどもあるのだとか。

 珍しい例ではあるが、ありえないわけではないとのことで。


 逆にどれだけ理論を敷き詰め、完璧だと思われた魔法術式も、何かが(・・・・)原因で不発に終わることもあるという。


 様々な角度からの切り込み。

 多角的な知識と応用。

 それらが魔法を成長させる礎になる――――と、そんな風なことがメモには書いてあった。


「う~ん……。まぁ、やっぱり言葉だけだと難しいな……」


 それに今の俺の場合は、更に特殊な環境だ。

 理論も何もわかっていないのに、強い魔力と、強い魔力を扱える身体になっていて、それらを自由に操っているだけなのだ。

 だから魔法が発動しようがしなかろうが、最終的には『よくわからなかった』で終わりである。


「特に困ってなかったとはいえ、俺はこの十年何をしてたのだろうか……」


 せっかくファンタジーな世界に来ていたというのに。

 そのあたり、完全ノータッチだったからなぁ。


「いやまぁ、それは今はよくて」


 情報整理の方に頭を戻そう。

 学園長がこの敷地内のことを、今はあまり把握できていないと言ってた部分。

 結局のところ、魔法の『在り方』や『考え方』の部分が――――この敷地内でのごちゃごちゃ感を巻き起こしているのだという。


 学園長すらも知らない知識・理論の研究も進められているらしいしな……。

 内訳はよく分からなかったが、そんなことを言っていたような気がする。


「そもそも魔法に対する理論や考えが違うから、学園長もソレ(・・)を見ても、何が起きているのかを把握できないんだっけ……」


 例えば学園長は、『魔法には塩があれば十分だ!』という理論の人だとする。

 けれどここの学生や生徒たちの中には、『魔法には砂糖だよ』派もいるだろう。

 そうすると学園長には、その『砂糖』というアイテムが、いったい何なのかが分からないわけだ。


 だから学園長は、こう考える。

『魔法には塩さえあればいいはずだけれど――――砂糖を使っている』

 なるほど、ならばおそらく(・・・・)それは魔法に使っている……のでしょう』

 みたいな。

 例えるならば、たぶんこういうことなんだろうな。


「それでいてこの広大な面積の学園。そりゃあ把握できないよな……」


 ただまぁ安全面は保証していると言っていたっけ。

 莫大な魔力やヤバい魔力が発生した場合、学園中に張り巡らせた魔力が感知してくれるとか。


「だからこそ、その異常をサリエナさんに報せることが出来たってワケだ」


 軽く話していたが、実はこれもめちゃくちゃ凄いことだ。魔王時代にやってみようとしたから分かる(言わなかったけど)。

 魔力量もさることながら、とてつもない集中力と、細かな魔力コントロールを必要とするのだ。

 この、細かなコントロールが難しい。微細な魔力を感知するっていう行為は、日ごろからミリ単位で気を付けていないとすぐに取りこぼす。

 あと部下が通っただけで何かしら反応を示すので、おちおち寝てもいられなかったし。いやぁ、懐かしい……。


「……っと、そろそろ時間か。とりあえず情報整理はまた後で、だな」


 今のところ全然理解できない授業だが、何とか頑張って理解してみよう。

 良い天気をした屋上に別れを告げ、俺はまたぞろ階段を下りていくのだった。







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