0.オープニング
修行パートに突入ということだけれども。
そもそも。
魔力って何だという話。
体内を駆け巡る、謎のチカラ。
俺が前に生きていた世界では、少なくとも一般には無かったチカラだ。
使いこなすことができれば、身体能力を強化することもできるし、その魔力を放つこともできる。
この世界にあふれている魔力という概念。それらを操る術。
身体のどこに働きかけ、どのように通っていって、動いているのか。
知れば知るほど奥深い――――謎のチカラである。
「いやまぁその……、分かってます。分かってますよ、サリエナさん?」
「そうですか。それは上々です」
魔力についての説明を、俺は道すがらの森の中にて、サリエナさんから受ける。
女神・サリエナ。
俺とメアを管理する、新しい女神(上司みたいなもんだ)の一人。スレンダーな体にクールな表情で淡々と話す、メガネ美女だ。
彼女は現在、俺に簡単な『魔力』というものについての説明をしてくれている。
……と言ってもまぁ、ここら辺の知識は復習作業みたいなものだ。改めての確認といって良いだろう。
そもそもこの概念が分かっていなければ、今までみたいに戦うことはできないからなぁ流石に。
「魔力を自身の体内から生成し、外部、または内部へと放出させる。
これが基本的な、『魔法』といわれる現象の構造になります」
「うん……。わかります。わかりますから、そのね、」
まぁそれは置いておいて、ですよ。
説明事項はひとまず置いておき。
「あの……、ですね」
「はい」
「何故貴女は……、俺の身体をまさぐっているんです?」
「さて……、何故でしょうね」
さわさわ。
さわさわ、さわさわ。
すべすべとした白い手と指が、俺の体をくまなくなぞる。
手から始まり、前腕、肘、上腕へすべらせる。肩をなで、うなじを擦られ、背中へ。指先がとてもくすぐったい。
腰椎のすじに指を通され、そのまま腰、尻、ふとももからふくらはぎ。かかとと足の指先までをも、愛撫のように丹念になぞられた。
「鼻息を荒くしていかがなさったんです? リョー君」
「い、いやいや……、荒くもなるでしょうよ……!」
俺は、まさぐられている魔法で小さくなった自身の体を改めて見て、彼女に言う。
「アンタ、ショタコンなのか?」
「まさか。ただ、愛らしい動物が好きなだけです」
「動物扱いですか」
「生きているものは皆動物かと。神的には」
「まぁそれもそうっすね……」
ぱっと離れて。
俺は水面に映った自分の姿を見る。
見た目が二十歳ほど若返った、己が肉体。
まぁ……、若返ったからといってイケメンになるわけでもなんだけどな……。肌の調子は、ちょっとは良いかもしれないが。
身長は百六十センチほど。高校入りたてくらいのころは、これくらいの身長だったか。
やや痩せ気味。まだ太ってはいない状態の俺が、そこにはいた。
「確か不登校気味になってから太りだしたんだもんなぁ……」
今となっては懐かしい思い出だ。
大々的にいじめられていたわけではなかったものの、なんとなく周りに味方も友達もいなかったため、卒業日数ギリギリくらいしか学校に行かなかったのだ。
……あの頃は、毎日胃が痛かった。
そう考えると……、こっちの世界にきて、なんだかんだメンタル持ち直したんだなぁ俺。
そんなふうに考えていると、サリエナさんがまたしても全身でまとわりついてくる。
決して大きくはないが、形が良くハリのある胸がばっちり当たっている。肌もすべすべで、ちょっとヒンヤリしていて気持ちが良い。
「恥ずかしがっているリョー君を見ると、何とも言えない感情が芽生えてきますね」
リョー君というのは、言わずもがな俺への呼称だ(俺の名前がリョウスケなので)。
元々は『魔王』とか『リョウスケさん』とか呼ばれていたと思うのだが……、俺のほうが年下っぽい外見になっているからそうしたということか。
謎の微笑を浮かべつつ、俺の体(主に股間回りのギリギリライン)を触り続けるサリエナ女史。
「……って、いったい何なんですかさっきから!?」
「一時的にとはいえ、若返っていただきましたからね。
魔力の流れに不具合がないかの確認を。……実益を兼ねて」
「アンタやっぱりショタコンだろ!?」
まぁショタと言えるくらいの外見ではないけれども。
元が三十五歳という年齢から考えれば、十五、六歳の年齢は子供のようなもんだ。
ショタコン……というか、年下好きなのか? よくわからん。
一通り堪能を果たしたサリエナさんは、満足したのか俺から離れる。
ううむ、このクール系スレンダーメガネ美女。行動が自由すぎる。
正気を保つのにも一苦労である。どぎまぎしっぱなしだ。
落ち着いて俺は、改めて現状の確認をする。
「し、しかし、修行編って言ってましたけれど……、まさかこんなことだとは思いませんでしたよ……」
「まぁ良いではないですか。
せっかくですので、楽しんでいきましょう」
「だったらもっと楽しそうな顔で言ってくださいよ……」
「それは失礼」
メガネを美しき指でついっとあげ、彼女は目標を指さした。
森の隙間から、その目標が見えてくる、ソレを。
荘厳にそびえ建つ、教会のような、城塞のような、それでいてどこかきらびやかな建物。
ミストリカ魔法学園。
千五百年という古い歴史を持つ、海外でいうところの(厳密にはイギリスとかだったか)パブリックスクール。
遠目からでも、威圧感と煌めきを同時に感じることができる、若き魔法使いたちの学び舎。
「今度の任務は……、まさか学園潜入とはな……!」
「胸、躍りますね。まぁ私には、踊るほどはないですが」
「やめましょう。緊張感薄れるんで」
「薄い胸とかけたというわけですか。やりますね、リョー君」
「……この人(神)と行動して大丈夫なのかなぁ」
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