表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/179

32.熱き羽(後)



「うぉぉぉんんッッ!!」


 シャルエールが大きな羽をばたばたさせながら、今日も盛大に男泣きをかましていた。

 あの町を旅立って三日目。

 現在、次の目的地へ向かう道すがら、野営中である。

 そんな中彼女は、未だに故郷の家を思い返しては泣いている。

 まぁ……、気持ちは分からんでもないけどな……。


「というかシャルエール……。そこまで悲しいんだったら、やっぱ家に帰ったらどうだ?

 いや、新しい仲間が増えるってのは、嬉しいっちゃ嬉しいんだけどさぁ……」


 なんつーか、めっちゃ後ろめたい。

 というか申し訳なくも思えてくる。


「だいたいシャルエールさぁ。その……、どうして俺らに着いてくる気になったんだ?」

「うん?」


 泣き崩れているシャルエールは顔を上げ、俺に向き直る。


「さっきも言ったけど、仲間は歓迎だ。メアが言うように、シャルエールは強いから、自衛もできる。その……、ハ、ハーレムとやらの要員条件に、当てはまってるとも思うけどさ」


 平たく言えば。シャルエールが俺たちに着いてくるという、メリットがよくわかっていない。

 もっと言えば、これまでの生活と俺たちとの生活を比べた時。

 圧倒的に前者のほうがシャルエールにとって都合がいいのではないかと思う。

 恩ある家の元で強さを探求する。

 これまでどおりが、シャルエールにとって最良の人生な気がする。


「マーゴットさんも、そのお付きの人たちも、気がよくていい人達だったし……」


 俺がそう言うと、今まで興味なさそうに静観を決め込んでいたメアが、テントの中から顔を出した。

 顔が焚火に照らされて、ジト目がちだが瞳が輝いて見えた。


「そりゃ違うンじゃねえか? 豚ァ」

「おう? ……メア、どういうことだ?」

「順序が逆だろ、順序が」


 順序……?

 なんの順番が違うってんだ?


「着いてくることは……、シャルエールの中では決定済みだったんだよ。

 だから……、これまでの生活を捨てて外に出ることは、もうコイツの中では変わらない」

「い、いやだからだな……。どうしてそこまでの決定が出来たんだって話をしてんだよ」


 さすがに口には出さないけれど……。あんないい人たちに拾ってもらったのだ。

 俺だったら恩義を感じて……、出たくても出られなくなっちゃいそうだけどな……。

 そこが少しだけ引っかかってはいた。

 シャルエールだって、恩義や忠義に熱いタイプだと思うのだけれども。


「……僕は、ね。貴族・シャルエールの前に、武人・シャルエールなんだ」


 涙をぬぐい。

 彼女は強い目をこちらへ向ける。


「……強くなると、マーゴット姉様に誓ったんだ。僕は。可能な限り……いや、可能な領域を超えて、更に強くなると」


 伏していた身体を起こし、彼女は言う。


「戦う者として……、これ以上強くなる道が目の前に広がっているのに。

 それに向かっていかないのは、――――姉様に対する裏切りになる!」


 硬く握られた拳は。

 焚火に照らされ、赤く燃えているようにも見えた。

 静かな闘志が沸き立っていた。

 決意を決めた、真の意味で戦う者の、瞳。

 そして……、森の静寂を切り裂くような声で、彼女は声高に言う。



「それでも寂しいものは寂しいんだあああああああっ!!

 二律背反が憎らしいのさあああああああっ!!」



「あーやっぱうるせえな! わかった! わかったからシャルエールッ!」


 だから落ち着け。

 あんまり騒ぐと周囲の魔物が寄ってきてしまう。

 今回借金はチャラになったけど、その分余計な金もあんまり持たせてもらえなくなってしまって、安物の魔除けしか買えてないのだ。

 コボルトの大群なんて呼び寄せたら、たまったもんじゃ……な、い?


「グルルルルッ!」

「ほら囲まれてんだろぉぉっ!?」


 喉を鳴らす、人狼種と魔狼の群れ。

 周囲八方を完全に包囲されていた。


「僕の悲しみに付け込んだか、邪悪なる者たちめ……!

 いいさ、受けよう! 悲哀を力に変えて見せる!」

「悲しんでるのはお前だけだから!」

「ギャッギャッギャッ! 暴れてもいいのかァ!?」

「良くない! 森がなくなっちまうから!」



 …………。

 ……。



 こうして。

 彼女は悲しみを少しずつ振りほどきながらも。

 俺たちのパーティ(ハーレム)に、正式に加わった。


 翼の武人・シャルエール。

 麗しき出で立ちからは想像できないほどに、熱く、闘志溢れる剣戟を見せる者。


 その情熱はいつか、勇者と共に並び立てる強さに、

 届くのかもしれない。





【読者の皆様へ】

 広告の下側にある評価欄(☆☆☆☆☆のところ)を押していただけますと、作品への大きな力となります! とても嬉しいです!

 感想・ブックマーク・レビュー含め、ぜひともよろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ