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30.後日談



 あれから一週間が経過した。

 時間にすれば、洞窟冒険とメアの大暴れを足した期間より全然長いのだが……。ぼーっと療養していると、あっという間に時は流れるものでして。


 本日はお日柄も良く。

 俺とメアは悠々自適にそれぞれ過ごす。


 町をぶらつきつつ、美味いものを食べ、マーゴットさんらとお茶をしたりしていた。

 うん……、人を気軽に城まで呼びつけるのはよろしくない。

 おかげさまで、『ミスリルファヨン家に出入りしている謎の新参冒険者』みたいな目で見られることになってしまった。


「あぁそうだ、冒険者と言えば……」


 俺は荷物の中から冒険者証を取り出し、改めて目を通す。


「ギャギャギャ、これで面倒な申請も、いらなくなったなァ」

「そうだな……。毎回新たな土地に行っては、申請、実績、申請、実績と、面倒だったからなぁ……」


 今回の一件を通じて、ルミエラが用意してくれた冒険者証。

 これは、世界どこででも使える証明書である。


 ランクは、俺もメアも『A』等級。

 特に元・魔王なんていう俺にとっては、きちんとこうした証明書があるのが嬉しい。

 もしかしたらメアのしつけを頑張ってくれていたご褒美だったりするのだろうか。


 ギルド近くの食事処にて、俺たちはくつろぎつつ確認しあう。

 偽造……というのもまた違う、冒険者証だ。

 どこでどう製造されたのかは分からないが……、まぁ、サリエナさんらを信用しよう。


「そろそろ違う任務も来るかもしれねーんだろ?

 コイツがあれば、どこでだって暴れられるぜ」

「暴れるな。しばらくはあぁいうこと、禁止だからな」


 ウッド調のテーブルと椅子にふんぞり返るメアを制す。

 あれだけやってもまだ暴れたりないと申すかこのお嬢様は。ほんと、かんべんしてほしいものですことよ。


「チッ……! まったく面倒だぜ。もうちょっと頑丈になれ、大地」

「すげえいちゃもんのつけ方だな」

「フフ……、全くだね!」


 俺とメアがそんな風に日常会話を繰り広げていると、派手な身なりをした騎士に、背後から声をかけられた。


 無駄に銀に光る鎧。髪の毛も銀。腰には扱いやすそうな片手剣を下げている。

 その人気には衰えがないのか、またしても人だかりができていた。


「ギルド付近にいると思っていたよ、二人とも」

「シャルエール……。

 マーゴットさんから、きちんと許可がおりたのか?」

「あぁ。待たせてしまったね。

 ……正式に、僕が家を出て、きみたちに同行することを許可してくださったよ」


 少しだけ目を伏せて、彼女は言った。

 この何日かで、マーゴットさんとシャルエールの間にどんな会話があったのかは分からない。

 けれど、

 シャルエールの顔を見るに、きっと、気持ちのいい別れだったのだろう。


「と言っても、別に今生の別れというわけではないしね」

「まぁそれもそうだな。……疲れるけど、あの人の変人具合は俺も嫌いじゃない」


 もう一度言うけど、疲れるけどな。

 テンションが高いところで固定されている人種だから、ついていくので精一杯なのだ。ジェットコースターみたいな人間だと思う。


 俺がそんなことを思い返してみると、シャルエールはその場に軽く跪き、改めてこちらへ挨拶をする。


「シャルエール・ミスリルファヨンだ。冒険者階級は、『A』ランク。

 字名は、銀片翼。振るうは銀の剣。――――これより僕は、きみたちの剣となり、翼となろう」


 伏せた顔を上げ、

 力のある瞳を、こちらに向ける。


「改めてよろしく頼む、リョウスケ、アールメア」

「あぁ、よろしく頼むぜシャルエール」

「ギャギャギャ、よろしくなァ」


 三人で、共に握手を交わす。

 有名なシャルエールがこの町を去るとのことで。人だかりが、ざわめきの動きを見せていた。


 あぁ、こりゃあ早々にこの場を去らないと、また面倒なことに巻き込まれそう――――


「そういえばアールメイア、あっちの件(・・・・・)も了承するよ」

「おぉ!? マジかシャルエール! ギャッギャッギャッ! こいつは楽しくなってきやがったぜ。なあ豚ァ!」

「……え? 何、なんの話?」


 考えを中断され、俺は話に耳を傾ける。

 そうすると同時。

 問題発言を乗せた声が、響き渡った。



「何って、ハーレムの件(・・・・・・)だよ!

 シャルエールも、師匠のハーレム入り(・・・・・・・・・)確定だ! 良かったなぁ!」



 …………。

 うん……。


 お前ね、やっぱ、地声がでかい。


「そんっ、そんなことを大声で言うやつがあるかあああ!! って、え!? なんだシャルエール!? お前そんなこともオッケーしたの!??」

「あぁ。あらましはアールメイアから聞いている。

 ……僕も初めての操を捧げることに対して、随分と悩んだのだがね。キミなら良いだろうと、観念したよ」

「観念したのか! 何で諦めたんだよ! そこは抗えよ! そしてその言い回しだと、俺が強要したみたいだろうが!」

「まぁアールメイアのことも好きだしね。

 複数プレイ……、だったか。うん、そういうのにも、慣れていかないといけないんだろうねぇ……」

「納得するな! ……オイ、メア! お前シャルエールになんちゅうことを教え込んでんだ!」

「いやワタシはあんまり教え込んでないぞ……? 最初から意外と詳しかったみてぇだが」

「フフ、僕はムッツリなのさ」

「いやお前はオープンスケベだ! って……、ひぃっ!」


 俺たちの周囲が、奇異の視線と怨念であふれていた。

 老若男女。

 様々な方の視線が、否応なしに飛んでくる。


「待ってくれ皆の衆!」


 狂騒が襲い来る。まさにそのときだった。

 シャルエールの凛とした声で、群衆の動きが止まる。


「まだ彼は、汚れを知らない清らかな人間さ! 安心してほしい……!」


 こんな大勢の前で俺の童貞をバラすんじゃねえよっ! 完全にそういう意味にとられてるだろうが!



「そしてまだ、僕は彼とは一線を越えてはいない……!

 そう――――、僕は無理やり裸を見られ、そのあと彼は股間を露出した! それだけの関係さ!」



『…………………………』


「……シャルエール、」

「ギャギャギャ、こいつ馬鹿だぞ豚ァ」


 怒り。

 俺に、

 向く。


 いやいやアンタら。

 ホラ、……シャルエールの、変な発言はさぁ、

 かっこいいとか何とか、言ってませんでした……?


 これもその一環みたいなもんじゃないっすかねー……。

 あ、ダメっぽいか。ダメっぽいな!?


「あほかシャルエールーッ! 良いからお前、もう黙れ! あと俺はここから逃げる!」

「ギャッギャッギャッ! 焼き払ってやろうかァ、豚ァ?」

「いらん! 余計なことすんな!」

「あぁ! 待ちたまえリョウスケ、アールメイア! 立派だった! 小ぶりだったけど立派だったから!」

「黙れって言ってんだろ! お前ばっちり記憶してんじゃねえよ!?」


 侮蔑の眼差しと奇異の視線と憐みの目線と。

 かくして……、俺の周りは狂乱に包まれて(平常運転)


 また騒がしい冒険の日々が、始まるのであった。






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