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27.勇者無双・1



 ここより。

 戦力的な手助けは、必要ない。

 もとより俺の仕事は、アイツの手助けをすることではないのだ。


 どちらかと言えば、こっちのほう。

 対邪神戦のときのように、メアから周囲を(・・・・・・・)守る(・・)ことのほうがメイン。

 ルミエラの、手伝いだ。


「二十八番、『日に影はさす(ジェリナル)』」


 そう唱えて、俺は防御結界魔法を使用する。

 透明な魔力防御壁を粘土のように形を変え、大きく壁を作った。

 今の魔力量で使える結界魔法は、正直これでも限度だ。

 これまでの冒険で薄汚れてしまった両腕を前にかざし、力を込める。

 ……うん、まだどうにか、魔力は流れるな。ギリギリもいいところだけれども。


「上級結界魔法の『鏡天洞血(ジェイルヴ)』を使えればよかったんだけどな……」


 そんなことをしたら、たぶん俺の身体は威力(フィードバック)に耐えられずにはじけ飛ぶ。

 人間無理は禁物だ。


「……結界魔法」

「おう。一応俺の、切り札の一つなんだよ。

 攻撃系より防御系のほうが相性良いみたいでなぁ」


 シャルエールの呟きに応えつつ、俺は自身の仕事を再認識する。

 俺の仕事は、町と平原の中間地点に広い結界を張ること。

 それ以外の結界は――――ルミエラが行ってくれているはずだ。


「ってことで、良いんだよな……?」


 そういって俺は。

 上空にたたずみ、このあたり一帯に特大結界を展開しているルミエラを見る。

 かなり距離があるはずなのだが……、むこうも気づいたのか、軽くこちらに投げキッスを飛ばす。

 ……うん、やっぱりどこか、センスが昔な気がするぞアイツ。

 さておき。


「俺らの今回の役目は……、メアとモンスターらが全力でやりあえるバトルフィールド(・・・・・・・・)作り(・・)ってところだな……」


 まぁいいさ。

 元々こっちのほうが向いているのだから。

 ただ……、気を抜いた瞬間。おそらくこの結界は破壊される。

 それほどの暴力性と破壊力を、メアは持っているのだから。


「洞窟内よりも、死ぬ気で挑まないとな……!」


「キミのそんなにも真剣な顔は……、初めて見たな。そうか、それがリョウスケの、――――本気の顔か」


 シャルエールはそう言って。

 俺の顔を覗き込む。

 美形に凝視されると照れるのでやめてほしい。


「いやいや、そんな大層なもんじゃないって。

 ほら、洞窟内でも結構情けないところ見せただろ? だからせめて、こういうときくらいは役に立たないと……なぁ?」


 んなこと言うと更に情けなくなるが。


「サリエナさんやルミエラの『思惑』を知っちゃったらさ……。さすがにきちんと協力しないわけには、いかないかなって」

「なるほど……。

 フフフ、ちょっとかっこう良いね、リョウスケ」


 言って。

 口元を微かにゆがませる。


「僕も……、あんな風に強くなれるんだろうか」


 それは強さへの羨望のまなざしか。

 それとも、届かないと感じ取った諦めのまなざしか。


「リョウスケ……、僕は、」


 シャルエールの呟きに、俺はひとまずの答えを出す。


アレ(メア)を目指すのであれば……、この戦いは、絶対に見ておいたほうがいい」


 手先に魔力を集中させ、俺も眼前を見据える。


「こっちには構わなくて大丈夫だぞ、シャルエール。なぁに……、防御壁なら俺に任せとけ」


 こういうことは慣れてるからなと笑う。


「そうか。では――――、そうさせてもらうよ」


 意を決した声を、背中から聞いた。


 さて、これより。

 この中に存在して良い生命は、ただ一つ。

 アールメイア・エトワールだけだ。


 それ以外の生命は、今この時を持って――――


 全て、灰燼と帰すことになる。












 骨が舞う。

 肉が飛び散る。

 血が海になる。


 暴力行為のバリエーションを、あらかたやりつくしたかのような。

 そんな惨状が、広がっていく。


 晴れが似合う、

 緑広がる平原だった。


 そこに。

 魔物が数千と。

 野に放たれた、(ニンゲン)が一匹。


 魔物の数匹が、一斉にアールメイアを取り囲む――――が、遅い。


 並外れた頭の回転力から、常識外の戦闘アイディアが沸き上がる。

 そして……、それを実行できるほどの身体速力を併せ持つ彼女の前では、取り囲みなど無策に等しい。


 思慮外の一アクション程度では、アールメイアという勇者の動きを止めることなどできやしない。


 牙をむき出し、彼女は笑う。


「『地を砕く(スコープ)』」


 呟き、アールメイアは高く飛び上がる。と、同時。乾いた大地に亀裂が入った。


 ――――さぁ、もう遅い。

 速度という概念は、この場ではとっくに過去の遺物だ。

 彼らは違う手段をもって、あの獣を捉えなければならない。


「『地へ返す(クラフト)


 落下。

 自由落下とも違う、加速に加速を加えた、速力をも無視したスピード。

 瞬速も、快速も、置き去りにする光速の体現。


 ターゲット目掛け、ソレは、天より地へと飛来する。


 隕石とも見まごう破壊力を纏った一つの砲弾(アールメイア)は、大地の限界を試すかのごとき威力をもって、着弾した。


 衝撃により、一気に数十の魔物らが飛散し、消滅していく。

 死の連鎖だ。

 命の消化が、縦列を成していた。


 物理法則の限界を更新し続けるかのような動きを、赤と金の生物は繰り出していく。

 右、左、上、下、天、地、空間、世界。

 全ての方向をくまなく蹂躙しつくす、破壊の獣へと変化して。

 アールメイアは何を求めるでもなく、塵芥(エネミー)と踊りつくす。


「『赤色は呪いを(サーベル)』」


 体液にまみれた両腕を交差させ、呪いの言葉をつぶやくと同時。中空が歪み、突如として赤色(せきしょく)の牙めいたものが現出した。


 勇者の使う――――、この世に存在しないはずの、呪いを纏った牙たち。

 それらは八方同時に射出され、あたり一面を魔物の体液色へと変貌させた。

 骸へと変わっていく生物らを静かに眺め、彼女は笑う。


「ギャギャギャッ!」


 遊具で遊ぶ子供と、何ら変わらぬ表情。

 夢想状態のような、浮遊状態のような。

 あどけなさの残る、天衣無縫なる残滓(カケラ)


 笑う悪魔へと、無謀にもイノシシめいた獣が駆ける。

 それを中空へひらりと躱す。と同時、


「『先に刺す(バレット)


 唱え終わったときには、数本の魔法の槍が突撃してきた魔物を貫いていた。

 光り輝くと同時に、それらは爆散し、消滅する。


 黒煙の中より現れたアールメイアは、その身を一つの弾丸のように回転させながら次の群れへと飛翔していく。

 放たれた銃弾のように、様々な物体(いきもの)を貫通し、発射と着弾を繰り返す。


 細かい手技、足技を駆使し、ひと際大きな魔物のもとへと到達した凶弾(アールメイア)は――――そのままその小さな拳をソレの口腔内へと突っ込んだ。


「――――『なくなる(クラック)ッ!』


 爆ぜた、

 音がする。


 比喩ではなく、地形が変わるほどの一撃。

 地層が見えるほどの轟炎と衝撃が、アールメイアの右手より先に広がっていた。


「……ギャッギャッギャッギャッギャッ!」


 圧倒的なまでの破壊を繰り広げた彼女は。

 とてもとても楽しそうに、煌々と、


 あどけない少女のように、無邪気に笑いを上げた。






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