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23.奥地、見える



 階層的にはおそらく地下八階ほどだろうか。

 クリスタルの輝きが増していく通路を進み、その場所を目撃する。

 ドリルのように、先のほうが少しずつ先細りになっているようなつくりになっていた。

 なだらかにらせん状の坂道が続く――――その中央。


 空洞部分の奥底周辺は、光り輝きすぎて見えなかったけれど。

 輝かしい光の中に、かすかに見える、何かの影。


「何かが奉られてる……、のか?」


 俺の疑問にシャルエールが隣で頷いた。


「さすがに遠すぎてわからないな。……僕ならこの高さからなら一気に降りられるが、」

「危険だ。やめたほうが良い」

「みたいだね。何が潜んでいるか、分からない……」


 またぞろ、あのクリスタル・ゴーレムのようなものがいないとも限らない。

 強くなったとはいえ、流石にシャルエールには荷が重いだろう。実力的な部分ではなく、戦闘経験として。


「今のところ、俺とメアの魔力配分は三十と七十。いざとなったら、でかいのはメアに任せてしまおうぜ」

「……そうなるか。悔しいけれど、今は仕方がないな」

「ギャッギャッ、任せろ」


 俺たちの作戦に対し、背後からの奇襲に目を光らせてくれているメアが、楽しそうに返事をする。

 ここから先はさすがに不明瞭なことが多すぎる。

 シャルエールにレベルアップしてもらうのも大事ではあるが、それも命あってのことだからな……。


「油断と無茶は禁物だ。わかってるだろうけどな」


 俺の言葉にシャルエールは無言でうなずく。

 メアはまぁ……、言われるまでもないか。

 コイツはむしろどんな弱い敵に対してでも、基本的には全力で当たりたがるからなぁ(そして不完全燃焼のまま終わってストレスを溜める)。


「さて……」


 中央を目指し、坂を下る。

 このまぶしさにもだいぶ慣れてきた。

 しかしながら結局のところ。

 俺たちはこのクリスタルの洞窟で、何をすれば良いのだろうか。


「…………、」


 まさか、本当に潜るだけで、借金返済になっているわけではあるまい。

 洞窟内のモンスターを駆逐。もしくは、特定のモンスターを討伐という依頼だった場合は、さすがに事前に言われていなければ対処できないし。

 それではやはり、奥底にあると噂される宝が目的なのか?


「うーん……」


 疑問を抱えつつも足を進める。そろそろ下へと到達しそうである。

 おそらくは、この階あたりが最下層だろう。

 地上に近い階層とは、明らかに空気中に混じる魔力の濃度が違う。

 そう、考えた直後だった。ぴりぴりっと、俺の左腕に魔力が流れてくる。


「あ、これは……」


 魔力による通信だ。

 俺はさっと慣れた手つきで中空に四角を描き、魔法を起動させる。

 天界とのやり取りの際使っている、通称タブレット魔法。

 中空に映像が表れ、そこにサリエナさんが映し出される。


『ようやく繋がりましたね。お待たせして申し訳ありません、魔王』

「サリエナさん! 良かった。俺もどうにか連絡を取りたかったんですよ!」


 サリエナさんは美しき所作でメガネを上げ、微笑などすることなくこちらを見やる。

 久々に会ったというのに、俺に対してはやっぱりこんな感じなのね。メアとはだいぶ打ち解けてるっぽかったんだがなぁ。


『貴方がたがクリスタルの洞窟に入った直後から、どうにか連絡をとれるよう調節していたのですが……。どうにもその中は、魔力の波が、安定していないようですね』


 なるほど。そうだったのか。

 ルーリーのときと違い、気軽にこちらから連絡して良いものかが分からなかったからなぁ……。


『それでは要件だけ、簡素に失礼しますね。

 どうやらそろそろ最下層に到着するようですが……、そこに奉られているであろうクリスタルの盾を取得してください』

「クリスタルの盾ですか……。やっぱ、噂は本当だったんすね……」


 この奥底に眠ると言われている伝説の物品。

 誰がどう流布したのかは分からないが、本当に存在するというわけだ。


『まぁそうですね……。順番が逆(・・・・)ですから。……失礼。そこはどうでもいいことですので省きます。

 それでは勇者、魔王、そして新しく加わったであろう騎士の方、よろしくお願い致します』


 画面越しにぺこりと頭を下げるサリエナさん。

 詳細は伝わってはいないが、シャルエールと共に行動しているという事実だけは流れているということか。

 神特有の情報把握。

 監視している対象の、事実だけをキャッチする特権だ。


「了解しました。えーと……、盾を取得したら、どうしたら良いんすか?」

『そのまま所持してくれても構いませんし、不要であれば天界(コチラ)で回収いたします』

「そ、そうっすか……」


 伝説の武具だというのに、何だか業者さんみたいなテンションだった。

 でもまぁ俺らも伝説の剣のときには似たような感じだったし、慣れてくるとそんなものなのかもしれないな。

 どうせメアに合う武器なんて無いんだし。ちょっと使ったら壊れちゃうからな……。


『では通信を切らせていただきま――――』

「す、少し待ってほしい!」

「シャルエール?」


 タブレットの魔法を解除し、通信が切れそうなその時だった。

 脇で黙って聞いていたシャルエールが、サリエナさんを止める。


「すまないが……、僕と話していただけないだろうか、女神よ」


 シャルエールには前もって、神々のことは(話せる範囲で)話してある。

 神々は基本的には、地上の出来事に深くは関われないということも含めて。


「教えられる範囲で構わない。僕に……、神々のことについて、教えてほしい」

『……なるほど。良いですよ。話せることに制限がかかるとは思いますが、人界に大きな影響を残さない範囲であれば、可能です』

「……! 感謝する、女神よ」


 なるほど……。自分以上の強さを目の当たりにして、更に神々レベルにまで目をつけたか。

 貪欲な姿勢だなぁシャルエール……。

 目的が明確にあるとはいえ、こうも自分の知らない世界へと飛び込んでいけるとは……。モチベーションが高いやつだ。素直に感心する。

 俺たちは前へと進みながら、会話を行うことにした。

 中空の映像をシャルエールの目の前へ移し、俺は一歩後ろへ。

 ……まぁ、俺とメアで周囲を警戒しておけば、多少の強襲があったとろこで大丈夫だろう。


「ではさっそく質問を」

『どうぞ』


「今履いているパンツの色と種類を教えていただきたい!」


 前言撤回だー!

 コイツやっぱり、変態度が増してやがるー!

 神だぞ!? 相手女神だからな!?

 怒らせると……、怒ってなくても、すげえ危険なんだぞ!(体験談)


『本日は飾り気のないグレーですね。お尻がやや過敏ということもあり、基本的には私はGストリングしか履きません』

「そうなのか。えっちだ!

 ……フフフ、参考になるよ! ありがたい!」

「何の参考になるんだよ! パンツの種類をどう参考にしたら、強さへの疑問が払しょくされるんだよ!」

「……? 別に強さについて聞くためではなかったのだが」

「じゃあ何のためだ!」

「好みのタイプの美人だったので、パンツを確認した。それだけだ」

「俺の通信のために使ってる魔力を返せ! そんなことのためだったら、また違うときにしろ!」


 感心して損したわ!


『まぁまぁそう言わずに、魔王。いいではないですか、和気あいあいと行きましょう』

「だったらもう少し和気あいあいとしたテンションで言ってくれませんかね!? めっちゃ平坦でしたよ今の貴女!」


 完全に棒読みで、何の感情も籠っていなかったぞ。

 そして、本来なら被害に遭った側である貴女に言われちゃ、通信切る理由もねえなぁチクショウ!

 まったく。自分の常識人ポジが憎い。

 身を任せて楽になりたいなとげんなりしていると、メアが乱雑な口調で通信に介入する。


「おいメ神。あの色黒ゴミ女神はいねェのか?」

『えぇ、今は居ませんよ。ちょっと用事中です』

「そうかよ……。確認しねェといけないことがあったんだがなァ。

 ンじゃあイイや。雑談の続きをどーぞ」


 そう言って、ひらひらと手を振ってまた周囲の警戒に努めるメア。

 うん……?

 何だか妙に引っかかる態度だなアイツ。

 それに……、確認しないといけないこととは何だろうか。

 シャルエールがそのままサリエナさんと会話を続けているのを横目で確認しつつ、俺はメアにこっそりと小声で聞いてみた。


「……どうかしたのか、メア?」

「――――いや、別に。ただ少しだけ気になったことがあっただけさ」

「気になったこと?」


 何だろうか。

 しかもサリエナさんではなく、ルミエラのほうか?


「あの色黒ゴミ女神は……、何かの思惑(・・)を持っていやがる」

「お、思惑って……」


 俺はごくりと唾を飲む。


「つまりその……、また、俺らは騙されてるってことか?」


 一瞬だけ、女神ルーリーのことが頭をよぎる。

 人間界に間接的にしか関われない女神。

 それがうまいこと手段を用いて、俺たちを巧妙に罠に陥れたときのことが――――


「いや、おそらく騙されてはいねェ。

 流石にルーリーと同じようなことをしようとしていたら、メ神が気づくはずだ」


 メアは言葉をそこで一度切り、続けた。


「しかし……、何かの企みは確実にある。そしてそれはおそらく、……悪意では無い」


 と思う。と、そんな風に。

 メアにしては珍しく、自身無さげに言った。


「はぁ……?」


 悪意では無い。

 ……だとしたら、善意?

 善意の企みって何だ……。しかも俺ら、それなりに危険な場所に足を踏み入れてるんだぞ……。


「まぁ、今は考えても仕方ねェな……。気にするな豚ァ。ワタシがいるんだ。どうとでもなるさ」

「お前ってホント……、基本的には男らしいよな……」


 勇猛果敢というか、なんというか。

 とても勇者していると思う。


 そうして。

 坂を下りきる。


 サリエナさん曰く……、最下層。

 そしてそこには。

 噂にあったとされる、クリスタルの輝きを放つ盾が、奉られていた。






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