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18.増えた! 紋章持ち増えた!



 やや煌々と光を放つ紋章を見る。

 よくは覚えていないが……、メアに刻まれているものと一緒のようにも思えた。

 女性のデリケート部分に近い箇所なので、あまり凝視することができないけれど。

 指先の合間からそろっと覗き見ていると、メアは顎に手を当て言う。


「間違いねえよ。同じ形だ」


 そっとメアの指先がシャルエールの下腹部に触れる。

 なんか……、触り方がちょっとエッチだ。


「まぁそれならよ。アレを試してみるしかねェんじゃねーか?」

「ア、アレ……?」


 って、……まさか。

 俺は背中に伝う汗を感じつつ、その単語を口にする。


「まっ、『魔ッサージ』のこと言ってんのか!?」


 確かに、同じような紋章がある以上、効く可能性はあるけどよ……!

 メアと俺の間だけで行われている、『魔ッサージ』の応用による魔力譲渡か。

「おそらく今の状況は、体の中の魔力か生命力が失われている状況だ。師匠の魔力が入れば、回復に向かう公算は大だ」


 し、しかし……。


「オイオイ豚ァ、忘れてンじゃねーのか? もう『魔ッサージ』に、性的興奮が加わることはないんだぜ?」

「あぁいや、その……、そう、なんだけどさ。

 たぶん、初めての相手に対してだと、結構時間かかる可能性あるっていうか……、長く肌を触ることになっちゃうかもしれなくてさ……」

「あぁ? 仕方ねェだろ?」

「そうだよ、な……。あー……、けど、なんだろう、その、」

「あん?」

「いや……、その、――――お前以外に、コレ使うのってさ」


 なんか。

 なんだろう、何か。

 ……いや、使っても問題ないんだろうけど。


「その……、良いのか(・・・・)、なって」

「……」


 俺は、何を気にしてるんだろうか。

 よくわからない。

 わからないけれど、メアは。


 何故かちょっとだけ嬉しそうに、ニヒルに笑って。


「グギャッ……! ギャッギャッギャッ!

 良いんだよ(・・・・・)、気にすンな豚ァ。……嬉しいけどよ」

「嬉しい……? そ、そうか? 嬉しい、のか……」

「ギャギャ、これ以上惚れさせンな」


 惚れる要素あったぁ?

 いや、良く分からん。

 けど、良く分かってないのは、自分自身の感情も同じで。

 まぁ……、メアが良いなら、良いってことに……、しよう。うん。

 人ひとりの命がかかってんだ! こんなときにグダグダ考えても仕方ねえ!


「よ、よし! メア……、魔力配分の変更だ! お前の今の全体から、俺に六十パーセントくらいくれ」

「おう、分かった。もってけ」


 言ってメアは、背中を差し出す。

 元々背中は大きく空いたデザインの服だったが、髪の毛が短くなっている分、いつもよりもすぐに白い肌が目入る。

 背中に触れ、魔力をこちら側へと移し替える。


「……こんな、もんで良いか……? 豚」

「お、おう……。ありがとな、メア」


 少しだけ自身の中に、エネルギーが灯ったような感触に覆われた。

 よし――――これで、対象の魔力を活性化させることができるだろう。

 ただなぁ……。い、いや! だからぁ! 申し訳ない(・・・・・)とか、考えてる場合じゃない!


「んじゃあ、やってやるッ!」

「おう、周囲の警戒は任せろ」

「頼んだぞ」


 バチンと両頬を自分で叩き、俺は準備に入る。


 そう。

 これは、エッチな行為ではないのだ。

 体調を回復させるための行為だから。

 だから……、仕方無いんです!


「……いきます!」


 まったく。

 誰に対しての言い訳なのか。

 俺はそうやって。

 手を伸ばし――――








 静かに眠ったままのシャルエールの腹部に触る。

 ひやりとした感触と、鍛え上げられた腹筋の厚みが伝わってきた。

 低体温の中にも温かさが残る、不思議な感触。

 メアの幼女具合とはまた違った、肌の質感だった。


「よし……、それじゃあ――――」


 入れていく。

 あ、いや。魔力をね?


 ぎゅっと、俺の中の熱を、手のひらから吐き出していく感覚。


 瑞々しい、しかし弱った肌を通して、中へ。

 水の波紋のように、身体中へと浸透させ、奥の奥まで響かせるイメージ。


「うー……ん、」


 ――――やっぱ、メアに注入するのとではワケが違うな。

 体の構造の問題なのか、身体のサイズの問題なのか、相性か慣れか。

 ともかく、魔力が入って行き辛い感じがする。


「ふっ……!」


 圧をかけないよう、手のひらから魔力を強めに押し出す。


「おっ……」

「ん……? ふぁっ……!?」


 自身への(エネルギー)がわずかに戻ったからなのか、シャルエールが目を覚ます。

 しかしまだ体の自由までは取り戻していないせいで、首から上だけをこちらへ向け、驚愕の表情を覗かせていた。


「シャルエール……っ! あ……その、今は何も聞くな! じっとしてろ! だ、大丈夫だ! 変なことにはならないから!」

「し、しかし、キ、キミ……!」

「良いから、大人しくしてろ! 黙ってればすぐ終わる!」


 言いながら、コレは言い逃れ出来ない言い回しだなと後悔した。

 完全にヤバいヤツみたいである。……が、ここまできたら、もうどうにでもなれだ。


「その……、色々と言いたいこととか、逆に聞きたいこととかもあるかもしれないよな……。

 それはこっちも同じで……、えーと、とにかく、もうちょっとで終わるから!」


 言いながら、俺は掌から一気に魔力を注入していく。

 一熱、一熱。丁寧にシャルエールの中に送り込んでいく。


「ひゃわっ! ぐ、ぐぅぅ……!? 何とも、言えない感覚が……、」

「我慢しろ! 俺だって無理やりなカンジは辛いんだ!」

「いや、我慢は出来るけれどね……? ただ……、」


 やや顔を紅潮させるシャルエール。


 まぁそりゃ、パーティを組んでいるとはいえ、出会ったばっかりのオッサンに体の中をいじくられているようなものなのだ。

 恥ずかしいよな……! すまんな! 俺がもうちょっとうまいことできていれば……!


「んん……! 身体がポカポカしてきているが、表面は冷えてきているような……? 不思議な、感覚だな……!」

「……もうちょっとで終わるから、辛抱してくれ」


 紅潮した顔をわずかにゆがませ、彼女は熱を吐く。


「いや、大丈夫さ……! これは、お互いの『熱』を受け渡す、神聖なる儀式。そうつまり、疑似セッ、」

「キレキレなところ悪いけどそれ以上言葉を続けるならお前を殺すことになるぞ!!!」

「フフ、冗談さ……、九割ね!」

「アウトラインだよ。

 良いから大人しくしてろ!」

「はーい。……フフフっ」


 意外と余裕ありやがんなコイツ!

 まったく。……大変なのはいつも俺ばっかりか。


「すまん。ラストスパートだ。最後、ちょっとだけ強めに入るから、我慢してくれ。

 あ、いや……、我慢しなくても良いから、耐えてくれ」

「ん? 強めにくるのかい? ……って、何何ナニ!? 熱い! あっついよコレ! リョウスケ! ちょっと! 何これっ!!」

「聞こえませーん。患者は大人しくしててくださいネー……」

「ぐぎゃ! ぎゃっ! あがががッ! 熱い熱い熱い! 体中がぁぁぁああああッッ!!

 なるほど! はっ、初めてはやっぱり大変なモノなのだね!? そっちも経験はないけれど!! ハッ、ハッハッハッ! やっぱりコレは疑似セッ……、ガク……」


 そこで一旦彼女の意識は途絶えた。

 何故か幸せそうな顔をしていたのが、気味が悪い。


 そうねぇ……。

 目を覚ましたときには、落ち着いてくれていると良いなぁ……。





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