16.メアビーム発射……って言ったらすごいアホっぽいな
メアの身体能力の、ヤバイところシリーズ。
それは、全身のバネだ。
「フッ……!」
俺の言葉に返事をしたメアは、まずは天井に届くくらいまで飛び上がった。それにより――――クリスタルゴーレムは、一瞬メアを見失ったようだ。
確かに、この洞窟の天井くらいまでなら、魔力を込めれば俺も飛べる。
けれどアイツは、そこまでの速さが違うのだ。
俺が天井まで五秒かかるとしたら、メアは一秒だ。
到達点までの速度が違う。
それはつまり、補足側からすると――――
「消えたように見えるよな……」
するとどういうことが起こるかと言うと、その瞬間だけ、無防備な状態が発生する。これがでかい。
百の威力の攻撃を行ったときに、俺の攻撃は防御されるかもしれないが、メアの攻撃は無防備な状態にブチ当たる。だから効きやすいのだ。
「くらえ」
そんな彼女は、相手の頭上より。
超高濃度の魔力弾を、とんでもない勢いで相手に投げつけた。
メア四人分くらいの体積を誇る暗黒色の魔力弾は、クリスタルゴーレムにぶち当たるや否や、周囲の壁までもを壊し始めた。
「メア、ちょ、ちょっと待った! 威力はもうちょっと考えてくれよ!?」
「大丈夫だっての。まだセーブしてる方さ」
……ううむ、まぁ、確かに。
メアの八十パーセントの最大値であれば。もうちょっと被害は甚大なはず、か。
「そもそも……、コレの中にいるシャルエールを助け出さねェといけねーからなァ。死なれでもしたら、困るだろ?」
「……っ!? は、はぁ? コレって……、この、クリスタルゴーレムのことか!?」
中空にいるメアに疑問を投げると、メアは眉を吊り上げたまま答える。
「そう考えるしかねーよ。さっきまでは移動してたってのに、コイツと同じ地点で止まりやがったんだから。中に取り込まれてるか、下敷きになってンのか……」
「し、下敷き……!?」
「例えだ例え。
大丈夫だ。生体反応はある。……ってことは、中に取り込まれてるほうだろ」
「な、なるほど……?」
俺がほっとするのも束の間。
ゴーレムはぎちぎちと、鈍重な動きではあるが、確実にメアを向く。
「良いぜ……、決着をつけるとしようじゃァねーか」
ギチッっと、口角を吊り上げてメアは笑う。
「ギャッギャッギャ」
両手を前に突き出したメアの、纏う魔力が高まっていくのがこの距離でもわかる。
……い、いざってときには、『天罰大痛輪』で動きを……! いや、だけど、それだとシャルエールが助からないのか……?
「慌てんな、豚ァ! きっちりコイツだけぶっ飛ばして、あのクソバカ騎士を救出してやっからよォ!」
「本当だろうな!? 明らかに全体を消滅させるレベルの魔力量な気がするが!?」
「安心しやがれ! ……失敗は三割くらいだ」
「おいーっ!?」
けれど、さすがにもう、止められない。
いつぞやみたいに、魔力弾を連発しているときならまだ間に合うのだが、魔力をチャージしやがっている。
あぁなると。
仮に今メアの動きを止めてしまえば、中空に貯まった魔力は抑えが効かず、波動が拡散されてより酷い結果になるだろう。
「信じるぞメア……!」
ゴーレムの全身が躍動し、魔力の波が高まっていく。
さっきまでのものより大きなレーザーが……、来る!
閃光の一撃が放たれる。と、同時。
メアから。
大きな一撃――――ではなく、
鋭い魔力が。
放出される。
ゴーレムから魔力が射出されたのは、一瞬だった。
その一瞬よりも、速く。強く。
メアの魔力砲は、クリスタルゴーレムの核を貫いていた。
これまでは魔力をすべて、弾の大きさに振っていたメアだったが。
今のは違う。
魔力を、打ち出す速度のほうに全振りした攻撃方法だ。
俺が天界で放った閃光魔法と、ほぼ同じような魔法。
俺が五秒かかるところを、一秒でいける、瞬発力。
コイツ、身体だけでじゃなくて……、魔法でも同じようなことをしやがった!?
「デコピンの要領と一緒だなァ。
溜めて溜めて……、ぶっ放す。それを速さに振っただけだ」
「簡単に言いやがる……」
レーザーっつーか、狙撃銃みたいな感じだった。
ゴーレムにも、よく見てみないと穴が開いてるかどうかが分からないくらい、魔法の後は細く小さい。
大技だけじゃなく、こんな小技も使えたとは……。
「力比べでも負けねーとは思うがなァ。それやると、洞窟が崩れて豚が死ぬんでな。やめておいてやったぜ」
「お気遣い感謝しますね……」
こうして。
魔法によるレーザービーム対決は、メアの完全勝利に終わった。
まるで近代兵器の打ち合いを目の当たりにしたような気分だったぜ……。
「まぁとりあえずは、何事もなく終わったか……」
崩れ行くクリスタルゴーレムの身体を見て、俺はその場の岩にへたり込む。
いかんいかん。まだシャルエールを救出できていないんだった。
ただ俺も……、魔力も体力も空っぽだ。ちょっと休みたくはあるかなぁ――――
「……ッ!? 豚ァッ!」
「は?」
俺の自重が完全に地面についたと、同時。
上空から、気配を感じる。
瞬く間の、一瞬時間。
それは、俺めがけて落下してくる巨大ラットだった。
――――あぁ、忘れていた。
こいつらシャルエールを襲ったときにも、天井から砲弾みたいに飛んできてたんだっけ。
こいつらのバネって、縦横無尽に跳ね回る、メアの動きを思い出すんだよな。
今わの際というのだろうか。
やけにスローモーに見える。思考が落ち着いている。
獣の牙。鋭い爪。開いた醜悪に見える口腔。敵意の目。
弾けるか……? あぁいや、だめだ。
三匹だ。
三匹落下してきてやがる、し、もう俺に、着弾する――――
そんな、どこか悠長なことを考えていると同時。
赤と金の何かが、三匹を拘束せしめる。
「ギャギャギャッ! こんなところで師匠を殺すワケねーだろ!?」
「メアッ!」
「呪いの貯金は、こういう時に使っておかねえとなァ!」
それは。
無限にも思えるほどに広がり、空間を支配する金と赤。
中空のアールメイア・エトワールからこちらに伸びた、
呪われし髪の毛だった。
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