15.光り輝く
クリスタルゴーレムの周囲をびゅんびゅん飛び回り、メアは不定期に発射されるレーザーを回避している。
俺も流れ弾に当たらないよう注意をしつつ、とにかく巨大ラットらの牙を避けまくる。
メアのほうは大丈夫そうだが……、俺の方は極めて深刻である。
何せ今は、出力が二十パーセントしか出ない状態だ。この状況で、俺を四方から囲むラット十三体を相手どらなければならない。
「空間自体が広くて助かった……」
これがもっと狭く、通路が大量にあるような場所だったなら。俺は死角からの攻撃を避けられなかっただろう。
「いつもなら魔力で、生体感知できるんだけど……、今の魔力量でそっちにリソース回すのは怖いし……、なっ!」
自分に言い聞かせながら、俺は牙を受け流すと同時、一体を無事に切り伏せる。
二メートルくらいあるラットの巨体が、音と共に倒れ去った。
「とりあえず一体だけど……、危ねっ!」
ラットからの攻撃ではなく、レーザー魔法が顔を掠める。
ドォン! と大きな音がして、壁が深く抉れていた。
「……何にせよ、長引かせるのはマズいな」
メアは最悪どうとでもなるだろうが、このままだと俺の運動能力と神経が保たない。
ただまぁラッキーだったのは、今の一撃で、ラットも一体貫かれているということだ。
「そりゃそうか……。こいつら別に、あのゴーレムと徒党を組んでるワケじゃあ無いんだもんな……」
巨大ラット同士は意思疎通しているのかもしれないが。
「というか俺だって、あのレーザーに巻き込まれないようにしないとな……」
腕や腹くらいなら、まだ回復魔法でどうにかなるかもしれないが。頭や心臓に食らったらマズい。今の魔力量では確実に即死する。
「よし……。それじゃあこっちも、攻撃に打って出るか!」
片手剣を再び握りしめ、俺は巨大ラットに切りかかる。それと同時に、魔法術式を発動させた。
「二十七番、『瞬風なる刃』!」
そう唱えた瞬間、俺の振るった剣筋から、三つの風の刃が生み出される。
風の刃は、背後、左右へと、鏡写しのようにして、俺の剣筋通りの軌道を描く。
「ハッ!」
そして瞬く間に、巨大ラットを斬りつけた。
完全切断とまではいかなかったが、しっかりとダメージは与えられたようだ。
「よし……、戦えるな……!」
この魔法は低燃費だがなかなか使える魔法で、魔王時代は多人数を相手にすることが多かったため、よく多用していたものだ。
こうして周囲を囲まれたりしたときには、特に役に立つ。
「ただまぁ……、」
今の俺の魔力量では、そう連発
おそらく序列の魔法も、二十番以下を何発かくらいしか使えないだろう。
「一度休めれば、大気中から魔力を回復できるんだけど……、なっ……!」
傷つけられたことにより怒り狂ったのか、巨大ラットの鋭い牙と爪を寸でのところで回避する。
ごろごろと地面を転がってどうにか衝撃を和らげるが……、むき出しのクリスタル部分が地味に痛い。岩と違って完全に鉱石ですからネ……。
「防御に回す魔力すら無いから、仕方ないんだけど」
俺の今の魔力量だと……、上の階にいたときのように、防御力をアップさせることに使うことが出来ない。
つまり、岩・クリスタル、結構痛くて困る。
けど、泣き言を言っている場合では無い。
メアのため。ひいてはシャルエールのために、気合いを入れなければならない。
「もう一度――――、『瞬風なる刃』ッ!」
俺の発生とアクションと同時。
魔力と斬撃の音が響き渡り、ラット三体を一気に葬ることが出来た。
……ただ、それでもあと八体!
それにもしかしたら、まだまだ増援もあるかもしれないのだ。
「う、おおお、おおおっ!」
何発かの打撃、爪撃を『瞬風なる刃』で凌ぐ。
畜生っ、そろそろ限界に近いぞ!
「レーザーにも注意しなきゃいけねえし……!」
ん……? 待てよ?
レーザー……。レーザー、か。
「これは……、賭けだな」
一つだけ打開策を見つけたが、正直うまくいくかは分からない。
ただ……やれるとしたら。
魔力出力が低くなっている今しかない。
意を決して、俺は叫ぶ。
残りの魔力量を、ギリギリ調節してみよう!
「メアーッ! 一瞬だけ目を瞑れっ!」
「……ッ!? チッ! ……瞑ったァ!」
一瞬の躊躇。
だがメアは、指示を受け入れてくれた。
クリスタルゴーレムからいつ放たれるかもわからないレーザー魔法に、真正面から相対しているアイツにとって。
本来ならば、自殺行為だ。
けど、アイツは信頼してくれた。
「感謝するぜ、メア」
こちらから見えてはいないが、メアが瞑ったと言ったのならそうなんだろう。
俺も目を瞑り、限りなく小さめの魔力を込めて魔法を発動させた。
「二十番……、『軌道残らぬ光球』ッ!」
この魔法はチュートリアルのさい、ルミエラに対して放った閃光魔法だ。
タメが長ければ長いほど、高威力になる光の魔法。
光の魔力エネルギーが発射されるので、結果として攻撃的な用法にも使えるのだが――――、ここでは違う使い方をする。
そこかしこに転がっている、むき出しになったクリスタル。
それの裏側からこの魔法を一瞬だけ光らせ、辺りを強烈な閃光により包み込む。
「微妙な、威力で……!」
閃光弾……スタングレネードと言ったっけ。アレの、音が無いバージョンだ。
それを今、簡易的に作り出した。
元々の俺の魔力量でこの魔法を放つと、どれだけ出力を抑えたところでクリスタルを傷つけてしまうだろう。
だが、弱っている今であれば。
ただ強く光るだけの魔法を放つことが出来る。
「――――っ!」
一瞬の真昼が、洞窟内に顕現する。
反射につぐ反射は、やがて乱反射へと変わっていき、あたりを白の光に変えた。
そして……。
「どう……、だ……?」
おそるおそる目を開けてみると、――――そこには、蹲って固まっているラットの大群が。
中には目から血を流しているものもいた。
「……せ、成功したっぽい、な! メア! 大丈夫か!?」
「何とかなァ! ったく……、とんでもねェことしやがるぜ、豚ァ!」
「すまん! あと、指示聞いてくれてサンキューな!」
「ギャギャギャッ!」
向こうは向こうで戦闘を再開しているみたいだ。
ゴーレムにはおそらく眼球機能というものは無いだろうから、今の魔法でも目くらましにはならないだろうからな……。
「ただ、俺がピンチを免れれば……っ!」
その分メアも、動きやすくなるだろう。
「一気にいくぜ……!
二十七番……、『瞬風なる刃』! 『瞬風なる刃』! 『瞬風なる刃』ィッ!!」
動けなくなった巨大ラットらに対し、風刃魔法をありったけ叩き込む。
俺から放たれる斬撃の嵐は、その場にいたすべてのラットを傷つけ――――無事俺は、安全を確保することが出来た。
ピクリとも動かなくなったラットらを確認し、俺はメアに告げる。
「メア! こっちは終わったぞっ! 何かぶっ放す予定なら……、その……、俺を巻き込まない程度の出力でやっちまえ!」
「オ、オウ……」
我ながらなんとも情けない指示の出し方だった。
けどまぁほら、あんまり強すぎたりするとさ。『天罰大痛輪』動き止めなくちゃいけないし。
何だかんだでメアは、戦闘狂だから。
久々にあそこまで身体を動かすことができて、テンション上がらないワケが無いのだ。
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