11.銀片翼のシャルエールの実力
オーガの意外なすばしっこさに捕まり、ひどい目にあわされる。
そんなことは。まぁ、当然ながら無かった。
「……フッ!」
重そうな鎧をまとっているのにも関わらず、細かくステップを刻み、オーガに斬撃を与える。
細身だがしっかりとした片手剣を振るい、少しずつオーガの体力を奪っていく彼女。
「――――なるほどな。でかい一撃が無いヤツは、あぁやって戦うのか」
俺の横で見ていたメアが、そんな風につぶやく。
「やけにおとなしいと思ってたけど、どうかしたのか?」
「いやなに、どうやったらアイツを鍛えられるかを考えてたんだよ。どう仕込めば、強くできるかをな」
「なるほどな。
ただ――――正直人間種としては、超強くねえか?」
「だな。十分すぎるレベルだ」
俺たちは頷き、安心して見守ることにする。
この洞窟のレベルがどれくらいのものかはまだ分からないけれど、少なくとも門番であるオーガに遅れをとることはなさそうだ。
「……しっかし、めんどうくせえなあ。
アイツ鍛えるだけなら、もっとわんさかモンスターがいるところに連れて行ったほうが早いってのによォ」
「仕方ないだろ。俺らだってこの洞窟の中に入らなきゃいけないんだから」
「それが面倒だって言ってんだよ」
まぁ、それは否定しないけれどな。
そもそもこの洞窟で何をすれば良いのかもわかってないんだし。
向かうだけならもうすでにクリアになってるだろうからな。
「ったく、かったりいぜ……ん?」
話していたのも束の間。
メアは俺との会話を切り上げ、シャルエールのほうへと意識を向け直す。
「……決める気だぜ、アイツ。よく見とけよ豚ァ」
「……!」
素早い動きによるステップを止め、片手剣を両手で握りしめるシャルエール。
彼女の周囲に、銀色に光り輝くオーラが見える。
アレは……、彼女からあふれる魔力か?
「はぁぁ……ッ!」
銀の魔力は彼女の身体を通して、剣へと一気に流れ込む。
抑えきれなくなった魔力の波が、剣と共に白銀に光り輝いた。
彼女の鎧よりも、洞窟のクリスタルよりも輝く――――、銀の光。
その魔力波は、どんどん激しさを増し、剣本体が見えなくなるほどに威力を高めていく。
広がった魔力が示すカタチ。
なるほど、これはまるで――――
「……翼だ」
「片翼。……なるほどなァ」
銀片翼。
大きな翼にも見える、魔力を纏った剣。
これが彼女の字名の理由か。
「つぁぁぁぁッッ!!」
振り下ろされる、
一閃。
細かい傷に体力を奪われたオーガに、成すすべなく、
大いなる一撃を、その身に受けることとなり……、両断された身体は、やがて跡形もなく消滅した。
「しっかりとでかい一撃を持ってやがったとはなァ」
「お疲れシャルエール! 凄かったぞ!」
俺たちが近づくと、シャルエールは少しだけ息を整え、涼しげな表情で答える。
「これが――――僕の銀片翼だよ。見てくれていたか? リョウスケ」
「あぁ、しっかりと見たよ。
……何だ。ここまでの実力があるのなら、わざわざ試験なんてしなくても良かったんじゃないか」
「いやいや、一応ね」
「そうか? まぁ何にせよ、合格ってことで大丈夫だよ」
きみに教わるだけの資格が、僕にあるか否や。試験をしておくれとのことだったのだが、うん、たぶん大丈夫だろう。
俺に人の実力を測るような目なんて、別にないのだけれども……。ただまぁ、あまりにも力がなさすぎると、教えている最中に死んでしまったりとかもあるかもしれないからな!
「それじゃあ、本格的に交渉成立ということで。
きみは僕を強く鍛える。そして僕はきみたちをここに案内し、そして終わった後にパンツをいただく」
「うん、冷静に考えると、頼み込んできた側が条件増やすっておかしいよなぁ」
「別にパンツの一つや二つ、いいじゃねーか」
「メアお前……、自分が履いてないからって好き放題言いやがって……!」
「奇遇だね、アールメイア。僕も履いていないよ」
マジかよ。
おかしいな。パンツを履くという、至極一般的な行為をしている俺のほうが、ここではマイノリティーなのか。
やれやれと肩をすくめつつ、歩き出そうとした矢先。
ふと。
気になった。
「あれ? ……シャルエール、さぁ」
「ん? どうしたリョウスケ」
「あぁいや――――、なんか……、」
なんか、その。気のせいか?
「ちょっとだけ、背が高いような……?」
「っ!?」
「ん? どういうことだ豚」
いや……、俺の勘違いだろうか。
でも確か……、ギルドで見たときは俺と同じくらいかやや高いくらいの身長(百七十ちょい)だったと思ったんだが、今は俺よりも確実に高い。五センチか十センチくらいは高いんじゃないか?
フルプレート気味な鎧だから正確には分からないけれど、関節の隙間もちょっと空いているようにも見えるし。
メアは元が小さいから、気にならなかったのかもなぁ。
「さ、坂道だったからな。見間違えたのではないか?」
「そういうもんかな……? いやまぁ、身長の差異くらい、別にいいんだけどさ」
ふと気になっただけだ。
自分よりも背の高い女性なんて珍しくもないし(実はルミエラも俺より高かったしな)、別段コンプレックスもない。
「いやすまんすまん。変なこと言ったな。先に進むか、シャルエール」
「あ……、あぁ……。そうしよう」
まぁ、鎧の足部分とか脛あてとかを変えたのかもしれないな。一旦準備に戻ったりもしたし。
俺たちは本格的にクリスタルの洞窟奥へと足を進めることにした。
輝かしくも不気味な何かが、
そこには広がっていた。
【読者の皆様へ】
お読みいただき感謝です!
広告の下側にある評価欄(☆☆☆☆☆のところ)を押していただけますと、励みになります! よろしくお願い致します!




