7.呼び方
「借金返済の旅路と何だかいかにもアレな感じだけどぉ……、大丈夫、天界は無利子だから☆」
そんな風に明るくルミエラに送り出され、俺たちは再び地上へ。
何が大丈夫なのかはあまり理解していなかったが、すぐにサリエナさんの方から次の任務が届いた。
「クリスタルの洞窟を攻略してください。中であまりいやらしいことをしてはいけませんよ」
とのメッセージがタブレット魔法に表示されていた。……しねーよ。
しかしながら……、前々から思ってはいたがこのタブレット魔法。中世っぽい風景には似つかわしくないサイバーっぽさである。ここだけ何だか近未来みたいな。俺のイメージからできているものだから、百パーセント俺のせいなのだけれども。
「メ神のほうからの連絡か?」
「サリエナさんな。……お前、親しくなったからってあだ名で呼ぶなよ。相手は一応女神だぞ」
「あぁ……、呼称不敬の問題を言ってンのか? あんなもの、気持ちの持ちようでどうにでもなるだろ?」
「呼称……不敬? え、何それ?」
俺がぽかんとしていると、メアは眉間にしわを寄せてげんなりとした顔をした。
レアい表情だ。いつもは大抵立場が逆なのだが。
「初対面のとき、あのゴミ女神にもカマかけられてたろ? ルミで良いとか何とか」
「え……? あぁ……、何か言ってた、か?」
そういえばと思い返してみる。
『硬い硬い~。ルミとか、呼び捨てでオッケーだよ~』
『は、はぁ……。なら、ルミエラ、で』
『……へぇ。うん、いやいや~……、流石だね~、リョーチン』
『……? な、何が?』
『アッハハハハっ! 天然かよ~、ウケる~』
……そんな会話もしたなぁ。
「で、結局これって、どういうことだったんだ?」
呼称と言っている以上、相手への呼びかけの問題なのだろうけれども。
ルミエラをルミと呼ぶことが、なにがしかの悪意となるのだろうか。
「信仰心の問題だよ、豚。
場合によっては、ルミエラという女神を卑下する行為につながることさ」
「え……、卑下するって、そんなこと思ってないぞ?」
「まぁそこは……、正直ギリギリのラインだなァ。
こちらがそう思っていなくとも、ルミエラ側が『信仰心を感じない呼び方だ』と思ったが最後。神への不敬を罰せられることになる」
「そ、そんなことになってたのか!?」
「そうさ。師匠があのゴミ女神を『ルミ』と呼び、それを女神側が『不敬罪だ』と、認識するだけで、師匠には何らかのペナルティが課せられていただろうぜ」
ギチッと、悪い笑顔を見せるメア。
……なるほど。不敬かどうかと取る決定権は、女神側にあるわけで。
いわば俺はあのとき、地雷をソレと知らずに足元に置かれ、「地雷、踏んでいいよ♪」と言われていたワケか。
地雷の起爆スイッチは向こう側が持っている以上、それに対するペナルティのタイミングも、向こうに持たれていたかもしれない……、と。
恐ろしいことだ。
やっぱり神は、程よく信じるくらいに収めていたほうが良いな。
「そもそもニンゲンと神々ってのは、ビジネスライクな付き合いくらいが丁度良いんだろうな……、少なくともこの世界では」
「まぁ……、そうだなァ……」
メアは言って。
ちょっとだけ顔をしかめて、遠くを見やった。
山麓を流れる雲を追っているのか。それとも――――
「……それより師匠。これから任務なんだろ? 出立前に、飯でも食おうぜ」
「おう……、そうだな」
そう言って、俺たちは歩きだす。
今の話は。
もしかしたら、メアの。
何かしらの経験の、エピソードだったりしたのだろうか。
もちろん深くは踏み込まない。
けれど。
さっきみたいな悲しそうな表情を一瞬だけ見せるのは……、
「……いや、」
考えるのはやめよう。誰にだって触れられたくない過去はある。
頭を振って、俺は小さな背中に声をかけた。
「それじゃあメア、何か食いたいものとかあるか?」
「肉だな。あとはもう好きにするといい。ワタシはとにかく肉が食えれば何でも良い」
「……もうこの子ったら、野性的なんだから」
今はこの通り、元気で無邪気で邪気まみれなのだし。
さぁ、今日も波瀾万丈な日々を、送っていこう。
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