表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/179

2.女神サリエナの弁



 さて、それでは説明パートである。

 女神ルーリーという存在がイレギュラーであっただけで、基本的に神々は、人間の敵にも味方にもなりえないらしい。

 ルーリーは、人間に直接関わってみたいという好奇心が生まれてしまった、レアケースなのだとか。


「根本的に神々は、人間側には無関心です。

 助けを求められたり信仰対象になったときのみ、回りくどく、間接的に、人間界に関わります」


 こちらからの呼び声に応じるだけで、本来ならば神側から関わることはないと。

 しつこいくらいに、俺たちは念を押された。


「つまり……、それくらい信用してほしいってことですか?」


 俺がそう言うと、サリエナさんは「ほう」と方眉を上げる。


「意外でした。まさか、私の言いたいことを分かっていただけるとは」

「まぁ何となくです」


 今サリエナさんが言いたかったことは、女神は基本的に、人間に味方できるようにも、敵対できるようにも出来ていないということだ。

 だからつまり、

 先のルーリーが起こした一件は、完全なイレギュラーケース。

 私たちはそうではありませんよということを、説明したかったというわけだ。


「察しが良くて助かります。後であなたの望む通り、赤ちゃんプレイをして差し上げましょう」

「いや結構です! というか別に望んでませんが!?」

「遠慮なさらず。ほら、おっぱいでちゅよ」

「いやおっぱいの話はもういい」


 棒読みで言われてもな。

 珍しく俺の察しが良く、展開の時短が出来そうだったのに。完全に無駄になっただろうが。


「先の事件はイレギュラーで、女神や天界側を信じてくれと。そういうことですね……」

「えぇそうです。あなた方が関わったのは、イレギュラーケースである元・女神のルーリーのみ……。

 ああやって暴走することがスタンダードだと思われても困りますので」


 メガネをついっと綺麗な指であげながら、サリエナさんは改めて言う。

 まぁそれもその通り。

 神側は、俺たち人間界を、滅ぼさないように注視しておかなければならないのだ。


 そのために、俺たちが遣わされているのだし。

 そのために、神なる者たちもいる。

 だからこそ、相互的な信頼関係が必要なのだ。


「あなた方がどれだけのチカラを有していたとしても、あくまでも人間ですからね。

 そちら側からの許可が無ければ、私たち天界側は、友好的に管理することは出来ません」


 それは、友好的で無ければ管理できるということなのだろうか。

 そういえば……。最初メアも、無理やり拘束された感じで連れて来られていたなと思い出す。


「あぁそうか」


 懸念点といえば懸念だ。

 再び神側から裏切られるかもしれないと俺が思ってしまったら、その瞬間から、友好的な信頼関係は築けない。


「う~ん……」


 俺は腕を組んで考える。

 確かにここで。『信頼する』と首を縦に振るのが一番だ。

 けど……、流石にルーリーの一件は、俺の中でも尾を引いている。

 一番最初にこの伊勢家にに来て出会った人物が、実は俺を騙していたのだ。ぬぐい切れるものではない。


「まぁ……、信頼はしますけれども……。ちょっと時間はかかってしまうと言いますか……」


 情けない話なのだが。

 俺はメア程割り切りが早くないし、強くもないのだ。

 そんな俺の心の内を見透かしたのか、サリエナさんは少しだけ語気を柔らかくして、俺に言う。


「大丈夫ですよ、魔王。こちらにも勿論、考えはあります」

「えっ?」

「最初から予想はしていました。

 今回の交渉では、勇者よりも、あなたの信頼を得るほうが困難であると」

「は、はぁ……」


 俺の疑問の息に、彼女は「ですので」と応えて続ける。


「あなたに信頼していただけるように、私はこのようなご提案をさせていただきます」


 そう言って彼女は、静かな動作でメガネを外し……、ぱちりと、細い指をしならせ音を鳴らした。


 次の瞬間。

 瞬く間に、手錠が、足かせが、首輪が、目隠しが、次々と嵌められていった――――! ……サリエナさん自身に。



「フフ……、どうです? 身動きがとれないでしょう? 私は」

「え、何!? どういうこと!? どういうこと!?」



 困惑を隠しきれないんだが!

 いきなり自分で自分を拘束して、何でドヤってんだこの人!?


 俺が困惑した表情を見せていると、ずっと黙り込んでいたメアが「なるほど……」と、珍しく静かに口を開いた。

 いやに大人しいと思ってはいたが……、ずっと観察していたのか?


「な、何がなるほどなんだ? メア」


 そもそも現在、何かに対して納得できる場面というものが存在しないんだが。


「いやいや、神には(ろく)なヤツがいないと踏んでいたが……、コイツはなかなかどうして、やるじゃねェか」


 ギャギャギャと短く笑い、メアは続ける。


「お前が何を愉快そうにしているのかが全然わかんねーんだけど……」


 困惑しっぱなしの俺に対し、メアは「おいおい」と呆れたように言葉を投げた。


「見て分かんねーのか、豚ァ。今コイツは、自分の、身を差し出したんだ」

「あん? 身を差し出した……?」


 見ても聞いても分かんねーよ。

 更なる困惑が俺を襲う。

 するとメアはおもむろにサリエナさんに近づき――――、美しいおっぱいに手をかけた。

 小さいながらも、形のいい胸がわずかに歪む。


「きゃふっ……! フ……、この手のサイズは、勇者ですね。

 なるほど、流石は勇者。分かっていただけたみたいで重畳でしゅ」

「今めっちゃ可愛い声出たけど。めっちゃ可愛い声出たけど!?」


 あと最後もちょっと言葉滑りましたけど。


「えぇそうですね。胸は性感帯なので。性的快楽には勝てませんでした」

「急に冷静! え、どういうこと? いよいよ持ってあなたのキャラが分からない!」


 当惑している俺に対し、サリエナさんはふぅとため息をつき言葉を投げる。


「まったく、ここまで身体を張ってもまだ分からないとは。

 先ほどの察しの良さはどこへいったというのですか」


 言いながら彼女は、自身を縛っていた魔法を解除し、両手でブラを直すようなしぐさを見せた。

 ……さっきのメアの乳揉みで、若干ズレたのか。軽くに見えたが、だいぶ激しく揉みしだいていたらしい。


「さて、勇者」

「オウ」


 最後に目隠しを解除し、眼鏡をかけ、改めてメアと対峙するサリエナさん。

 二人はどうやら、何かで通じ合ったようだった。


「ご覧の通り、私はこの身を、しっかりと『差し出し』ました。これで信頼していただけましたか?」

「あぁ、テメェの誠意、たっぷりと堪能させて貰ったぜサリエナ」

「それはどうも」


 メアとサリエナさんは、がっしりと固い握手を交わしていた。

 さっきまで喧嘩ばっかりしてたのに! 第一印象も最悪っぽかったのに! これが世に言う、ケンカップルか!?(たぶん違う)


「で……、えーと、何? 誠意?」


 話を元に戻そう。

 誠意。誠意、ね……。


「なるほどな……? なんとな~く……、話が見えてきたような……」

「そうだ豚ァ。この神は、その身をワタシらに差し出し、一時的に平伏することで信頼をしてもらうことにしたのさ」


 平服。

 身を、差し出す。

 ギャグめかしていても、その裏には、きちんと理論があったってワケだ。……全然納得いかないけども。

 げんなりとした俺へ、メアは指を立てて説明を投げる。


神や女神(コイツ)らの思考回路はいつだって単純。やられたらやり返せ。そしてそれは、自分たち側にも適応する」

「思考回路というよりは、法則・ルールと言ったほうがわかりやすいかもしれませんね。

 神は人間に対し、基本的に、ルール内の行動しか(・・)取れませんから」


 言ってることは何だか専門的でかっこいいんだけど、さっきの様子を見てるとそう思えないから不思議だ。

 この方自体はポンコツってわけではないんだろうけど……、真面目な外見とは裏腹に、意外とノリがライトだ。口調は硬い系だから脳がバグる……。


「――――と、まぁこれで。女神ルーリーの不始末は、今の一件で不問となったわけだな」


 メアの言葉に俺は首をかしげる。


「ワタシが『神』というものに対し、無礼を働いたからなァ。

 カタチ的には、どちらにも落ち度が存在し、それらが相殺された……ってところ、だよな?」

「えぇ。無礼と無礼。これにて相殺です」


 サリエナさんは眼鏡をついっと上げて、わずかに口角を上げた。


「これで私たちは、平等の間柄に戻りました。

 それでは、契約の話の続きと参りましょう」


 その、わずかにほの見えた笑顔は。

 メアでさえも一瞬時間が止まるほどに、魅力的な美貌を備えていた。


「……さて、それでは本題と参りましょうか」


 そしてまた笑みを消し、ビジネスモードに戻る彼女。

 メアも機嫌が良さそうに椅子を持ってきて(どこにあったんだ)、その場に座る。


「いやに機嫌がいいな?」

「美人はいい。目が回復する。襲って良いならすぐにでも襲いたい」

「お前のどこが勇者なんだよ」


 発想が魔王寄りである。今更ではあるけれど。


「それくらい軽口叩けるランク(・・・)に、神が寄ってきてくれてンだよ。……な?」

「えぇ」


 なんだかもうすっかり仲良しだった。

 ……そういえばコイツ。サリエナさんには、最初から握手を求めていたな。メアにしてはえらい友好的だと思っていたのだが、直感で仲良くなれそうだと踏んでいたのだろうか。だとしたら物凄い感覚機能である。


「しかしさっきの一件……。なんとなく原理はわかったけど……、けど……、」


 俺……、結局何にも得してなくない!?

 楽しんだの、メアだけじゃない!?

 だったら俺にもおっぱい触らせろよ! ……とは、流石に口には出さないけれども(出したら滅却されそうだ)。


 やるせない何かを感じつつ、俺はしぶしぶと続きの話を聞くのだった。






【読者の皆様へ】

 お読みいただき感謝です!

 広告の下側にある評価欄(☆☆☆☆☆のところ)を押していただけますと、励みになります! よろしくお願い致します~!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ