EX.ここからはアールメイア・エトワールがお届けするぜ・3
正直言って、うちの師匠は不細工の部類だ。
アレだ。オーク。
豚亜種、みたいな。
あと身体のラインが汚い。小太りだからなんつーか、ちょっと情けない感じだ。
「はぁーあ」
そいつの顔を思い浮かべて、ベッドにごろんと横になる。
「好き」
我ながら、超デレた。
ドスの効いた声になっちまったけど。
本当に。すっっっっっごい好き。
好きになっちまった。
愛していると言っても過言ではない。
「やべーなワタシ。ギャッギャッギャ」
隣の部屋の師匠にバレないよう、静かに笑う。
いやはや。よもやこんな自分が、人を好きになるなんて日が来るとは。
「つーか、いつからなんだ?」
一ヶ月前までは普通に嫌いだったんだがなぁ。
ややウザいのは今も変わらずだが、どーにも感じ方が違う。
「そういえば巨乳の話されたときに、若干イラっときたな……」
確かのど元をかき切ってやったハズだ。
あの頃には意識していたんだろうか?
「……いや、アレは単に、巨乳がこの世に存在するってことにイラついただけだな」
眉間にしわをよせる。
うん、巨乳は滅べ。
ワタシが巨乳になったら、共存してやってもいい。
「巨乳なー……」
シャツの間から自分の乳を見やる。
乳というよりも胸部だった。
本来ならそこに存在するはずの丘が見えない。
「……見なかったことにしよう」
人は成長する。
今日よりも明日。明日よりも明後日。
「ワタシ(の乳)は大丈夫だ、うん」
まだ十歳だし。これからだし。
師匠に触って貰える日までに大きくなってりゃ良いんだろ? 余裕だろ。
臭い物に蓋じゃあないけれど、そうしてワタシは心を強く持った。
しかし、好きになったタイミングねぇ……。
思い出せない。
ん~……、じゃあ邪神を倒した後、か……?
「いやいや、あの時は普通に迷惑かけてやろーと思ってたしなァ」
別にアレで死ぬとは思ってなかったが。
死んじゃってもいいかくらいには思ってたハズだ。
苦境に立たせる目的もあったわけだし。
顎に手を当ててうーむと考える。
基本的にはどうでも良かったハズなんだよな……。
そもそも同じ人間だとも思ってなかったし、そこらへんの虫とかと同じくらいだったハズだ。
「ん?」
そこまで考えて、致命的なことに気づく。
「そんなワタシって……、師匠側から好きになってもらうところ、無くねーか?」
何てこった。
別に一番に好いてもらわなくても良いんだが。
抱いて貰うくらいには好かれたいのも事実。
というかワタシは基本的に我侭なので(自覚済み)、ワタシが好きなら相手からも好いてもらわねーと満足できねえ。
「ラブラブエッチ……ッ! ラブラブエッチじゃないと……ッ!」
ベッドの上でごろごろと転げまわる。
こいつは致命的だった!
酷く愛されるには、高感度が足りてねえ。
今からでも師匠のご機嫌取りに伺うか? 性処理道具としてワタシを見ていいぞと股をおっ広げるかァッ!?
「だめだ、師匠は童貞だ……! ビッチはあんまり好きじゃなさそうだ……!」
作戦が閃いては消えていく。
勇者、アールメイア・エトワール。致命的なことに、恋愛レベルが限りなくゼロに近い!
「……はぁーあ」
天井を見上げ、一息つく。
くだらねえ。
恋愛感情なんてくだらねえ。
まるで人間みたいじゃねえか。
『お前だって人間なんじゃないか』
そんな言葉を思い出す。
ギャッギャッギャ。
今ワタシは、とても人間めいている。――――だから今、すごく楽しい。
恋愛感情が、くだらなくて、楽しい。
「ニンゲンなんだから、当たり前かァ……」
笑う。
牙をむき出して、笑う。
「なぁんだ……」
最初ッから。
あんまり嫌いでもなかったんじゃねーの?
「いや、それは無いかァ。普通に気持ち悪かったもんなぁ、あの豚」
魔王状態とか、結構アレだった。
あの姿で女に迫ってたってのかよ。ドン引きだわ。
「ギャギャギャ、まァいいかぁ」
あー好き。
師匠が好き。
口にせずとも幸せになってくる。
「ちょっとずつロリ好きにできねえかな。いや、そうしたらワタシが成長したときに逆に大変になるか……」
自分好みにどうにか調教できねえか。
そんなことをかんがえつつ。
夜ももう更ける。
「明日は何してやろーかな」
そう思い。
目を瞑る。
まぶたの裏に移るのは、ちょっと小太りの師匠の顔。
恋する乙女になってよかった。
師匠を喜ばせることを、目標に据えられて良かった。
満足しながら、眠りにつく。
何だか今日は、えらく、
寝心地が良かった。
END
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