33.魔王と勇者は、
前の世界の富士山を思わせる立派な山――――の八合目あたり。
そこには、魔術軍団『アデプト・レプト』の本拠地なるものがあるらしい。
人類を強制的に不老不死へと誘おうとするとかいう……、まぁ、悪の秘密結社だ。知らんけど。
「しかし……、なんだってこう悪いこと目論むやつらって、山に本拠地を置きたがるかね……?」
未開の地が多いからやりやすいのだろうか。良く分からんが。
現在七合目あたりまで登っている。
そろそろそれらしき物が見えてきても良さそうだが……、お、ビンゴだ。
大岩へ丁寧に掘られた魔法陣を発見する。ここに魔力を流し込めば、扉が開くって寸法か……。ただし、専用の解除魔法ではないと開かないとのことだったけれども……。
「まぁ……、関係ないよな……、お前には」
ちらっと後ろを見る。
そこには勿論、
悪魔のような笑顔を貼り付けた、幼女が一人。
爆発と共に、
魔法陣は砕かれた。
煙の中――――、
驚く軍団の方々、
崩れていく岩場、
燃え盛るアジトに、敵意の目。
そして、その出来事の中心に居るコイツは、
猛々しく笑う。
「ギャーッギャッギャッギャッギャッギャッギャッ! さぁ行くぞ、豚ァ!」
「はいはい……」
こうして。
今日もまた一つ、世界に仇なす悪の組織が、壊滅した。
勇者、アールメイア・エトワールは、今日も元気だ。
元魔王、リョウスケ・セキウチも、元気にやってますよ。
「結局よぉ師匠」
「んー?」
アデプト・レプトをサクッと壊滅させた後。
近くの村の商店街にある食事どころにて、俺たちは休憩していた。
今日はもうこのまま休養としようと思ったので、俺はエールを。メアはミルクをジョッキで飲んでいる。
飲み終わったソレをゴトリと置き、メアは俺に聞いた。
「師匠はワタシを抱く気があるのか?」
「ブフゥッ!」
盛大に噴出した。
俺だけではなく、周囲で飲んでいる人たちもだ。
そりゃ幼女の口からそんな単語が出てくればな……。
「お前……っ! 声が、声がでかい! 無駄に通るいい声しやがってっ!」
「いや、きちんと確認しとかないといけねえだろうが」
周囲からの視線が痛い。というかヤバい。
俺がイケメンだったら、「あらあら、あの子ったらおませさんなんだから」なんて可愛らしい目で見られたりもするのだろうが……、悲しいかな小太りの冴えないオッサンである。「何か弱みでも握られてるんじゃないかしら」という視線がひしひしと伝わってくる。
「おまっ、お前とそんなこと、できるわけねえだろ!」
口元をぬぐいながら、俺は言う。
「こんな歳のやつに手を出したら、犯罪で捕まるわ!」
こっちの世界では……、いくつからがオッケーだったっけな。
地域によっても違うだろうが、十歳はどのみちアウトな気がする!
「普通に前科あるクセによー」
テーブルに突っ伏しつつ、上目遣いでこちらを見てくるメア。
「やめろ。このタイミングで前科とか言ったら、他のロリにも手を出したみたいに聞こえるから……!」
今すぐ口を塞いでやりたかったが、そうすると噛み千切られそうなのでやめておく。
「……んじゃー、十五歳だな」
「あ?」
意を決したような声で、メアは言う。
まっすぐに見開かれた目。
これがデレの証だということを、俺は今理解した。
「十五歳になったらよ、師匠にワタシの処女、くれてやる」
白目。
あ、俺の話ね。
魂抜けるわ、こんなん。
確かこの世界は……、十五から色々なコトが解禁されるんでしたっけね……。うふふ、アハハ……。
お花畑の中で、全裸の俺とメアが幸せそうに抱き合っている姿が見えかけて――――
「オイどーした師匠?」
「で、出るぞメア! マスターすんません! お勘定を!」
「ちょっとオイ、待ちやがれ師匠ー!」
冷ややかな視線から逃れるため、どたばたとその場を後にする。
カンベンしてくれ本当に!
「ギャッギャッギャッギャッ!」
あぁ、本当に気持ち良さそうに笑いやがる。
女の子にダイレクトに気持ちを伝えられたことが無い、こっちの身にもなりやがれってんだっ!
てんやわんや。
俺たちは今日も行く。
魔王の目標は、世界を平和にし、自由に生きること。
勇者の目標は、魔王のためにハーレムをつくること。
そんな俺たちの生活が。
この後、天界、人間界、その他諸々に様々影響を及ぼすことになろうとは、
今はまだ、知る由もない。
第一章、本編終了
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