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32.これからのこと



「しんみりしているところ悪いんですけれども~」


 そんな言葉で沈黙を打ち破られた俺たちは、今後のことを説明された。


 話の内容としてはとても単純なもので。

 俺とメアのチカラが強大すぎる。


 よって。

 案A:四六時中神側からの監視つき。且つ、同じ地域にいることを禁ずる。

 案B:相互関与呪縛(ギフト・ギアス)ありきの状況で、お互いに干渉を続ける。

 この二択だった。


 AもBも理由はわかる。

 こんな強大なチカラを持ってしまったやつらに、自由にパーティを組ませるのはマズいってことなんだろう。

 だから、ガッツリと監視されるか、もしくは再び、お互いがお互いの足を引っ張り合えと。そういうことか。

 しかしながら……。


「理不尽じゃね?」

「ハン、人生なんざそんなもんだ」


 十歳の幼女に諭されるオッサンの図である。

 その歳でそこまで達観できているのならば、普段から無茶苦茶な行動なぞしないでほしいものだが。


 そして驚いたことに。

 メアは俺の意見など聞かず、案Bにサインをする。ご丁寧に俺の指を軽く傷つけ、血判まで捺しやがった。


 案B。

 つまりは、これまでと同様……、二人でいるってことだ。


「ま、ガッツリ監視されるのは嫌だもんなぁ……」


 そんなこんなで、俺たちはあっさりと地上に返された。

 また今日から――――今日は疲れたから休むかもしれないけど、明日くらいから、悪者退治の勇者旅が再開される。


「師匠はよぉ」


 地上に戻り、目的地へと向かう道すがら。

 メアが唐突に口を開いた。


「ん? 何だ?」


 先を行くメアに、俺は後ろから答える。するとこちらを向き、わりと真剣な表情で俺を見て、言う。


「魔王の生活は楽しかったか?」

「はぁ……?」


 前の生活、かぁ……。

 何て答えても怒られそうな気がする。


「う~ん……」


 世界を支配して女の子侍らせてたっていうのはなぁ……。

 だからこそメアも、俺を倒しにきたんだろうし。

 一ヶ月くらいしか経っていないのに、遠い昔のことのように感じるぜ。

 けど、ウソついたって仕方ないか。


「あぁ、楽しかったぞ。……まぁお前も知っての通り、童貞のままだったけどな」

「ふぅん……。師匠は女に囲まれるのが、楽しいのか……」

「お……? おう」


 いつもの、こちらを卑下したり罵倒したりするような口調では無かった。

 自分の中に落とし込むような、そんな感じの口調。

 ……そっちのほうが気味が悪いんだが!

 何だ!? 何を納得しやがったっ!?


「メ、メア……?」

「なるほどなるほど。よし、ワタシもどうやら生きる目標が決まったぞ、豚ァ」

「あん?」


 嫌な予感しかしない。

 嫌な予感しかしない!


 ざわめいているのは木々か、俺の心か。

 メアは高らかに、いつもの乱雑な口調で言い放った。



「ワタシはこれから――――、師匠のためにハーレムを作ってやるッ!」



「は……、」


 俺のために……、ハーレムを……?

 作る。


「何……、言ってん、の?」


 は? 何? ギャグ?

 新手の勇者ジョーク?

 頭がいいヤツって、一周回って馬鹿なこと言ったりするけど、そういうこと?


「あー……、どういうことか、説明してくれ。きっとお前の中では考えがまとまっているんだろうけれども……、俺にはさっぱりだ」


 眉間を激しく押さえつつ、俺は言う。


「ハァー? 仕方ねえなあ師匠はよぉー。良ぉく聞けよ豚ァ」


 何だろう。今までもさんざ聞いてきた罵倒なのに、どこか言葉が柔らかく感じる。


「まず師匠は、女を侍らせている状態……。つまりハーレムが好きだった。これは良いだろ?」

「お、おう……。いいぞ?」


 改めて口に出されるとすげえことだが、まぁいいだろう。


「だからハーレムを作ってやれば、師匠はすっげえ嬉しいワケだろぉ?」

「お、おう」


 まぁ、それも間違ってないな。

 実際に作ってもらうかは置いておいて、ハーレムがあれば嬉しいさ。


「だからワタシが頑張る。以上だ」

「いや待て待て! そこだ! そこがおかしい!」


 話は以上だと言わんばかりに歩き出すメアを制し、俺は突っ込みを入れる。


「さっきのマルさんの説明と一緒だ! 『だから』で繋がってねえんだよ!」

「はぁ?」


 怪訝そうな顔をするメア。


「繋がってるよ」

「いや繋がってねえだろ! 何だってお前、俺のためにそんなことするんだよ!」


 しかも『頑張って』ときた。

 あのメアが。俺のために『頑張る』だと? いったいどういうことなんだよ!


「え、あぁ……、そこが伝わって無かったのかよ」


 メアはきょとんとして、

 まるで少女のような表情で、

 無垢な幼女のような顔で、

 言った。



「ワタシ、師匠のこと好きみたいだからさッ! 好きな人のために頑張るのは当たり前だろ?」



「は……、」

「ンだよ。変な顔がもっと変になってンぞ?」


 そう言って、ド派手な外見の幼女は歩き出す。


 残された俺は、しばらく呆然とその場に立ち竦み――――、遅れて押し寄せる事実に対し、叫ばずにはいられなかった。

 一緒にいろと言われたときのような。

 そんな疑問符を声にする。



「はああああああああああああっっ!??」



 こうして。この日。

 リョウスケ・セキウチは、人生で初めて。

 女子に告白されたのであった。







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