表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/179

31.女神ルーリー



 メアのチカラを失ったルーリー様VS自身の力を完全に取り戻したメア。

 まぁこんなもの。

 勝敗結果など、説明するまでもなく。


「ギャッギャッギャッギャッ! 完全勝利だなァ、豚ァ!」

「お前はいつも楽しそうだ。……楽しそうなところ悪いが、ソレ、やめてあげろよっ!」

「あぁ? 何でだよ。別にイイだろーが!」

「いたたまれねえんだよぉ!」


 言って、俺は視線を外す。

 そこには――――、鎖で地面に硬く固定され、ナゾのアレな器具で性的辱めを受けるルーリー様の姿があった。


 おいたわしや。

 女神の威厳はもうどこへやらって感じだ。

 口には猿轡を噛まされ、目はアイマスクで防がれたお姿は、まさに扇情的の一言で。

 ナゾの振動を与えるそういうヤツ。ナゾの挟むヤツ。ナゾの棒状器具。


「お前! その様々なナゾの器具は、どこから持ってきたんだ!?」


 まさか相互関与呪縛(ギフト・ギアス)が切れている一瞬の間に、仕入れておいたのか!? この二時間の間で!? そもそも子供が買っちゃいけませんよ!


「ギャギャギャ……! 覚悟しやがれェ?

 コイツらで今までの借りを、全ッ部まとめて返してやらァっ……!」

「やめろっての! この小説は健全な小説です!」


 謎の電波を受信しつつ、俺はメアを羽交い絞めにする。

 そしてその謎の器具も手放しなさい!

 ……間違っても俺に使おうとか思うなよ?








 …………。

 ……。

 ちょっとだけ落ち着いて。

 拘束常態の彼女を、改めて見やる。


 女神ルーリー。

 絶大なチカラを持っていた、神々の一柱。

 ヒトの世界を支配しようとして、自身もヒトになった。

 ――――そして、失敗した。


 今はもう、チカラを何も持たない、ヒトと神の搾りカスだ。

 下手をしたらチカラを失っていたメアにさえも負けるだろう。


 程なくして。

 俺たちの居た荒野に、『神の門』が開く。

 軽い目配せと挨拶を交わした後、神の兵士たちはルーリーを運んでいった。


「俺もどうやら、思考誘導状態は解けたみたいだな。『様』、つけなくて大丈夫そうだし」

「はぁん? そっか」


 両手を頭の後ろで組み、メアはあんまり興味なさそうに言う。

 まぁコイツからしたら、今となってはどうでも良いことなのかもしれないな。


「ルーリー様……、ルーリーは、どうなっちまうんだろうな?」

「さあな。ただ、もう既に抜け殻みてえなもんだ。

 お前にやられたダメージで、まともには動けないだろうよ」

「そんな威力だったんだな……」

「ギャギャギャ。やりゃあ出来るじゃねえかよ、豚ァ。……この辺りの木々も、凍りついたままだしな」

「それはすまんと思っている」


 俺たちがそんな会話をしていると、神の兵士の一人が話しかけてきた。


「大変恐縮なのですが、お二方も天界へ連れて来いとのことでして……」


 俺たちは顔を見合わせる。

 まぁ行くとしよう。

 気になることもあることだし。








 天界への門をくぐる。

 十秒もしないうちに、そこは見知った天界の景色となっていた。


「ここに来るのも三度目か……。

 未だに慣れないよなぁ……」

「そうか? ワタシは別に何とも思わんぞ」

「マジかー……。なんつーか、こう……、『人間以外が住んでいます』って感じがしてなぁ」

「それはお前の肝が据わってないだけだろ」


 言われてしまった。

 甘んじて受けよう。


 だってなぁ。

 豪奢な飾りつけの柱。

 雲のようなのに硬さは感じる地面。

 どこまでも続く白と青で彩られた、広い空間。

 そして上から吊り下げられた謎のシャンデリア。

 それらが絶妙にかみ合って、不思議な威厳を醸し出している。

 これに慣れるほうがおかしいだろう。

 神々の感性を疑うぜ。


「あ~、すみません~。お待たせいたしました~」


 ガチャリと。

 空間が切り取られ、庶民的なドアの音がする。

 どこからかドアとか……、何でもアリだな。今更だけれども。


 前髪で目が隠れ、どこか鈍くさそうな印象を受ける片翼の人物。

 神っぽい格好をしているので、おそらく神か天使か……。まぁ間違いなくそういった類のものだろう。


「わたくし~、今回色々と説明をさせていただきます天使の、マルエ~ティ~と申します~」


 波打つ語尾が特徴的な天使、マルエーティーさんは、ぺこりと頭を下げて俺たちに挨拶をした。

 ううむ、リズムが良いのだか悪いのだか。


「みんなはマルさんなんて呼びます~。よろしければ、リョ~スケさんもどうぞ~」

「は、はぁ……」


 マルさん、ね。

 まぁせっかくだし呼ばせてもらおう。マルエーティーさんじゃ、ちょっと長いし。


「説明って言ったか、女。何の説明だよ何の」


 悪態をつきながらメアはマルさんを睨む。

 やめなさいメア。一応天界の人なんだから。


「説明は説明ですよ~」

「だから何の説明だと聞いてる」

「ん~……、お聞きいただければ何でも説明します~」


 のらりくらりと。

 怒声をかわすマルさん。

 ……なるほど、こう見えてこの人も曲者なワケね。


「話が平行線なんで、俺から質問が。

 ルーリー……様について」


 俺がちょっとだけ言いよどんで『様』をつけると、メアは見るからに呆れたような表情を見せた。

 一応ココ天界だからさ。つけておこうと思って。


「『様』はもういりませんよ~。何たって彼女はもう~、神ですらないのですから~」


 崇拝対象ではないのです~と、彼女は、それが何でもないことのように言う。


「そ、そうっすか……」


 やはりというか何と言うか。

 彼女たちはどこか機械的だ。

 人間のような姿かたちをしているから分からなくなるが、根っこの部分では人間とは違う。というよりも、地上で生きている生物との考えに差異がある――――

 いや……、これは今考えることじゃあないか。


「そ、それじゃあカンタンに……。

 ルーリー、は、どうなるんです?」

「えぇ、彼女は~……、永久封印となりますね~。

 消滅はしませんが~、天にも地にも、もう現れることはありません~」

「永久封印……」


 俺がそう呟くと、メアがそれに対して補足する。


「神ってのは、基本的には『現象』みてーなもんだ。生きるとか死ぬとかの概念で動いてないやつのほうが多いと聞く。

 大方あの女神も、その類だったんだろーさ」

「正解ですよ~、ア~ルメイアさん~。

 彼女は三千年か四千年か前に~、死の概念を取っ払っちゃったんです~」


 すごいですよね~と彼女は変わらない調子で言う。


「うん。すごい。

 すごいっつーか、俺たちとは世界観が違いすぎて驚くに驚けないっす」


 俺がそう言うと。

 マルさんは「あ~、ソレなんです~」と、両指で俺をさした。

 チェケラ! みたいなポーズである。キャラとあってなさ過ぎる……。


「世界観が違っちゃったんです~、ル~リ~は~。

 だから~……、人間になって~、世界を征服しようと考えたんだと思います~」

「はぁ……?」


 だからで、文節が繋がらない。

 死の概念が無いから人間になる。

 人間になるから世界を征服する。

 えーっと……?


「はぁん……。何となく、言いたいことが見えてきたな」


 俺が考え込んでいると、メアは腰に手を当てて言う。


「いつだって神どもの行動原理はシンプルだ。

 やってみたかった(・・・・・・・・)から。これに尽きる」

「や、やってみたかった?」


 メアは眉を吊り上げ、怒ったように嬉しそうな顔をする。


「要は――――、お前に、憧れたんだよ」

「は? 憧れ……、だぁ?」


 神。女神だぞ? そんな存在が、何で俺に憧れるんだよ。

 ていうか、話が飛躍しすぎてないか!?


「してない。

 いいか? お前が魔王になるよう誘導した……、っていう、思惑が、あったとして」


 メアは歯切れ悪く言う。


「あぁ、いいよ。とりあえず今はそれ前提で」

「ん……。なら、仮定として、お前はルーリーに()められて魔王をやっていたとするだろ?」

「あぁ」


 頷いて、メアの言葉に沿って考えてみる。


「ルーリーは最初、お前に悪さをさせて、それを眺めて楽しんでいただけだった。しかし神は、『結果』のみしか受け取れない。知ることは出来ない」

「あぁそうだな。四六時中は見張れないっていう制約があるし」


 俺の言葉にメアは「そうさ」と笑う。


「地上を統べ、『どうやら』お前は楽しんでいる『みたい』だ。ではそれは――――『何故』だろうか」


 ルーリーは。

 その、内訳(・・)が分からない。


 支配したら終わりじゃないのか?

 何が楽しくてやりたい放題をする?

 女を侍らせる理由は?

 部下と共にいる利点は?

 人々から恐れられることのメリットは?

 そうやって生きる内訳は?

 楽しさの根拠は?


「そう、ヤツはそこに――――『過程』を求めた」

「過程……。俺が楽しんでいたっていう、理屈(うちわけ)の部分……」


 十年。

 おそらく神々にとっては、瞬きするほどの時間。

 けれど事実として、彼女は人間換算での十年という『価値』を、知識としては知っていたはずだ。


 百歳まで生きるとして、その十分の一の時間。

 それを丸々使っての、やりたい放題。


 そんなことの、何が楽しいのか。


 楽しい事実は分かっても、理屈が分からない。

 だから自分も、同じ立場になってみようと思った。

 やってみたかったというのは、ソレか……。


「……ルーリー様。初めて貴女に悪態をつきます。

 本当に……、馬鹿ですね、貴女は。俺なんかよりも、ずっとずっと馬鹿ですよ」


 チカラを持つ者ならば。

 そのチカラを持っておけばよかったのに。



 そうさ。

 だからあの女神はなと、メアは、

 ちょっとだけ遠い目をして、言う。



「――――人間に近づこうとして、失敗したのさ」








【読者の皆様へ】

 広告の下側にある評価欄(☆☆☆☆☆のところ)を押していただけますと、作品への大きな力となります! とても嬉しいです!

 感想・ブックマーク・レビュー含め、ぜひともよろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ