26.決戦開幕!
野営地にて。
大きな魔法陣が描かれた地面。その真ん中に、メアは横たわっている。
しかも無防備に、大の字に仰向け。
攻撃を受けたら容赦なく死んでしまう状況だ。
「なんつー危険な行為なんだ……」
しかしながらそうも言っていられない。
俺は彼女の身体中で脈動する紋章に対して、『天罰大痛輪』の魔力を送り続けなければならないのだから。
現在俺はメアから一メートルも離れていないところで、彼女へと魔力を送っている。俺の息子はもつのだろうか。頑張れマイサン。
「……、」
作戦は、こうだ。
単純にして明快。
俺が遠隔で、メアを痛めつける魔力を送る。
メアは当然平気だが、それを受け取る側はたまったものではないだろう……という、予想が立てられる。
そうこうしているうちに。
逆鱗に触れた竜の咆哮のような怒号が、天から聞こえてきた。
『イイ加減に――――』
「へ?」
『――――しなさあああああああいっっっ!!』
鋭い稲光のようなものが走ったかと思うと――――そこに。
黒い天使が降臨していた。
翼と法衣は、前見たときよりも黒の色が深くなっている。
表情は柔らかく笑ってはいるものの、青筋が立っていて。
そして。
何よりも彼女の黒翼と共に背中から生えた五本の触手めいたものが、全て俺に向かっていることで、彼女が怒り狂っていることが見てとれた。
女神の言葉はしっかりと聞こえた。
それはつまり、今はもう完璧にメアの力をコントロールしているということ。
ルーリー様の意思で、喋れているということだ。
『本当に……、殺すわよ、りょーちゃん……! こっちがまだチカラになれていないのを良いことに、よくもまぁ好き勝手やってくれたわねぇ……!』
「ひぃっ……、怖い!」
シンプルな感想が口からこぼれる。
怒気だけで周囲の木々がざわめくレベルだ。
圧が凄い。あと、カタチは女神のままで、殺すとか言ってくるところも怖い。
「……ルーリー様、なんスよね? 本当に」
『えぇ、そうよぉ……? ウフフ、そのおめでた~い頭では、もしかすると私は何者かに操られていて、だから考えが悪寄りになっちゃって、メアちゃんのチカラを奪ったんじゃないか――――とか、考えちゃってたのかしら~?』
こちらへ少しずつ歩み寄りながら、ルーリー様は言う。
まぁ、それも考えなかったわけじゃない。
わけじゃないけれど。
「いや……、ルーリー様の意思なんだったら、別に良いんです。操られているんだとしたら、助けたほうが良いかなーとは思ったんっすけども」
自分の意思なら、もうそれで良い。
仕方ない。
「あの……、メアにチカラを返してもらうことって、出来ないっすよね……?」
『――――私が応じると思う?』
「……ですよね。なら、良いっす」
それならもう仕方が無い。
仕方が無いのだ。
こうして、ルーリー様と対峙する。
これが……、現実だ。
「それじゃあ、戦います。
俺が勝って、メアにチカラを戻しますんで……」
言って、俺は剣を構える。
急ごしらえだが、良い剣だ。しっくりくる。
聖剣なんてものでも何でもないけれど。
あのとき空を舞っていたメアのように。
俺も、剣を構えようと。そう思ったのだ。
「いきます……」
さぁ、決戦だ。
弱った勇者を守るため。
圧倒的な力を持つ女神に、魔王が立ち向かう。
俺は。
メアの言葉を思い出し、
どうにかこうにか、身体にスイッチを入れた。
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