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17.再開



 何も無かった! 何もありませんでしたから!


『ローリロリロリロリ! 貴様は幼女で童貞を捨ておったァ! よって、一生熟女しか抱けぬ身体にしてやるわぁ!』

『グワー! エルフは熟女に入りますかぁ!?』

『ロリロリッ!? ロリの穴だけでなく、法の穴までをも突くとは! あなどれんヤツロリ! 穴だけに!』

『裁判長の穴をつくとは何という生物だ! ビームで抵抗だ!』


 ロリビームが俺の全身を襲う! うわあああ! 熟女しか抱けなくなるうううう!

 ……ロリからのビームなのに熟女しか抱けなくなるってどういう原理なのだろうか。それはさておきグワァーッ!


『マッスル! 失礼しマッスル! ここに罪人がいると聞きつけマッスル!』

『ロリリ!? マッスル隊員ではないか! いいぞ、コヤツを抱くことを許可する!』

マッスル(了解)!』


 おう!? どういう展開だぁッ!?

 押し寄せる大量のマッスル男子たち。

 ロリ裁判は佳境を向かえ、並み居るマッスルたちが俺のあんなところやこんなところをまさぐり始める!

 やめて! マッスルじゃないから! 俺はそんなにマッスルじゃないからぁ! あとロリとマッスルにどんな関係性ガァッ!

 ア、オウ! オオウ、新感覚ゥ!

 そこはぁぁぁぁアッー――――


「そこは出入口じゃなくてただの出口だからあああああああ!?」


 がば、と。

 悪夢からの脱出と共に、俺は目を覚ます。


「あれ、法廷は!? 裁判は!? ロリ司法はどうなった!?」

「どんな夢を見とるんじゃお前さんは……」


 ついぞ。魔ッサージ中にメアに手を出して最後までいたしてしまった俺は、そのあと並み居る幼女愛護団体によって拘束され、ロリ裁判にかけられ簀巻きにされ、もみくちゃにされつつそのまま火山へと落とされそうになっていたのだが……、ふう、どうやら夢だったようだ。


「火山のくだりは違った内容だった気もするが……、何故だろう、その展開のほうがマシだったと思える自分がいましてですね……」


 何にせよ夢だったらしい。

 俺の童貞は、どうやらそのままみたいだし。ほっとしたような、そうでないような。


「…………ようやく起きたか、師匠」

「お、おうメア。

 えーっと……、ココは……、神殿、か?」


 あたりを見回すと、聖剣眠る祠ではなく、神殿へと戻ってきていたようだった。どうやらメアが、気絶していた俺をここまで運んでくれたらしい。


「あァー……、思い出して、きた、ぞ……」


 頭を抑えて脳を刺激する。

 あのとき。いざ『魔ッサージ』をするぞという状況になって。

 ロリロリしい身体を眼前に控えた俺は、それでもなんとか理性を保ち、どうにか柔肌に触れたまでは良かったのだが……。

 気合を入れすぎて、俺の体の中に流れる魔力を与えすぎてしまったのだ。


「魔力の譲渡は加減を間違うと、一気に体力を持って行かれるからなぁ……」


 魔王時代に、それで失敗していた冒険者を何度か見たことがある。

 まさか俺がその状況になるとは思っていなかったがともかく。

 酩酊状態みたいになってしまった身体は、平衡感覚がまともに機能せず……、情けないことにメアに背負われて洞窟を後にしたのだった……かな。


「あー……、うん」


 朦朧とした意識の中、覚えているのはそれだけ。

 結局メアが快楽を感じていたのかどうかは、分からずじまいだ。……何故だかそれで良かったような気もする、うん。


「えっと……、ごめんな、メア。本当はもうちょっと暴れたかっただろうに……」

「まぁ、別にいいさ。これからもあの聖剣の封印は『活き』なワケなんだしな」


 また違う日に来れば良い。なんて、愉快そうに笑うメア。

 んー……、一瞬だけだけど、不機嫌そうに見えたんだけどなぁ? まぁ、不機嫌なのはいつものことか。


「ううう、勇者殿……、いやさ、勇者様! どうか考え直してはくれんじゃろうか……! 聖剣を! 聖剣を何卒持っていってくれぇぇぇ!」

「い・や・だ・ね!」

「そんなぁああっ!」


 ご無体ですぞとむせび泣く、かつてはちょっとだけ威厳のあった神官さん。

 そうか……、つまりこの人は、またも聖剣を管理するために、この神殿に留まらなくてはならなくなったワケか……。かわいそうに。


「さ、さーて、目も覚めたし……、俺たちはそろそろお(いとま)させていただきますかねー……」

「見捨てんでおくれ、お付きの人よぉ!」

「いや無理ですって! メアがこうと決めちゃったら、テコでも動かないんすから!」


 そして口出しをしようものなら、丸焼きか氷付けか電撃か斬首である。この一ヶ月で身をもって知っている。


「まぁホラ……、オシャレな模様も戻ったことですし、良かったじゃないっすか」

「封印が戻っておどろおどろしさが戻っただけじゃわい!」

「あ、はい。それじゃあ、そういうことで」


 スタスタと、見知らぬふりをして出口に歩き出す。

 面倒になったのか、メアはとっくに外に出ていた。お前、厄介だと思ったこと、俺に投げすぎだから!


「見捨てんでくれえ! 勇者様よぉぉぉ~!」


 遠ざかっていく神官さんに心の中で敬礼しつつ、近くを通ったらお土産くらいは買ってこようと心の中で思う俺であった。

 尊い犠牲に……、敬礼!


「馬鹿やってねーで、さっさと街まで帰るぞ師匠。腹減ったし」

「あぁ……。何だか俺も、無性に疲れて腹が減ったよ。

 くそったれ! 今日は奮発して、良いモノ食ってやるー!」


 空に叫び声がこだまする。

 勇者と魔王のパーティ、今日からまた平常運転開始である。






 神殿を出て、夜の八時を回ったころ。

 完全復活を遂げた|(遂げてしまった)メアと共に、俺は一度タヴァリス城下町へと戻ってきた。

 本当はこのまま違う街へと向かっても良かったのだが、久しぶりの大きな街だ。堪能したくはある。


「……この、奇異の視線さえなければ、だけどな」


 人のうわさも七十五日だか四十九日だか。

 何にせよ、奴隷モードのメアと街を徘徊してから丸二日も経っていない。そりゃあ、そんな目線向けられますよネ。


「今はもう奴隷モードの格好じゃないから、そこまで目立たないけどな」

「チッ! ……アレはアレで、可愛かったかったんだがなァ」

「お前のセンス、どうかしてるよ」

「ギャッギャッギャ」


 まぁいいか。

 上機嫌に笑うメアと共に、俺は夜の街を闊歩する。


「まぁ……、今くらいならまだ、ド派手な幼女を連れたオッサンにしか見えないから、大分マシ、か……」


 マシの定義が今、問われる。

 が、それくらいの視線になら慣れっこなので、こちらもあまり気にしないことにした。


「しかし、変な視線っていうけどよぉ、師匠」

「ん?」


 前を行くメアが後ろの俺に言葉を投げる。


「ほかの冒険者だって、割と派手だったり、目立つやつらは多いじゃねーか。

 なんでアタシと師匠だけ、そんな奇異の目で見られるんだろーな?」

「それはお前の派手さが、通常の派手さを超越してるからだよ」

「はぁん?」


 メアは、本気で分からないというような顔をこちらに向ける。

 はー、やれやれ……、困ったおチビさんだこと。

 こいつがどれくらい「通常」とかけ離れているのか。わからせてやらねばなるまい。

 一緒に連れ立つようになって、一か月も経過してやることではないような気もするが。

 まぁいい。


「まずお前は……、幼女だ。そこは分かるな?」

「あぁ。そうだな、うん」


 よし、よかった。

 ここの認識が違っていたら、これ以上話が前に進まないところだった。


 十歳は幼女。

 全世界共通認識だ。

 ここがスタート地点である。


「そんな――――そんな幼女の隣には、付属物がある。わかるか?」

「師匠か」

「そうだ。これにより、ただの『幼女』が、『不審者と一緒の幼女』に進化する」

「ふむふむ」


 納得したようにうなずくメア。

 こうして素直なときもある。……上機嫌のときだけだが。

 そして自分で説明しておいてなんだが、俺のことを不審者と言われて理解するあたり、ちょっといろいろと思うところはあるが、まぁ続けましょう。

 いきなり付属物である俺の説明になってしまったが、次に俺はメアの外見に触れることにした。


「お前の髪の毛は、夜でも目立つ金色だろう? しかも、赤いメッシュが斑に入ってる」

「そうだな」

「目立つよね?」

「目立つのか」


 そうですよ。

 なるほど。ここの見識が間違っていたか。


「メアはあんまり、自分で鏡とか見ないしなぁ。

 その色合いで、しかも髪の毛の量も多いだろ」

「ふむ」


 言いながら、自分のクセ毛のポニーテールをぼふぼふと触る。


「身長百三十五センチに対して、百センチくらいはポニーテールだからなぁ……」


 風呂場でほどいたところを見ているが……、頭の上から下げてなかったら、地面を引き摺るくらい長いかもしれない。


「まぁそれらの理由により、お前の『頭部』は、全体的に目立つんだよ」


 メアを遠目から見たとき、カラーリングの半分くらいは金と赤だと言ってもいいくらいだ。


「これによりお前は、『不審者と一緒にいる、やたらと髪の毛が目立つ幼女』に進化する」


 すべてを説明し終えていないのに、この時点で大分目立つ存在となっている。


「金髪に赤の斑は、目立つ。なるほど」


 メアは更に頷きつつ、歩を進めつつ、続ける。


「ただコレは、どうしようもないだろ?」

「まぁな。こればっかりはどうしようもない。色もだけど、その量もな」

「だな」


 コイツの髪の毛はとある理由によりこのままだ。なのでどうすることも出来ない。

 メアが納得し終えたので、俺は次の箇所を説明する。

 ある意味……、次が一番問題の部分だ。


「お前はその……、露出が多い」


 上から下までをじろり見た俺に対し、本気で怪訝そうな表情をするメア。


「はぁ? 多いか?」

「多いよ」


 これまでそんなに描写はしてこなかったが、基本的には装甲が薄めである。というよりも、肌色面積が多い。


「手足は丸出し、お腹も出てる」


 そして何より。


「ただでさえあまり意味をなしていない鎧――――を、脱げば、チューブトップみたいになって更に薄着になるだろ?」

「はぁ」

「それに、ホットパンツとかも、食い込み方がエグいときがあるんだよ」


 むしろ隠れているところのほうが少ないわ。

 正直、ちょいちょい目のやり場に困るときがある。


「これによりお前は、『不審者と一緒にいる、やたらと髪の毛が目立つ、露出が多い幼女』となる」

「これ……、多いのか」


 そこは納得してくれなかったか。

 でもお前、これで多めに隠してる気でいるのであれば、水着とかになったらどうなってしまうのだろうか。

 マイクロビキニ? マイクロビキニなの?


「肌も白いからなぁ……。余計肌色感が目立つんだろうな」

「ふぅん」


 まぁ続けよう。

 次で最後だ。


「そして、そんなお前は。

 こんだけ目立つ要素を持っているのにも関わらず、……態度がでかいじゃん」

「ワタシは尊大だからな」

「あ、そこは理解してくれてるのな。っていうか自分で言うな。

 まぁ……、態度がでかいっていうか、地声がでかいんだよね」


 体が鍛えられているからだろうか。もしくはハキハキしゃべるからか。

 とにかく、『ここにいますよ』という主張が強い。存在感がある。


「とまぁ、そんなところかねぇ……」


 こういうことは、話を聞いてくれるテンションのときに言っておかないといけない。タイミングミスると、俺の首とかが飛んでしまうのだ。


「あー……、なら確か、アレがあったな……。

 オイ師匠。だったら、布面積多めなら問題ないんだろ?」

「ん? そうだな。そのほうが安全だな」


 俺の心的にも、安全だ。

 周りの人だって安心するかもしれない。


「そういえば俺、お前の服全部は把握してないなぁ……」


 メアは金銭に関われないので、一応俺が買い与えているかたちになる。

 けど……、布面積の多い服なんて持ってたっけ?


「仕舞ってるのは亜空間だからなぁ……。どんなもの買ってやったか覚えてねえや」


 本来ならば敵を吸引するための亜空間発生魔法。

 俺たちの魔力量ならば、それを上手いこと調整して便利な収納術として活用することもできるのである。……本来は攻撃用魔法なんだけれども。発明(?)した人すみません。


「まぁそれはいいや。何だ? 明日はそんな服を着てくるのか?」

「あぁ。明日の服装を楽しみにしていろ、ギャギャギャ」

「お? おう……」


 笑うメアに、俺は疑問符を浮かべる。

 嫌な予感しかしないのだが。


 で。

 一夜明けて翌日。


「だからってお前……」

「ん?」

「裸オーバーオールはねーよ!」


 マニアック度上がってるじゃん!

 総合的な布面積は増えたかもしれないけどな! 下半身の面積は増えたが、上半身の装甲が心もとなさ過ぎるだろ!


「お前っ……! 胸元、ダイジョウブなのか、それ!」


 オーバーオールの紐部分が、少しだけたわんでいる。

 おっぱいがある程度突っ張っている体型であれば、逆に布がかかって、一番大事な部分までは見えないのだろうが……、残念なことにこいつはぺったんである。だからして、少しのたわみで胸部が全て見えてしまう事態に陥ってしまうわけで――――


「大丈夫だよ。絆創膏貼ってあるから」

「余計マニアックだわ!」


 ぺらりとめくって胸部分を俺に見せるメア。

 裸見られてもどうも思わないって、そういう意味!?

 コイツには羞恥心というものが備わっていないのだろうか。

 ポニーテールのおかげで背中部分は隠れているからいいものの……、いや、それでも良くないが。


「さて、それじゃあギルドに行こうぜ」

「待って! これ、より大きな誤解を俺が受けるやつ!」


 大きなポケットに手を突っ込んで闊歩するメアを、必死で止めようとする――――が、睨み返される。


「いい加減、うるせーよ師匠」

「あっ、ハイ……」


 どうやら上機嫌タイムは、昨日で終わりを告げていたらしい。

 もうこうなっては、何も言い返せない。仕方が無い、大人しく従うか。


「チッ! ……せっかく選んだってのに」

「ん? 何か言ったか?」

「~~……! 殺すぞって呪文で唱えたんだよっ!」

「え、わざわざ呪詛の言葉を!?」


 あなおそろしや、勇者メア。

 昨日とはまた違う視線を浴びながら、俺は町を歩くことになるのだった。






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