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16.そしてでんせつへ



 一晩たって。

 翌日の早朝。

 俺とメアは城下町を出たところで、神官さんと待ち合わせ、聖剣の祠へと再び赴くことに。


「しかし昨日は大変だった……」

「ったく情けねぇェな豚ァ」

「誰のせいだと思ってんだ!」

「アァ!? ワタシが悪いってのかよッ!」

「ぬぐ……」


 昨晩。

 両手を封じられたメアさんですが。このままでは身体を洗えないことが発覚。そんなわけで急遽俺が目隠しをして洗わなければならないことに。


「全裸くらい見られてもどーってことねェって言ってるだろ?」

「俺が気にするんだよ!」


 まぁ結局。紆余曲折あって、どうにかこうにか洗うことに成功した。……その間にも、俺がこけて洗うことが出来なかったという失敗判定も大量に起こったのだけれども。


 そんなことがあり。

 本日。


「メアよぉ……、今更あの洞窟(ほこら)に何か用でもあるのか?」

「着けば分かるから安心しろ、師匠。あと、はやく歩け」

「速度出したら神官さんついてこれなくなっちゃうだろうが」


 現在俺はメアをお姫様抱っこしてやや早歩きで移動している。後ろからついてくる神官さんも、普通の冒険者よりは速度が出ているのが意外だった。流石は聖剣を守る神殿の主だ。実はエリートみたいな感じだったのだろうか。


「この職につくまでは、ブイブイ言わせておったからのう。まだまだ若い者には負けませんぞい」


 そんな台詞を言う人は大体負けたりするのだが、いやはや、本当に結構な実力者である。

 俺があの狂信者たちを倒したときもさほど驚いていなかったのは、そういう理由があったのか。

 昨日の戦いを反芻していると、腕の中で偉そうにしているメアが乱暴な口調で言ってきた。


「オイ豚。ココ()では魔法使えるんだろ?

 ちょっとだけ魔力をよこしやがれ。譲渡くらいできるだろ?」

「いや、できるけどよ……。

 あれ、ものすごく危険なんだぞ。お前も知ってるだろ?」

「はぁ……」


 方眉を上げてポカンとするメア。


 実は。

 アールメイア・エトワールという生物に対し、俺は自分の魔力を分け与えることが出来る。


 例えばコイツの魔力が空っぽになってしまっていて、ダンジョンの奥地にたどり着いたとき、勇者の魔力(・・・・・)でなければ開かない(・・・・・・・・・)()とかがあった場合、ダンジョン攻略が積んでしまうからだ。

 まぁそのときに、俺の方も空っぽだと意味ないんだけどな。

 ただし『アレ』は、本当に非常時のときだ。

 そして、人前でできる様な事ではないのです。


「それは…………出来ないかな」

「あぁ? 何でだよ」


 何でも何も。


「こんな白昼堂々、幼女にあんな、淫猥なこと、出来るか!」

「いんっ……! 淫猥とか言ってんじゃねーよ! 別にエロくねーし! 感じねーし!」

「わかんねーじゃねーか! ――――はっ!」


 そんな俺たちの言い合いを、生暖かく見守る視線があった。

 そうです。神官さんです。

 居たの忘れてた!


「……おぬし、捕まらんようにのう。いくらモテそうにないからとて、十歳は流石に犯罪じゃて」

「誤解ですから!」


 あとさりげなく失礼だな! 確かにモテないけどさ!

 メアに魔力を譲渡する方法。行動としては簡単で、俺がメアの全身を、マッサージ的な動きをしながら魔力を送り込むという。ただそれだけである(俺はこれを魔ッサージと呼称した)。


 ただそのときに、……とてつもない性的快楽が、メアを襲うらしい。

 さすがにこちらは試していないので、どうなるのかは分からないが。……分からないが! 一度でも行うと、主にこちらがヤバいことになるのは明白だ。


 性的快楽って……、どういうものなんだろうか。

 相手は幼女で十歳だ。

 完全アウトなことは、間違いないだろう。

 そんなワケでこれは、禁じ手中の封じ手なのです。


「いいだろ師匠。場所が気になるってんなら、そこの茂みで一発ヤッちまおうぜ?」

「お前も言い方気をつけろ! 何でそんなビッチみたいな言い回しをする!?」


 神官さんからの視線がよりいっそう険しくなっていく。

 違うんです。コレは何かの間違いなんです。ただ、行う過程がちょっと淫猥なだけなんです――――って、ソレ一番ダメなやつじゃねーか。


「と、とりあえず、目的地まで向かうぞメア! 聖剣の洞窟に向かえばいいんだよな?」

「んー……、まぁそうだな。あぁでも、神官のジジイは邪魔だから、神殿で待っててくれりゃあいいや」


 手をひらひらさせて神官さんに言うメア。

 すみません……。この娘、口が悪いんです。今更なんですけれども。

 そんなメアの態度にもそろそろ慣れてきたのか、神官さんはやや表情を曇らせつつも快くオーケーを出してくれた。

 うんうん、元実力者なだけあって、人間が出来ている人でよかった。

 俺が神官さんの立場だったら、絶対怒って何か攻撃していただろう。そして返り討ちにあっていただろう。


「それじゃあ神殿経由で洞窟に向かおう」


 進路を決め、俺は歩行を再会させる。

 しかしまぁ。腕の中のメアの悪い表情ったら無い。

 何を企んでいるのかは知らないが、この顔だけは神官さんには見せられないな。俺の身体で隠れていて本当に良かった。







 神殿で神官さんと別れた後、俺はメアを抱えて封印の祠までやってきた。

 聖剣が眠っていた洞窟である。

 試練はとうに終了しているので、勿論洞窟内に魔物めいたものは発生していない。完全にもぬけの殻状態だ。


「聖剣が抜かれると、試練満載だった洞窟も、ただの穴倉になっちまうのか。それだけ重要な剣だったんだなぁ」


 役に立つかどうかはさておき、相当重要な物品だったようだ。

 そりゃそうか。概念的に触れない・持てないというものなんて、めったに存在するものではない。

 俺がそんなことを考えながらも、言われた通りに洞窟の奥まで向かっていると、再び「ギャギャギャ」と薄ら笑いを浮かべるメア。

 ……薄ら笑いでも笑い方って変わんねえのな。


「この聖剣を守るための、洞窟の装置。それがあの、試練のように無限に湧き上がるモンスターたち、か。

 ……やっぱ間違いなかったみてーだな」

「お? おう……。たぶん、そうなんだろうなぁ」


 歩を進め、洞窟の最奥にたどり着く。

 死にかけた(主にメアのせいだが)前回と違って、今回は敵がまったく出ていないので超楽チンだった。


「よしよし、台座は残ってるな」

「ん? そうだな。」


 特殊な感じのする石で作られた、過去に聖剣が突き刺さっていた台座を見る。

 そういえば引っこ抜き方も乱雑だったなー……。


「しかし邪神を倒す、最後の最後まで乱雑な扱いだったよなぁ。まさかブン投げるなんて」


 おかげでその聖なる力に殺されそうになったわ。


「まぁ言いつけどおり、きちんと『使って』くれたみたいで良かったぜ」

「ギャギャッ……! あんなの、『使った』ウチに入んねーよ」

「え?」


 その言にギクリとしてしまう。

 あれで使ってないっていうのは……、つまりはどういうことだ?


「……え?」


 使ったうちに入らないということは。

 まだ使っていないということで。――――つまりは、これから使うってこと?

 俺が疑問符を頭に浮かべていると、ギャッギャッギャッギャ! と大きく笑うメア。

 あまりにも大きい声だったので、その声だけで洞窟が崩れるんじゃないかと思うくらいの反響だった。


「うるせえなあもう! ほんとに、何なんだよ!」

「コレが笑わずにいられるかよ豚ァ! 本当に、あの神官のジジイは、いい物残してくれやがったぜ!」


 極悪な笑みで笑い続けるメア。

 コイツ、本当に聖剣に選ばれて良かったのだろうか。本当に嫌になる。

 そうして、

 笑って、メアは言う。



「このクソ聖剣の使い道はなぁ! こうすんだよ(・・・・・・)!」

「え――――、は、はぁ!?」



 ガチィィンッ!

 と。

 そんな音を立てて。


 聖剣は、

 今一度、台座に突き刺された(・・・・・・・・・)



 穏やかだった洞窟が、以前のように。

 最初に訪れたときのように、不気味さを増していく。

 あぁ――――これは。

 戻っている。

 コイツ……、こともあろうに……っ!



 聖剣の封印を、元に戻しやがった!



「ギャッギャッギャッギャッギャッ! やっぱり思ったとおりだったぜ! コレで、事実としては――――

 この洞窟には、聖剣が眠っていて! そして、それらを守るために! コレを取りに訪れる愚か者どもを試すために! 試練が復活する(・・・・・・・)!」



 一つ一つを。

 力強く確認する、このメアとかいう良く分からない生物。

 ……あぁ、他人事ならどれだけ楽だったかっ!


「メ……、メア……、お前ええええええ!!」


 俺は保身のことも忘れて、ついぞメアの胸倉を掴み叫んでしまう。

 怒りというよりも、混乱による行動だ、コレは。


「馬鹿なのか!? どこの世界に、勇者のための聖剣を、また封印し直すやつがいる!?」

「目の前にいるだろうが。目ェついてんのか豚ァ!」


 ファ●クな指をこちらに向ける極悪幼女勇者。

 選ばれし者で特別な存在で何者よりも強くてスペシャルなこのクソ幼女め!


「どんだけ暴れても、概念的に傷はつかねー。そしてその上、敵は無限に沸いてくる。こんなストレス解消ができる遊び場、つぶすには惜しいと思ってたんだよなァ!!」


 ギャッギャッギャと、悪魔は笑う。あぁいや、勇者でしたっけ……。


「ってうおあ! 試練の魔物、めっちゃ沸いてるじゃねーか!」


 台座のあるこの空間の、外。

 神聖なるココには入ってこれないのか、この空間から出るための通路に、所狭しと試練の魔物がはびこっている。


「……あいつら、俺だけじゃあ流石に勝てないんだよなぁ」


 総戦力的には邪神くらいあるんじゃねーの。この試練の魔物使って、邪神倒すようには出来なかったのだろうか聖剣関連の人たちよ。


「オラオラ師匠。ワタシにさっさと魔力を与えねーと、ここから一生出られないぜ?」

「…………!」


 あっ、そういうことか!

 コイツ、ここまで計算済みだったのかよ!?

 俺がここから生きて脱出するには、メアの悪魔的な戦闘力に頼るしかないわけで……。

 そんなの、『魔ッサージ』を行うしかないじゃねーか!


「まさかこういうシチュエーションで、『エロいことしないと出られない部屋』に遭遇するとは思わなかった……!」


 しかもハメられたのは男側である。

 こういうのって普通、女の側が嫌々抱かれてしまって、それがまた萌えシチュなハズだろう!?(攻撃的偏見)


「やってやるさ……! やってやるよチクショウ!」


 心の中で百回ビッチと叫んでやる!

 昨日の風呂場で使ったような、俺の『俺』に対する拘束具めいた物は持っていない。

 真っ向勝負だこの野郎。持ってくれよ、俺の身体(の一部)!


「オッシャラァッ! メアぁっ! さっさと服を脱げやぁああ!」


 言っていることが完全に犯罪者のソレだった。

 あぁいや。そういえば俺、前科一犯(もと・まおう)だったわ……。






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