15.使い道
食べ終わって。
一息つく。
早朝から一仕事(邪神狩り)を終え、腹も膨れたからか、メアはいつもより幾分かは機嫌が良い。
ちょっとした鼻歌をうたいながら、足をぷらぷらさせて窓の外を見ている。本当に珍しいテンションだ。
微笑している横顔を見ると、本当に黙っていれば美幼女の部類だなと改めて思う。まぁ、ちょっと表情は大人びている方だろうけど。
「ん? そういえばメア、その聖剣」
壁に立てかけてある、鞘に収まったソレを見る。
相変わらずの豪奢さだ。派手なメアに良く似合っている。
「邪神を倒したからてっきりもう神官さんに返したものだと思ってたけど、まだ持ってたんだな」
そもそも戦闘中も、投げつけられるまで存在を忘れていた。
だって構えて飛んでいったのにも関わらず、戦闘スタイルは徒手空拳だったんだもの……。けど、そのスタイル自体がいつものことだったため、違和感を覚えていなかった。
俺の疑問に、メアは答える。
「そりゃあ持ってねえとよ。
そもそもコレ、ワタシ以外のヤツは持ち上げられねェんだろ?」
「まぁ、そうだな……」
言われてみれば。たぶんだけどソレ、選ばれし者な人種にしか持てないんだったなぁ。
意識が朦朧としてる中で俺が剣を回収できたのは、何か変な力が働きでもしたんだろうか。火事場の馬鹿力的な。
「あぁそうだ、それで思い出した。メアさぁ……。聖剣をきちんと使うって言ってたけど、投げることは無いんじゃないか?」
周囲を見る余裕は無かったけど、たぶん神官さんも驚いてたと思うぞ。
しかも俺に特大ダメージだったぞ。
「あん? 別に良いだろ、トドメで使ってやったんだから。
それにあの邪神自体、聖剣で倒さないと消滅しない概念を持ってたっぽいしな」
「え、そうなのか? そういうの分かるの?」
「感覚だけどなー。ワタシの攻撃自体で弱ってはいたけど、本当の意味での致命傷にはなってなかったっぽいし。
最後に聖剣で消滅させないと、仮に塵みたいな体積になってからでも、復活・復元してきたんじゃねーかな?」
「マジか……」
「そうなった第二ラウンドが出来たのにな。ギャギャギャ」
「カンベンしてください……」
しかし。
さすがは、この世界に生まれた『選ばれし者』だ。
聖剣の霊験あらたかな感じとかそういうの、分かるもんなんだなぁ。
この世界にはメアみたいに。
選ばれし者と呼ばれるようなやつらが存在する。
種族とかではなく、概念的な話。
勇者だったり、伝説の何がしかだったり、百年に一度の天才だったり、色々だ。
魔王時代、そういったやつらをよく返り討ちにしてきた。結構大変だったが、まぁ、全軍の力を合わせれば余力を持って倒せたというのも正直な話だ。
つまるところ何が言いたいかというと……。
メアという『選ばれし者』は。
そこいらの『選ばれし者』とは、格が違いすぎるのだ。
レベルが離れすぎている。
ただ、どれくらい離れているのかは分からない。何せ――――こいつの底が分からないからだ。
計るためのモノサシが無い。見つからない。
敵対していて、一緒にいて、分かったのはそういうことくらいだ。
選ばれし者の中の選ばれし者。
イレギュラー中のイレギュラーだ。
そんなことを、小さな身体を見て思う。
「選ばれし者なー……」
「あん?」
「あぁ、いやいや。何でも無い」
つぶやいた言葉を飲み込むと、メアは変な顔でこちらを見ていた。
その小さな肩に。
柔らかな手のひらに。
全体、どういう運命がのしかかっているのだろうか――――
「……っと、いかん。
ちょっと考えが逸れてしまったが、聖剣の話だ」
「おう」
「その聖剣なんだけどさ。結局これからも使っていくのか?」
「ん? あぁ――――」
俺が質問すると、メアは変わらず足をぶらぶらさせながら言う。
とてもとても、悪どい笑顔をして言う。
「当然だろ? むしろ、ここからがコレの使いどころだからなぁ」
グギャギャという含み笑いをする彼女。お前、静かに笑うとそういう感じなのね。
またよからぬことを考えているんだろうなぁと思い、「そうか」とだけ言っておく。
……うん、これはたぶん俺が苦労する展開ですね、間違いない。そんな状況で出来ることとしてはただ一つ、覚悟しておくことだけだ。
「あとたぶん、神官さんもきっとがっかりする系のことも起きそうな予感がする……!」
俺はまだ耐性あるから良いけどな! あの人はどうだろうなぁ……。
まだ見ぬ未来の俺たちの運命に、幸あれ。
そう思い、覚悟を決め込み合唱する。
そんな俺をメアは不思議そうに見ていた。……いや、俺がこんな態度のときはほとんどお前がらみのコトだからね!?
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