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14.勇者のお世話も大変ですよ(食事)



 さて、ご飯が運ばれてきたわけなんですけれども。


「お前……、両手がまともに使えないのに、ステーキなんか頼むなよ……」

「戦いの後は肉食いたくなるだろ? 仕方ねーんだよ」


 どかっとふんぞり返るメア。

 そして素足をテーブルの上に乗せたかと思うと……、とても器用なことに指先でナイフとフォークをつまんでいた。


「ストーップ! ストップだメアちゃん! それはいけない!」

「あ? 何でだよ」


 大胆なM字開脚を惜しげもなく披露しながらこちらを睨む。


「行儀が悪いでしょ! そ、それに、お前今、下に何もつけてないんだから……、」


 その、色々と、な。

 奴隷服(仮)の下半身部分はショートパンツっぽい作りにはなっているものの、その隙間から女性的なソレがちらちらと……、いや、行儀! 行儀の問題ですよ、うん!


「俺が切り分けて食べさせるから、とりあえず足をおろしなさい!」

「チッ! うっせーなー」


 舌打ちをしながらも足をおろしてくれるメア。

 隅っこの席だから俺以外には見えないとは思うけど、それでも心臓に悪すぎる。……あと、もうだいぶ目立ってしまってますね、はい。


「んじゃ、さっさと食わせろ」

「お、おう。待ってろ。……よし、切り終えたぞ。んじゃ口を、開け……」

「あーん」

「…………」

「あん? おい、早く食わせろよ、師匠」

「はっ! お、おお、すまん」


 やっべーっ! 破壊力(たけ)えーっ!

 こちらに向かって大口を開けている美幼女の破壊力よ!

 なんつーか、無防備な感じが、変に扇情的というか……。大人しくしていれば美幼女って、ズルいよなぁ!


 対面だと食べにくいからか、俺の隣に移動して、またも口を開けるメア。

 赤い舌。尖った犬歯。

 一つ一つがどこかエロく見えてしまう。……何だ? 俺、欲求不満なのか?


 食べる。

 食べる。噛む。飲み込む。食べる。


 それにしても美味そうに、よく食べる。

 まるで普通の幼女みたいだ。……いやまぁ、普通の幼女というもの自体、あんまり知らないんだけどさ。

 両手がふさがるだけで、こんなにも違うものなのか。


 考えてみれば、コイツの偉そうな態度というのは、大体ふんぞり返っているときが多い。両手を腰に当てたり大また開いていたり。そのアクションできる稼動域が狭くなることで、ここまでしおらしくなるものなんだなぁ。

 両手が内側に回っている状態のメアに飯を食わせてやりつつ、俺はそんな風に思う。


「スープくれ」

「おう。ちょっと熱いぞ」

「ん」


 じゅるじゅるとスプーンから音を立てて飲む。


「……お前、やっぱりわざと下品に食べてるだろ」

「さーなー。何のことやら」

「ま、俺も別にめちゃくちゃ綺麗に食えたりするわけじゃないから、いいんだけどさ」


 何のこだわりがあるのやら。


「師匠も食えよ。冷めるぞ」

「ん? まぁ、そろそろな。

 俺は猫舌だから、もうちょっと冷ましてからにするよ」


 言って、そのままメアの口に飯を運び続ける。

 うん、よしよし。こういうこと初めてやったけど、だいぶ慣れてきてコツを掴んできた。


「ホラ、こっちも食え。口開けて」

「…………あーん」


 おお、丁度良い量を食わすことができた。何だかだんだん、そういうゲームみたいに思えてきたな。


「いやぁ、楽しいし可愛いしで、イイことずくめだなコレ」

「……かわ? 師匠、頭イカれたか?」

「え、あぁ、いや……」


 いかんいかん。下手な単語で褒めたりすると、逆に機嫌が悪くなるのだ。


「とりあえずほれ、最後の一切れだ。食っちまえ」

「おう。……あーん。

 ふぅ――――、美味かったぞ」


 珍しくリラックスした表情で背もたれに身を預けるメア。

 俺も食うとするか。……うん、美味い。


「……さっきの、……もう一回、」

「うん? 何か言ったかメア」


 いかんな。飯に夢中で話聞いてなかった。

 確かにこのステーキ美味すぎるわ。神かよって感じだ。


「――――さっさと食えって言ったんだよ、クソ師匠」

「お、おう。分かってるよ」

「ケッ!」


 もうこうやって悪態をつかれることにも慣れつつあるな、いかんいかん。言葉だけで済んで御の字だとか考えてしまっている俺がいる。


「しかし、本当にうまそうに食うよな、豚は」

「ん? だって美味いだろコレ」


 若干固めの肉ではあるが、脂身とのバランスが絶妙だ。

 竜種の肉と聞いてたけども。


「いくら倒して肉を得ることは出来てもさぁ、調理はできないからなぁ」


 せいぜいが火を通して焼くくらいである。

 味付けとか、さっぱり。

 だから、きちんとした店できちんとした料理を食えるのは、それだけでありがたい。そして美味い。

 美味いものを食うんだから、そりゃ美味そうに食べるだろ。


「俺らの足だとだいたい町まで戻って来れちゃうから、野営なんてほとんどしないしな」


 飲食店さんとは切っても切れぬ関係と言うか。

 料理を提供してくれるだけで、とてつもなくありがたいことなのだ。


「まァ、野営したとしても、携帯食料で済ませられるけどな。クソまずいが」


 そこは同感。

 どうして携帯食って、あんなにも無味無臭というか、味気ない感じになるのだろうか。防腐剤とかのせいなのか?


「それにしても……、ちょっと多いかなぁ」

「何だ師匠。もう食えなくなったのか?」

「怪我が響いてるせいか、ちょっと食欲がな」


 やや胃もたれ気味だ。普段は魔法でささっと体調万全にしていたからか、こういうときの対処法に慣れていない。


「悪いがメア、残り食ってもらっていいか? 残すのも忍びないし」

「いいぞ。なら、もう一回放り込め」


 あーんと口を開ける。

 ……なんだか、今日はおそろしく従順というか。いや、口の悪さは変わってないんだけど、頻度が少なめというか。

 今日ばかりはでかいリボンも、年相応の装飾品のように見えてくる。

 やはり態度があまり大きくないからだろうか。


「ほい」

「あんぐ」


 むぐむぐと俺の隣で食べるその姿は。

 なんだかちょっとした大型犬みたいに見えてきて。

 ついぞ、頭を撫でてしまった。


「よしよし」


 小さい頭を二撫でする。オールバックポニーテールをちょっと整えて、綺麗なおでこを見た、ところで……、はっと我に返った。


「ん……!? お、俺、今何を……!」

「――――、――」


 メアは普段の三白眼気味な目を見開いていた。

 めちゃくちゃ不思議な生物を見るような目でこちらを見る彼女。


「おおふっ……! い、いや、今のは……っ! 何だろう、ネ。俺にもわからんですたいっ……!」


 だから殴らないで! 魔法が使えない今殴られでもしたら、確実に絶命する……!


「…………まぁ、べ、別に」

「あ、……アレ?」

「別に良い。……ただし、二度は無い。殺す。食わせろ」


 目を横に逸らしながらメアは言う。

 ……どうやら。俺の命は助かったらしい。

 あぶねえあぶねえ。今後こういうことをするときは、命の危険を考えながら行おう。


「というか……、切り分けが大変だったってだけで、食べるだけなら自分でも出来たよな、コレ」

「犬食いみたいでよけりゃ、だけどな」


 今更になってそのことに気づく。

 でもまぁせっかくなので、全部放り込んでしまおう。


「ほい」

「あーん」


 そうして続きをメアの口の中に放り込んでいく。

 命の危険を感じたからか、もうエロさや慈しみは感じなかった。






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