8.おっぱい(俺)
昼をちょっと過ぎたくらいの時間。
一旦宿屋まで俺たちは帰ってきた。
メアは荷物と聖剣を乱雑に床に置き、どかりと椅子に座る。うむ、変わらず不機嫌なままだ。
「さ、さーて、あとは明日までゆっくりしてようぜ、メア」
「……」
「それじゃ……、なんかあったら、言えよー」
無反応のメアをよそに、俺はごろんとベッドに横になる。まぁ、触らぬ神に祟り無しかな。そっとしておこう。
「ふぁ~あ」
俺は盛大にあくびをかましてしまった。
いかんなぁ。明日には邪神が現れるってのに、どうも緊張感がなくなってきた。大きなベッドで手足を伸ばしていたら――――、突然、メアが腹の上に馬乗りしてきた。
「え、お!? な……、何だ?」
外見上は幼さの残る素足が、わき腹に当たる。すべすべとした肌の質感が、どうしても伝わってきてしまう。
メアも、下着姿ほどではないにせよ、今はかなりラフな姿だ。……その、肌が出ている部分が多い。つまりは、接地面も多くなるということで。
キャミソールめいた布地の間から、何だか甘いにおいを感じる気がする。
……絶対に『反応』するなよ、俺の『俺』ッ!
下着姿だって見たことはある。というか全裸だってある。だから今更これくらいで――――いかん、下手に思い出したらダメだ! こういうときはコイツを母親だと思うんだ! オカンのババシャツ姿だと思えば……、メアが母親……、うーん……。
「大丈夫(?)だ……、おっぱいが足りないから……」
様々な勢力を敵に回しそうな発言をして、俺は一旦自身を落ち着かせることに成功する。
「あとメア、パ、パンツ見えてるぞー……」
冗談めかして言うが、メアはずっと怪訝な表情のままだ。馬乗りになったまま、動こうとしない。
あんまり屈むなよー……! 先端が……! 先端が見えるかもしれないからな! そうなったら(というか最初から)俺のせいじゃないからな!?
パンツ越しに俺の腹に当たっている女子の部分を、どうあっても意識から外せない。……しっかりしろ俺! 女性なら見境なしなのかよ! ……あ、魔王時代はわりとそうだったわ。って、いやいや! ここまで幼い子は居なかっただろ!? せいぜい十五歳くらいからだったはずだ!
童貞じゃなかったら、こういうことにも焦らずに済んだのだろうか。や、やっぱり勇気を振り絞って、捨てとくべきだったのかっ!?
「……というか、本当にどうしたんだメア? お、俺、何かしたか?」
ちょっと重くなってきたので筋力増加の魔法を体内に流す。
……選ばれし体を持っているメアと違って、俺は体内に魔力を流していない状態だとただの小太りなオッサンなのだ。だから冒険の際は、大体魔力を流しっぱなしにしている。部屋の中だから完全にオフにしていた。
「……。……! ……っ!」
何やら葛藤というか、荒い息遣いが聞こえる気がする。
え……、えぇ!? もしかして発情してる!?
「ま、まさかお前、俺のこのわがままダイナマイトボディに欲情してんのか!? 俺が言うのもなんだけど、その年でデブ専ってのもなかなか業が深――――わひゃう!?」
ぎゅっ! と。
メアの両手が俺のややぷるっとしてきた胸の脂肪を掴んだ。
そのままわしわしと撫で回される。
「な、何すんだメア! ちょっ、ちょっと待って! やめ、あっ、やめろっておい!」
もみもみもみもみもみもみ。
何かすっごい触られてる! すげーくすぐったいんだが!
俺の反応を見たからかは分からないが、メアは眉間にしわを寄せ、すごい怪訝な表情をしていた。
「……、…………!」
「いやいや、お前が触ったんだろ!? 何で嫌そうな顔してんだよ!」
俺の質問も意に介さず、今度は自分の両胸に手を当てて揉む。もとい撫で回す(揉むほど無い)。
それが、一分ほど。沈黙が支配する中、俺は幼女に馬乗りになられたままだ。
……というか、俺の上で(未成熟とはいえ)自分の胸をまさぐる幼女って、ちょっと興奮するな。あぁ、――――だから! そういうところだぞ俺!
反応しかけた『俺』を、どうにか理性でギリギリ元に戻す。
……今のは危なかった! メアに淫靡な空気とか感じるな、俺! そのタイミングは、無理やりメアを制御するときだけで良いっての!
……それもどうかと思うけども。
俺がアホなことを考えているうちにメアは、今度は右手で俺の胸、左手で自分の胸を触っていた。はぁ……、もう好きにしてくれ。
そう思っていたら、突如としてメアの表情が鬼の形相へと変化する。
「……うぅ~、クソ! クソ! 世界のクソめ!」
「え、何、どうしたのメアちゃん!?」
突然の憤慨である。
情緒がどっか行っちゃったのかな!? この年頃の娘って大体こうなの? わかんねえ!
「師匠のアホ! 死ぬといい」
「俺!? 俺が悪いの!?」
よくわからん! え? ベッドを占領したから? でもお前の部屋、向こうじゃん! 何故か物置代わりに俺の部屋に荷物置いてるけど、お前の部屋そもそも別じゃん! 自分の部屋のベッドに寝る権利くらいは、さすがに俺がいただきたいかなー!
ぐるぐると俺が考えている間に、メアはいつもの調子を取り戻したようで。
「間食に行くぞ。腹減った」
そんなふうに、けれどちょっとだけ気まずそうな表情を見せながら言うものだから。
「……ま、それもそうだな。行くか」
俺もそう返事をして。
メアの後に続くのだった。
しかし、それにしても何だったんだろうなぁ。まったく、乙女心は分からんというか、何というか。
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