写導戦隊カゲレンジャー9
『写導戦隊カゲレンジャー』9
・第九忍法「幻惑のラビリンス」
地下ではダーク・ソウルがスナック菓子を食べていた。
「何食べてんだ?ダーク」
「ブラックか。いや、人間達が作ったスナック菓子という物だよ」
「甘いのか?」
「甘いのもあるよ。食べるかい?」
「本当に甘いのか?」
「疑うなら食べなくて良いよ~」
「どれ、一口……おっ!美味いじゃないか!」
「だろう?僕は人間という生き物に興味が出てきたよ。こんなに美味い物を作れるなんて夢のようだ」
「お前、まさか裏切るつもりじゃないだろうな?」
「まさか。奴隷にして、永遠に僕に飯を作らせるつもりさ」
「それ良いな!俺も乗った!」
「何か企んでるな?二人共」
二人は振り返って「おぉ、ダルク」と言った。
「何だ?盗み聞きか?趣味悪いな」
「聞こえてきたんだよ。悪い考えがな」
「何も企んでないぞ?なぁ?」
「ねー」
「ふん……まぁ良い。今度は俺様がオドゥン様に食事をご馳走する。邪魔をするなよ?」
「する訳無いじゃないか。なぁ?」
「ねー」
「出でよ!セイヘイ!」
「我はここに!」
「人間共をお前の幻術で混乱の闇に落とすのだ!」
「はっ!」
セイヘイは姿を消した。
「うおっ。相変わらず唐突な幻術使いだなぁ」
「幻術と言えば、カゲレンジャーにも幻術使いがいたな」
「あんなのに負ける我が部下ではないわ!」
「ダルクよ」
「はっ!オドゥン様!」
ブラック・ガイとダークも「オドゥン様」と片膝を付いた。
「幻術には幻術、という事か?」
「そういう事で御座います。頭を使おうが、筋肉を使おうが、所詮はフィジカル。一番効果があるのはファンタジーで御座います」
「成程……我は飢えている。早く馳走を用意するのだ」
「お任せあれ!」
一方その頃官邸では、カゲレンジャーの居場所を闇光師団に突き止められてしまった為、引っ越しをしていた。
「無一郎のオッチャン、何で引っ越しすんの?」
「腕太郎。少し考えたら分かるだろう?アイツらに居場所がバレたんだ」
「だから?」
「腕太郎ー……そこを集中攻撃されたらどうするんだー?」
「あぁ、そうか!」
「そういうところをもっと教育してやるべきだった……」
「腕太郎のそういう正々堂々と戦う姿勢は認めてやっても良いんじゃないか?無一郎さん」
「あぁ……まぁ、そういう考え方も出来るが……」
新しい隠れ家への引っ越しを終えて疲れたカゲレンジャーが一息吐いていると、外はもう夕方だった。そこへ政府の人間がやって来て、カゲレンジャーの一人一人に「どうぞ」とお金を渡していった。
「これは?」
「お金?」
「外は屋台でいっぱいです。たまには息抜きに遊んできて下さい。花火会場もすぐそこですよ」
夏を迎えた地上は夏祭りシーズンになっていた。
「そうか?じゃあ折角だし、行こうか?皆」
腕太郎は「やったー!」と喜び、一同は花火会場に向かった。そこには屋台が並び、腕太郎ははしゃいでいた。
「おぉ~!まるで影の里が大きくなったみたい!」
「あまりはしゃぐなよー?みっともないからー」
「良いじゃないか!これくらい!あ、綿飴がある!林檎飴もある!食べたいなぁ~!」
「まぁたまには良いだろう。なぁ?カイト」
「人の金で贅沢はしたくないんだが……」
「お給料だと思えば良いんじゃない?」
「あー、成程な?なら納得だな」
「そうそう!じゃあ行っくぞ~!」
子供らしくはしゃぐ腕太郎とそれを見てヤレヤレといった態度をしつつ狐のお面を被り、水風船をビヨンビヨン叩きながら、焼き烏賊を片手に楽しむコン。
「アイツは子供だからなー。俺達大人がいないと何が起こるやらー」
「お前も大概だぞ?」
「俺は節度を持って楽しんでるだけー。あ、お金無くなっちゃったー。カイトー、お金貸してー?」
「どこが節度持ってんだか……ほらよ」
「貸すんかい」
「あんがとー。んじゃあ適当に腕太郎に着いて行くから、三人は適当にしてて良いよー?」
「いや、不安だから俺達も着いて行く」
「そうかー?まぁ、好きにしてくれー。おーいー!腕太郎ー?待ってー?」
「早く来ーい!」
コンと腕太郎は金魚すくいをしたり、射的をしたり、クジ引きをしたりと楽しんだ。カイト、ミトリ、無一郎もそれなりに楽しんだ。暫く歩いていると、屋台の列の外れに小さな劇場のような物があった。どうやらお化け屋敷風の謎解きゲームらしい。そこには「成功率0%!」と謡われた文言の看板が置かれていて、次々と客が入っていくのが見えた。
「何だろう?アレ」
「謎解きー?それともお化け屋敷ー?」
「成功率0%だって!皆でやってみようよ!?」
「でもこれ、一人ずつって書いてあるぞ?」
「子供の遊びだろ?俺は外で待ってるから皆で遊んで来いよ」
「そういって無一郎のオッチャン、ビビってんだろ~」
「ビビッてない」
「じゃあやれよ~」
「……良いだろう。じゃあ誰が最短でクリア出来るか勝負と行こうじゃないか」
「案外ノリノリね、無一郎さん」
「こう言うのは雰囲気も含めて楽しんだもの勝ちだ」
「じゃあ俺から行くぞ!」
腕太郎が中に入り、受付で会計を済ませ、第一の間を通った。難無く四問目まで辿り着き「何だ。簡単じゃん?」と余裕を持っていた腕太郎。これで完全に勝ったと思った。四問目の扉を開けるとそこには死んだ筈の腕太郎の父、ホエルがいた。
「お、親父……!?」
「腕太郎……お前は立派な忍者だ……」
「親父……死んだ筈じゃ……!?」
「腕太郎、一緒に稽古しよう。いつものように……」
「親父……!うん!やろう!稽古!」
腕太郎は催眠状態に陥ってしまった。
なかなか出てこない腕太郎にカイトは痺れを切らし、中に入った。同じく四問目まで辿り着き、四問目の扉を開けた。開けた瞬間、目の前が急に明るくなり、一瞬目を瞑った。目を開けると高いバルコニーに立っており、下に大勢の人達が現れて「ありがとう!カゲレンジャー!」という歓声が上がった。それを見て「な、何で俺がカゲレンジャーだって……!?」と困惑していたが、突如目の前がグルグルし出し、催眠術に掛かった。
カイトまでも出てこない事に痺れを切らした無一郎が中に入っていった。同じく四問目で躓いた。周りには平和な影の里で酒を飲む族長達がいた。こんな平和を望んでいた無一郎もまた、催眠術に掛った。
なかなか出てこない三人の様子を見てくる、と今度はミトリが中に入っていった。同じく四問目で躓いた。コンと幸せな結婚生活を送る夢のような空想世界に入った。同じく、催眠術に掛かった。
腕太郎達の前にも何人もの人達が入っていったが、誰も出てこない。流石に怪しく感じたコンは注意深く中に入っていった。最初の部屋で馴染みのある臭いを感じた。催眠花の香りだ。耐性があったコンには効かなかった。四問目まで難無く進み、更に奥に進むと虚無を見詰める客達がいた。
「どうしましたー!?どうかしましたかー!?」
更に奥に行くと。カイト、ミトリ、腕太郎、無一郎が虚空を見詰めていた。
「皆ー!?皆ー!?しっかりしろー!」
皆を揺さぶったが、気が付く気配が無い。これは幻術にやられている。そう思ったコンは幻術を解く呪文を唱え始めたところで受付をしていたセイヘイが現れた。
「そこまでだ!狐!」
「そういうお前はー!?」
「お前と対になる存在だ!」
「という事はー……タヌ公かー!?」
「誰がタヌ公だ!狸だ!狸!」
セイヘイは狸の化け物の姿になった。
「結局はタヌ公だろー!?お前の仕業かー!?皆に何をしたー!?」
「我の幻術の虜!今頃良い夢を見ている頃だろう!」
「良い夢ー?じゃあお前、良い奴なのかー?」
「いいや!こうするのさ!」
セイヘイが呪文を唱えると、突如催眠が掛かっていた皆が苦しみ出した。
「何をしたー!?」
「悪夢を見せたのさ!例えばそこのお前の仲間の坊やは父親が死ぬところ!そこのアンちゃんは人々から非難されるところ!そこのオヤジには里の奴らが酒の飲み過ぎで我々に攻撃されて太刀打ち出来ずに苦しんで死ぬところ!そこの女はお前に暴力を振るわれるというような夢をな!」
「貴様ー……!許さーん!シャドウ変化!」
コンは変身した。
「カゲイエロー!フォックス!人々を惑わす悪鬼妖魔!この俺が成敗致すー!」
「たった一人で何が出来る!?」
「貴様如きタヌ公、俺一人で十分だー!」
「言ってくれるじゃないか!やれるものならやってみろ!」
イエローはフォックスウィップで中距離戦をしつつ、セイヘイの弾幕攻撃を躱していった。強過ぎる弾幕攻撃に太刀打ち出来ないのか、イエローは縦横無尽に飛び回って攻撃を躱していた。
「どうした、どうした!?我の攻撃に追い付いて行けてないじゃないか!?そんなものか!?忍びの狐の実力は!?」
「さぁー?術に引っ掛かってるのはどっちかなー?」
「何っ!?」
「床を見てみろー!」
「床?あっ!?」
床にはいつの間にか呪術陣が描かれており、イエローが呪文を唱えると、光がそこにいた人間達を包み込んだ。人々は目を覚まし、セイヘイは体が痺れて一瞬動きを封じられた。さっき飛び回っていたのは呪術陣を床に描いていたのだった。
「あ、あれ……?ここは……!?」
「皆さーん!早くここから逃げるんですー!」
セイヘイの姿を見て慌てて逃げ出す一般人達。カゲレンジャーのの四人は目を覚ますなり、腕太郎以外はすぐに臨戦態勢に入った。
「皆ー!変身だー!」
カイト、ミトリ、無一郎は「応っ!」と答え、カゲマルを地面に刺してライトアップした。
「シャドウ変化!」
カイト、ミトリ、無一郎は変身した。しかし腕太郎だけ俯いていた。
「腕太郎ー!?どうしたー!?変身だー!」
「あ、う、うん!シャドウ変化!」
「じゃあ全員揃った事だし、行くぞー!?カゲイエロー!フォックス!」
「カゲレッド!キャンサー!」
「カゲピンク!バード!」
「カゲグリーン!タートル!」
「カゲブルー!ドッグ!」
「写し、導く……ライトアップ!」
再び光が五人を包んだ。
「写導戦隊!カゲレンジャー!出現!」
「揃ってしまった!」
そしてイエローはフォックスウィップでセイヘイを拘束した。
「シャドウ流太陽殺法!カゲマル一刀両断剣!」
セイヘイは上から下まで斬られた。その後、五人は忍法 影の舞をしてセイヘイを切り刻み、セイヘイは倒れた。すると切り刻まれたセイヘイがバラバラになった体を宙に浮かせ「このまままた封印されてたまるかー!」と叫んだ。狸を呼び寄せ、体を合体させ、巨大化した。
「カラクリメカ!出動!」
五人はカゲマルを地面に突き刺し、影絵を投影してカラクリメカを出動させた。
「カラクリ合体!」
カラクリメカは合体し、カゲキングになった。
「カゲキング!出陣!」
セイヘイは言った。
「お前達のカゲキングは強い。だが欠点がある。それは合体すると、総合的なパワーが上がる一方で、それぞれ個々の特性が消えるという事だ!」
そう言うとセイヘイは周りに煙幕を巻いて身を隠した。煙幕から来る攻撃にたじろぐカゲキング。一方的な攻撃になるかと思ったその瞬問、煙幕が雨で消えた。
「何っ!?雲も無いのに雨だと!?」
すると無線でカゲキングに声が届いてきた。
「カゲレンジャー!ここは自衛隊と米軍が力を貸す!」
「どういう事ですー?」
「人工的に雨を降らす事なんて造作も無い!」
「こっちもだ!」
戦車が現れ、セイヘイに向かって砲弾した。脚を撃ち抜かれ、セイヘイは膝を着いた。戦車には対闇光師団用弾が搭載されていた。
「今だー!皆ー!合体解除だー!」
「えっ!?」
「俺を投げ飛ばせー!」
「分かった!合体解除!」
カゲキングは蹴るように右脚のカゲフォックスを飛ばした。カゲフォックスは真っ直ぐセイヘイに突っ込んでいき、無数の狐になってセイヘイを貫いた。続けて複数のカゲフォックスでセイヘイを囲んだ。
「必殺忍法、超火遁の術、狐の御霊!」
巨大な狐が複数地面から浮き出て、火を噴き、セイヘイを燃やし尽くした。
「個々の能力が抑えられるなら、解除すれば良いだけの話だー」
セイヘイは崩れ落ち、骨だけになった。カゲフォックスから降りたイエローは封印の石を取り出し、セイヘイを封じ込めた。それを見届けて戦車と戦闘機は帰っていった。
五人は変身を解いた。
「皆ー。あんな幻術如きに惑わされるなー」
「悪かった!」
「いい夢を見たり、悪い夢を見たり……疲れたわ……」
「悪夢を見て、思い出した。俺の責務を……」
カイトとミトリと無一郎が反省している中、腕太郎は涙が溢れていた。
「何で……!」
「んー?何だー?」
「何で親父が生きている夢のままを見させてくれなかったんだ!?親父に……親父にまた会えたのに……!」
コンは泣きじゃくる腕太郎の肩に手をソッと置き、優しく言った。
「……現実を見るんだ。お前の親父さんは、もう……」
「嫌だ!現実なんか受け入れたくない!」
「馬鹿!」
コンは力強く腕太郎の背中を叩いた。
「どうしても変えられない現実というものがある!お前には、これから色んな別れがある!それを受け入れないと、人間は強くなれない!俺達はカゲレンジャーなんだ。人を助ける為に、お前の親父さんは自分の命を差し出した!それを無碍にするつもりか!?」
「コンの兄貴……!そうか、そうだよな!俺、成長しなきゃいけないな!ありがとう!コンの兄貴!」
「……分かれば良いんだー。さ、花火を見て帰ろうかー?」
「こんなドッタンバッタンやって花火やるか?雨も降らせたし」
「あー……じゃあちょっと一っ走り行って聞いてみるー」
コンは花火の設置場所に行き、花火職人に聞いてみると、花火はまだ準備段階だった為、ギリギリ雨に濡れずにいたらしい。花火職人達は
「カゲレンジャーとやらの勝利祝いに上げてやるぜ!なぁ!?」
「応っ!」
「俺達の漢気を見せてやるぜ!」
と志気を挙げていた。それに安心したコンが皆に伝えると、会場で一番見晴らしの良い場所に移動した。
夜空に次々と色とりどりの花火が咲き誇り、一同は見惚れた。
「格好良かったよ、コン」
「ミトリー。来年も来ようなー?」
「あら、来年も一緒に居たいって事?」
「勿論ー。それに、皆もなー」
コンとミトリは振り返り、花火を見て盛り上がってる三人を見た。「幸せな夢の方は、現実にしたいな……」
「んー?そういえばあのタヌ公が見せた幸せな夢ってどういうのだったんだー?」
「……内緒」
「何だそりゃー?」
一同は笑顔で帰り、食事をして風呂に入って寝た。
一方、地下ではオドゥン・クリムジャがいつものように鼠を使って何かの探索行動をさせていた。




