写導戦隊カゲレンジャー7
『写導戦隊カゲレンジャー』7
・第七忍法「人間同士の争い」
ニクボシが回収され、数日が経った。遺伝子解析の結果、彼らのDNAは人間とそれぞれの生物、つまり夜行性生物の特徴を併せ持つ存在らしい。今のこの星に順応するべく、急激な進化を遂げたとの事で、アンチライフル弾が開発された。実装にはまだ時間が掛かるとの事だった。結局ボロボロになって帰って来たニクボシに心を痛めながらカイトは封印の石にニクボシを封印した。
「ごめんよ……」
その後、いつものように街の復興作業を手伝うカゲレンジャーの五人。
一方その頃地下では、ダーク・ソウルがビールを飲みながらテレビを見ていた。そこへブラック・ガイがやってきた。
「ダーク。何を見ているんだ?」
「テレビってやつだよ。ブラック。地上の物だ」
「下らん。下等生物の物など見る価値も無い」
「これがまた面白くてねぇ。こんな下らない番組が面白いと思える人間は幸せだなぁと思えてね」
「……お前、また、何か飲んでるな?」
「これはビールという酒だよ」
「美味いのか?」
「飲んでみるかい?」
「……一口」
ブラックは一口飲んだ。そして咽た。
「ゲホッ!ゲホッ!?何これ!?苦くて痛くてクソ不味い!」
「慣れだよ。慣れると美味い物だよ?」
「他に何か口直しになるものはないのか?」
「そうだねぇ……君は虫だから甘い物が良いかな?」
「それで頼む」
「じゃあこの前呑んだワインなんかどうだい?」
「それは咽ないだろうな?」
「ゆっくり飲めば大丈夫さ。さっきのよりはフルーティだと思うよ?」
ダークはワインの瓶のコルク栓を指で摘まんで軽々と引き抜くと無造作にブラックに渡した。ブラックはゆっくりと飲んだ。
「……美味い」
「だろう?人間の考えた物だが、これは好きだ」
「少し分かった気がする」
ボン・ノワールもやって来た。
「美味しい物があると聞いて」
「ノワール。君も飲んでみるかい?」
「水?でも黄色いわね?」
「ビールという酒だよ。シュワシュワしていて、苦いけど、慣れれば良い気持ちになって美味しいよ」
「俺の時もそう言ってくれれば良かったのに……」
ノワールもビールを飲んだ。
「……美味しいじゃないの」
「だろう?」
「人間にしては良い物を作るわね。これ、気に入ったわ」
「そうかい」
ジョンノ・ダルクがやって来た。
「何か良い匂いがしたんだけど?」
「君も飲んでみるかい?」
「何か、匂い的にその黄色いのよりは赤い奴の方が美味そう」
「ワインという飲み物らしいわ。一杯やってみたら?」
ダルクはワインを飲んだ。
「美味いじゃないか!」
「君も分かるねぇ」
「人間は嫌いだが、これは気に入った!」
四人は談笑した。
「さて、我らが主、オドゥン様のご機嫌取りに行かなくちゃな」
「もう作戦は実行しているのか?」
「あぁ。オウル君がもう人間達を争わせているさ」
所変わって東京某所。建設現場の近くで裏社会の人間達が抗争していた。銃声が鳴り響き、辺り一帯は完全に戦場と化していた。
「何だー?何の騒ぎだー?」
土木建築の作業をしていたコンが建設現場から首を伸ばして見ようとした時、建設現場の親方から「頭を下げろ!」と頭を掴まれ、下げられた。暫くした後、やっと銃声が止んだと思えば、目の前には腹から血を流して倒れている裏社会の人がいた。
「え、あ、おーいー?大丈夫かー?」
「放っておけ!そんな奴ら、死んで当然だ!」
「えぇー?でもこんなに苦しそうでー……?」
「良いから!そんなゴロツキ、一人死んだところで誰も悲しまねぇよ!」
放っておけと言われたが、見て見ぬ振りが出来ないコンは応急処置として狐火で傷口を焼いて塞ぎ、救急車を呼んだ。五分程で救急車が到着し、後は任せようとしたところ、救急隊員から同乗するように言われた。
「えぇー?何で俺がー?」
「君が第一発見者だろう!?見てってくれ!」
「えぇー?でも俺、仕事がー……」
「見殺しにする気か!?こんな焼け爛れちゃってるのに……!」
「あー……」
応急処置のつもりでやった事だったが、逆に自分のせいに成り兼ねないと思ったコンは救急車に同乗し、病院に向かった。その男の手術が終わるのを手術室の前のベンチで待っていた。
「何でこんな事にー……?」
『手術中』のランプが消え、中から医者が出てきた。
「あ、どうでしたー?」
「手術は無事成功です」
「あ、それは良かったですー。じゃあ俺はこれでー……」
「後三十分程で麻酔が切れます。警察も来るでしょうから事情聴取に付き合ってあげて下さい」
「えー?どうしてもですかー?」
「出来れば……」
「はぁー……?分っかりましたー……」
コンは病室に入って男が起きるまで側で待っていた。三十分後、目が覚めた裏社会の人間の男。ベッドの上で起き上がろうとしたが腹の痛みで起き上がれずにいた。
「あ、目が覚めましたー?」
「誰だ?アンタ」
「俺は帆楠コンと申しますー」
「それで?」
「それだけですー」
「は?俺はどうしてここに?」
「何か、銃で撃たれたみたいですよー?裏社会の抗争ってやつですかー?」
「あぁ、まぁ、な……イツツ……!」
「あ、俺が焼いて傷口を塞いじゃったから治りが遅くなるかもとお医者さんから言われましたー。そこはごめんなさいー」
「焼いて塞いだ?じゃあ、俺が今生きてるのは、アンタのお陰って事か?」
「まぁ、そうなんですかねー?よく分かりませんけどー」
「そうか。すまない。ありがとう」
「いいえー。この後、警察の事情聴取があるみたいなんで待ってましょうー」
「警察……!?それはマズい!逃げなきゃ……!イテテテテ!」
「無理しちゃ駄目ですー。弾が内臓を色々掻きまわしちゃった上に、俺が焼いて塞いだんですからー」
「でも、これじゃあ姐さんに申し訳が立たねぇ……!」
「そうですかー……じゃあちょっと痛いの我慢出来ますー?」
「え?あ、あぁ……痛いのには慣れてるが……?」
「じゃあ、よいせっとー」
コンは男を抱き抱えた。
「イデデデデデデ!?何をする!?」
「痛いの慣れてるんでしょー?痛いのは最初だけですからー。さぁ、行きますよー?」
「どこへ!?」
「さぁー?それは貴方が決めて下さいー」
外からサイレンの音が聞こえてきた。
「あ、警察っ……!」
「あー……じゃあ裏口から逃げましょうかー」
コンは男を抱き抱えたまま病院の裏口から出て忍法 隠れ身の術でマントを被り、姿を消してとりあえず街中を駆け巡った。そして男が指定した港の倉庫に向かった。倉庫の中に入り。男をマットの上に降ろした。
「意外と揺れなくて助かったよ……」
「痛いのは最初だけって言ったでしょー?んじゃあ俺、本当に忙しいんでー……」
「待ってくれ!最後に、これだけ頼んで良いか!?」
「何ですー?」
「これを、姐さんに届けてくれ……!」
男はペンダントを渡した。
「これはー?」
「思い出。それだけ伝えて、その中の写真の女性に渡してくれ……!」
そう言い残して男は気を失った。
「あ、ちょ、おーいー……?もうー。写真だけで人を見付けるなんて結構難しいんだぞー?」
ブツクサ言いながらコンは街に出た。町の人にペンダントの写真を見せて何処の誰かを聞こうとすると、誰も皆、焦って、恐怖して言わなかった。
「もしかして、俺、結構ピンチー……?」
そう思いながらとある裏社会の人間がいるであろう建物の中に入った。
「あのー……?」
「あぁん!?何だぁ!?テメェ!?」
「カチコミかぁ!?」
「おぉー、殺気立ってますねぇー。いやねー?俺、この人を探してるんですけど、知りませんかー?」
コンはペンダントを見せた。
「こ、これは姐さん!?貴様!何でこのペンダントを持ってる!?これは俺達の傘下の者しか持ってない物なんだぞ!?」
「あのー、あのー。これを着けてた人からこの女性に渡すようにと頼まれましてー……」
「もしかして、ヤスか!?あのヤスか!?」
「え、あ、名前までは知りませんねぇー」
「その男、何て言ってた!?」
「『思い出』と言ってましたー」
「思い出……!?じゃ、じゃあこれは……!」
「お、おい!姐さんに連絡だ!」
「は、はい!」
裏社会の人達は何やら大騒ぎで走り回っていた。
「あのー、じゃあ俺、もう帰りますねー……?」
「待ってくれ!」
帰ろうとしたコンの腕を紫色のスーツを着た男が掴み、止めた。
「まだ何かー?」
「その男、今どこにいる!?」
「港の倉庫にいますけどー?」
「あの倉庫か!おい!お前ら!ヤスを助けに行け!」
「はい!」
「姐さんとは連絡が着いたか!?」
「今こっちに向かってます!」
「分かった!客人、もう少しここに居てくれねぇか!?」
「えー?どうしてもですかー?」
「金なら払う!」
「いや、要らねぇっすけどー」
「じゃあ茶でも飲んでってくれ!なっ!?」
「は、はぁ……まぁ喉渇いてたし丁度良いかー?」
「ありがとう!客人!そこに座っててくれ!」
「は、はいー……」
ソファに座って二十分。一向に茶が出てくる気配の無い状況に「あぁ、帰りたい……」と心底思っていたコン。更に十分後、『姐さん』と呼ばれる和服を着た女性が黒服を何人も連れて現れた。
「貴方が客人の……」
「あ、帆楠コンと申しますー」
「そうですか。申し遅れました。私は郷田佳代子。この組の頭の妻をしています」
「はぁ。そうですかー」
「頭は今席を外していましてね。代理で私が来ました。これを貴方が持っていたとか?」
「あ、正確にはそれを持っていた男の人に『姐さん』と呼ばれる人に渡してほしいと言われましてー」
「成程……おい、PC」
「はっ!」
黒服はノートパソコンを持って来た。佳代子はペンダントの中からメモリーカードを取り出してノートパソコンに差し込み、中のファイルを見た。
「……これが真実、でしたか」
「は?」
「いえ、仲間内の話になるのですが、ここ最近、同じ傘下の組同士で潰し合いの抗争が続いておりましてね?切っ掛けがどうも引っ掛かっていて……」
「はぁー……?それがー?」
「これを見て下さい?」
ノートパソコンにはいくつかあるリストの中から一つのファイルが開いており、そこには闇光師団の魔王の一人が人間に化け、子供を銃で撃ったシーンが映っていた。
「これはー……!?」
「撃たれたのは私の子です。今も意識不明の重体です。この男は同じ傘下の別の組の下っ端ですが、この映像を観る限り、何やら化け物が変装してこの街に居るみたいですね……」
「ちょっと他のファイルを見せてもらっても良いですかー?」
「どうぞ」
「……これは、闇光師団と呼ばれる悪の組織ですー……きっと、人間同士を争わせる為に仕組んだ事なのでしょうー……」
「闇光師団?最近巷で噂の?」
「はいー……」
「そうですか……こちらの若い者が先にカチコミに行ってしまいまして……恨んだ側ではありますが、向こうの組からしたら私の子供を殺したところで何のメリットも無い。寧ろデメリットしかない事を何故したのか。それをヤスに調べてもらっていたんです」
「これは……俺達の専門分野ですー。すみませんー……俺達がしっかりしていなかったばっかりにー……」
「あの、貴方は何者なんですか?」
「俺はー……一応、写導戦隊カゲレンジャーという組織の人間でしてー……」
「カゲレンジャー……噂で聞いた事はあります。本当にいたんですね?」
「はいー……」
「では我々も力をお貸ししましょう。おい、お前達」
「はっ!」
黒服たちはアタッシュケースからマシンガンを取り出した。
「なななななー!?何ですかー!?」
「私達も極の道を征く者……この命尽きるとて、悔いはありません。この命と引き換えにでも、奴らを駆逐します!」
「それはいけません!」
コンが怒鳴った。
「親としての自覚があるなら、決して命を投げ出してはいけません!お子さんは今必死に頑張っているんですよ!?だったら、笑顔で迎えに行けるように、家庭を大事にして下さい!」
場はシン……と静まり返った。
「あ、す、すみませんー……出しゃばった事を言ってしまってー……」
「……いえ、貴方の言う通りでした。我を忘れていました。あの子は帰ってくる。そう思ってなかった自分がいました。そうですね。あの子はきっと元気になって帰ってきますよね……?」
「信じましょうー!」
「はい……!でもコレらは自由に使って下さって構いませんので、何かお役に立てる事があれば何でも仰って下さい?」
「あー、そうですねー……じゃあ最初で最後のお願いを一つー……」
「何ですか?」
「お水を一杯頂けませんかねー?」
「……へ?」
「お水。さっきから喉がカラッカラでー……」
「あ、お前達!客人に茶の一杯も出さなかったのかい!?」
「申し訳ありません!姐さん!」
「私にじゃなくて客人に言いな!」
「すみません!申し訳ありません!指詰めますんで許してつかぁさい!」
「そんな事しなくて良いですからー!それより、皆さんはお家で待ってて下さいー。そして、水を一杯下さいー」
「ありがとうございます……!お前達、水を持ってきなさい」
「今、お茶を淹れます!」
「馬鹿者!この方は水が良いと仰っているんだ!黙って水を用意しな!」
「あ、いや、お茶ならお茶でも良いんですけどー……」
黒服が水を一杯持って来て、コンはそれを飲み干して事務所を去った。そしてさっき見たデータを基に、敵のアジトをこの五か所のどこかにいるのは確実、というところまで絞り込めた。コンは四人にこの事を言い、五手に分かれ、各建物の中を探索した。
コンが向かった建物は、地下でもないのに不自然に暗く、ここかもしれないと思った。するとそこにあの梟のような化け物、オウルがいた。
「ホーッホッホッホッホッ!人間とは脆い生き物よのう!こんな引き金一つで自滅し合うのだから!このオウル様の作戦は素晴らしいですわー!」
と一人で高らかに叫んでいるオウル。コンは怒りを抑えて一度深呼吸し、冷静に四人を呼んだ。オウルは羽根をゆっくりとばたつかせながら歩いていき、今にもどこかへ飛んでいきそうだった。
「待てー!」
「何奴!?」
「人々を惑わす悪鬼妖魔ー!俺が貴様を成敗致すー!」
コンはカゲマルを地面に刺してライトアップした。
「シャドウ変化!」
コンは変身した。
「カゲイエロー!フォックス!」
「カゲレンジャー!どこまでも邪魔な奴らだ!」
「行くぞー!忍法、狐火ー!」
イエローは口から火炎を吐き、オウルの羽根を燃やした。
「アチチチチ!燃える!燃えるー!」
「お前は羽毛だからなー!良く燃えるだろうー!?」
「貴様~!許さん!喝ー!」
オウルは目からビームを出した。イエローはそれを受けた振りをして変わり身の術で後ろからカゲマルで斬り掛かった。暫く近接戦闘を行っていたが、やがてオウルの羽根が生え揃い、オウルは階段を駆け上って屋上に逃げた。外はもう夜で暗闇に包まれていた。そして空に飛び立ったオウルに、フォックスウィップで攻撃したが、ギリギリ届かない距離だった。
「あーばよーだ!」
そのまま逃げようとするオウル。その真上からバードアローの矢が飛んできて、オウルの両翼を貫いた。瞬間、オウルはバランスを崩し、カゲピンクの蹴りで地面に叩き付けられた。
「ぐぁ!?」
「お待たせ!」
「皆ー!来てくれたかー!」
「あたぼうよ!」
「兄貴、無事か!?」
「全員揃った事だし、行きますかー!」
「カゲイエロー!フォックス!」
「カゲレッド!キャンサー!」
「カゲピンク!バード!」
「カゲグリーン!タートル!」
「カゲブルー!ドッグ!」
「写し、導く……ライトアップ!」
光が五人を包んだ。
「写導戦隊!カゲレンジャー!出現!」
「小癪な~!オールオウル!」
どこからか梟が数十羽飛んできて、人型の姿形と大きさになるとカゲレンジャーの前に立ちはだかった。
「忍法、影分身の術!」
イエロー以外の四人は五体ずつに分身し、雑魚敵を薙ぎ倒していった。イエローは真っ先にオウルの方へ行き、ウィップを振り回した。オウルは恐怖から飛んで逃げようとしたが、イエローはクナイをオウルの影に向かって投げ刺した。するとオウルは動きが止まった。
「な……に……!?」
「忍法、影縫いの術ー!お前の動きを封じ込めるー!」
「馬鹿……な……!?」
「シャドウ流太陽殺法!カゲマル一刀両断剣!」
オウルは真っ二つに斬られ、倒れた。
「成敗、完了ー……!」
オウルは「このまままた封印されてたまるかー!」と梟達を集め、巨大化した。コンはカラクリメカを出動させ、カゲフォックスに搭乗して地上に降り立った、
「ここは俺が行くー!必殺忍法、超火遁の術、狐の御霊!」
巨大な狐が地面から浮き出て、火を噴いた。さっきの狐火とは比べ物にならない程の火力でオウルを燃やし尽くした。
「ぎぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいやぁあああああああああああああああああああああああああああ!」
骨だけになったオウルはまだ生きているようで、イエローは封印の石にオウルを封印した。
「格好良かったぜ。コン」
「おうよー」
「見直しちゃった」
「ミトリー……照れるじゃないかー……」
五人は住処に帰り、食事をして風呂に入って寝た。
後日、佳代子の息子とヤスは元気に退院した。また、抗争で争っていた組同士も誤解が解けた上に死者が出なかった事で和解し、収まった。ちなみに警察はこの件については何故か触れなかった。
一方、地下ではオドゥン・クリムジャがいつものように鼠を使って何かの探索行動をさせていた。




