写導戦隊カゲレンジャー12
『写導戦隊カゲレンジャー』12
・第十二忍法「無条件降伏」
確保後、三日三晩寝ずに且つ飲まず食わずで尋問を受け続けたノワールだが、証言には一貫してアヤフヤな点は見られず、ボスと幹部達、そしてボス直属の部下や幹部達の部下が判明した。その情報を基に、政府は改めて対闇光師団用弾の開発に取り掛かった。そして久し振りに食事を与えられたノワール達は涙を流していた。
「あぁ……久し振りのご飯……!美味しい……!」
「マザー……!人類はこんなに美味い食べ物や飲み物を生み出していたんですねぇ……!?」
「滅ぼすだなんて勿体無いです……!このまま人間達の仲間になって、美味しい物を食べていきましょう……!?」
「そうね……!そうしましょう……!」
あの高圧的で攻撃的だった彼らのそんな姿を目の前にして、カゲレンジャーの一同は何故か同情心が湧いた。
「美味しいだろ?人間の食べ物は」
「えぇ!とっても!コレらがあれば人間の恐怖だの闇だのなんてカスみたいなものよ!?」
「そんなにか?」
「そうよ!?貴方達、食べ物の有難味が分かってないの!?」
「……食べ物への有難味、かー……久しく忘れていたなー」
「アタシも最近はあまり意識して無かったな……そうね。食べ物って、大事よね?」
「うん。官邸に来てから贅沢にずっと美味い物を食べさせてもらって忘れてたけど、食べ物が美味しいって、凄く恵まれてる事だよね」
「まさか闇光師団からそれを教わるとはな……」
「私達はもう闇光師団なんかじゃないわ!只の蛸よ!」
「鯰!」
「太刀魚!」
「鰻!」
「黒鯛!」
「メバル!」
「ハブ!」
「ゴキブリ!」
「蛾!」
「ハムスター!」
「梟!」
「狸!」
「そんな高らかに宣言されても困るんだが……まぁ『只の』ではないって事は自覚してくれ」
「分かったわ!」
一同は笑い合った。
一方その頃、地下ではブラック・ガイが弟のスタルビトルと密談をしていた。
「兄貴。何だよ?突然呼び出したりして」
「スタルビトル。落ち着いて聞いてくれるか?」
「だから何だよ?」
「この前の戦い、見たか?」
「いいや?見てないが?」
「そうか……実は、ノワールがな……?」
「ノワール様がどうした?まさか……封印されたのか!?」
「いや、封印はされてない……」
「そうか……!良かった……!あれ?でも最近見掛けないな。何処に行ったんだ?」
「……捕まった」
「え?」
「カゲレンジャーに捕まった……」
「封印じゃなくて!?」
「そうだ……その時の会話が聞こえたんだが、どうも生け捕りにされたらしい……」
「本当なのか?」
「更に前の戦闘時、ニクボシが生け捕りにされた……そのほぼ直後からだ。カゲレンジャー以外の人間達が我々に対して有効な攻撃をしてきたのは」
「そんな馬鹿な……!?じゃあ勝ち目が無いじゃないか!?」
「そこで、だ……もう俺達もここから逃げよう?」
「何弱気になってんだよ!?逃げるって言ったって。何処に……!?」
「カゲレンジャーのアジトだ」
「何馬鹿な事を言ってるんだ!?そんな事をしたら解剖されて、封印どころか、殺されるだけだろ!?」
「そこを上手く利用するんだ」
「どうやって?」
「上手くノワールを助け出せたらこっちに戻る。もしそれが無理ならカゲレンジャーに味方する事を条件に我々の封印を許してもらう」
「そんな上手く行くか……?」
「やるしかないんだ」
「でも……」
「じゃあ今のカゲレンジャー、いや、人間達に真っ向から立ち向かって絶対に勝てるという自信があるか?」
「……難しいだろうな」
「どちらに転んでも、上手く行けば俺達の勝ちに変わりは無い。違うか?」
「……流石兄貴だ。俺なんかとは考える事が違う」
「じゃあこの事をオドゥン様に伝えよう」
「えっ!?そのまま言ったら殺されるぞ!?」
「んな訳無いだろ。ノワール達を連れ戻す為にワザと捕まるって事だけを言いに行くんだ」
「成程!それは良いアイディアだ!」
「じゃあ、良いな?」
「分かった!」
そして二人はオドゥン・クリムジャに申し出た。
「ほう?それで逃げると?」
「逃げではありません。偵察です」
「そうか。ではこれを持って行け」
オドゥンは二人に腕輪を装着させた。
「これは?」
「監視用の我の秘宝だ。向こうの内部情報を逐一報告出来るようにな」
「畏まりました……!」
二人は人間に変装して官邸宅に向かった。
「何だ?お前達は?」
門番に止められたブラックとスタルビトル。一瞬だけ変装を解き甲虫の怪人と鍬形虫の怪人になって「こういう者だ」と言った。門番はすぐに銃を抜いて通報ボタンを押したが、既にブラックとスタルビトルは両手を上げていた。
「まぁ待て。話を聞け。我々は争いに来たんじゃない。話し合いに来たんだ」
「話し合い……!?」
敵意が見えない二人の様子を門番が困惑している所へカゲレンジャーが駆け付けた。
「何しにしにきた!?闇光師団!」
「待て。我々の話を聞け」
「話!?何をだ!?」
「まずは茶でも飲ませろ」
一同は官邸内に二人を入れた。
「で、何の用だ?」
「無条件降伏したい」
「む、無条件降伏ー……?」
「信じられない」
「あぁ。無一郎さんと同意見だ」
「そちらにはノワール達がいる。だが俺達はそちらに攻撃をしていないだろう?」
「それはまぁ確かにそうだけど……」
「我々も彼女達と同様にそちらに情報を渡す」
「それで?」
「それで三つ条件がある」
「無条件降伏じゃないじゃないか」
「まぁイーブンになるって意味だ」
「それで?アンタ達は何がしたいの?」
「ノワール達の解放と我々への攻撃の中止、及び、衣食住の提供を願いたい」
「そんな無茶苦茶通る訳無いだろ!」
「そこを何とか!」
「頼む!俺達はもうお前達に縋るしかないんだ!」
「実際のところ、彼女達は何をしているんだ?」
「それを知ってどうする?」
「もし彼女達を傷付けていたら、攻撃する」
「……分かった。良いだろう」
「分かってくれたか!?」
「但し、こちらからも条件がある」
「何だ?何でも言ってくれ」
「お前達の力の四分の三をこちらに渡してもらいたい」
「ホエルさん、本気か?」
「彼女達の事を思えば、元の仲間が増える事は安心材料だろう。それに、新たな情報が手に入るかもしれないしな」
「俺も賛成だ」
「無一郎のオッチャン?」
「そうだなー。誰にだってやり直すチャンスを与えるべきだー」
「部分封印という事だな?」
「なら完全封印よりは少し自由になれるか……」
「分かった。その条件、受け入れよう」
「兄貴」
「今はこれが最善策だ」
「……分かった」
「じゃあ封印の石を……」
「その前にノワール達の安否確認がしたい」
「……良いだろう」
政府の人間はタブレットを持って来てビデオ通話した。ノワールがカメラに映り「何だ?この蛸?」とカゲレンジャーに聞くとノワールが気付いた。
ブラックの声に、ノワールが答えた。
「その声、ブラックとスタルビトルじゃない!?」
「ノワール……?お前、ノワールか!?」
「久し振りね~!元気だった?」
「何を呑気な事を……お前、大丈夫なのか?」
「大丈夫よ~。寧ろお美味しいご飯を貰えて良い待遇を受けてるくらい」
「そうか……良かった……!」
「ノワール様。何故そのような格好に……?」
「私は自分の力の四分の三を渡したらこうなったわ」
「そうか。これがお前の本性みたいなものか……」
「そうみたい~」
「どうする?ブラック」
「分かった。良いだろう。力の四分の三を渡す」
カゲレンジャーが人の力の四分の三を封印すると、ブラックとスタルビトルは甲虫と鍬形虫の姿に変わった。そして音と視界を遮断する為に箱の中に入れ、地下シェルターに移動させた。
カゲレンジャーが食事を運んできて闇光師団の一同は食事をした。ブラックとスタルビトルは甘い物を食した。
「これは……!美味い……!」
「兄貴……俺、これ好きだ……!」
「そんなに美味いのか?」
「美味いぞ……!?お前達、こんな美味い物を普段食べているのか……!?」
「まぁ、そうだなー」
「これさえあればもう闇だのなんだのなんて要らない……!それくらい美味い……!」
「そ、そうなのか……」
「無条件という名の有条件降伏したら、これくらいの食事は出してあげるって政府の人達は言ってるけど?」
「良いだろう。その条件、飲んでやる」
それからブラックは話をしようとした。すると突如自分の前脚が熱くなった事に気が付いた。スタルビトルも同様だった。その直後、二人の体は爆散し、四方八方に飛び散った。そしてその爆散した体から火が出て地下シェルターを燃やし尽くそうと炎が広がった。しかし地下シェルターの火災報知器が作動し、火は収まった。
「何なんだ!?一体!?」
「あれは……クラヤミノウデワ!」
「どういう事だ!?ノワール!?」
「あれはクラヤミノウデワと言って、裏切者を感知するとその体を爆発させて、辺りを火の海に包もうとする物よ!」
「じゃあアイツら、死んだのか……?」
「私を肩に乗せて!」
「何でだ!?」
「彼らの息があるかどうか確かめるから頭の近くに寄って!?」
「わ、分かった!」
ノワールは無一郎の腕に乗り、ブラックとスタルビトルの頭の所へ向かった。
「ブラック!?スタルビトル!?」
「……こんな仕掛けがあっただなんてな……!」
「ノワール様……どうか、ご自身のお体をお大事に……」
「ブラック!?スタルビトル!?」
「ノワール……どうか、どうかこの仇は取ってくれ……!」
そう言って二人は気を失った。
「し、死んだの!?」
「いいえ!まだ息はしてる!二人に力の四分の一を分け与えてあげて!?」
「あ、あぁ!分かった!」
カイトは封印の石を取り出し、力の四分の一を二人に戻した。すると体は再生し「この時を待っていた……!」と何処からともなく声が聞こえてきた。それに対してノワールは「オドゥン様!?」と叫んだ。瞬間、カイトの持っていた封印の石から力が解放された。ブラックとスタルビトルの体が完全再生され、腕にはクラヤミノウデワが黒く光っていた。そして我を失ったブラックとスタルビトルはその場で暴れた。
「ブラック!?スタルビトル!?」
「おい!どうなってる!?」
「クラヤミノウデワの力よ!あれがあると、オドゥン様の言う通りに体を動かされてしまうの!」
「どうすれば良い!?」
「完全に封印するしか無いわ!そうしないと、死ぬまで暴れ続けさせられる事になってしまうわ!」
「……分かった!皆、行くぞ!?」
一同は「応っ!」と言って変身した。ブラックとスタルビトルは地下シェルターを破壊し、外に飛び出した。カゲレンジャーの六人は彼らを追い掛け戦闘を行った。外は暗闇に包まれた。所々、自分の意思で体を制御しようとしたブラックとスタルビトルは体を硬直させる場面があった。それを見逃さず、カゲレンジャーは影縫いの術で拘束し、カゲマルとシンカゲマルで攻撃した。そしてブラックとスタルビトルは倒れたが、巨大化した。カゲキングとカゲオージャーが出動し、何とか二人を倒してクラヤミノウデワを破壊し、封印の石に封印した。
「どうしてこんな事に……!?」
ノワールは政府の人間に連れられてやって来た。
「オドゥン様はこれを狙ってたんだわ……!」
「どういう事だ!?」
「私達闇光師団の隔離されている居場所を知ろうとしてコレをしたんだわ!事実、もう私達には居場所が無いわ!」
「でも前にもブレードがここにやって来た時、引っ越しして何も無かったじゃんか?」
「それはカゲレンジャーの居場所でしょ?地下シェルターの存在はまだ知らされていなかった……!」
「それは……!」
するとそこへ総理大臣がやって来た。
「待ち給え。こういったシェルターは他にもある。逃げようと思えばいくらでも逃げられる。安心しなさい。君達の仲間はもう別のシェルターに移動している」
「そ、そう……?じゃ、じゃあ早く逃げさせて!?」
「すぐに手配しよう」
総理大臣はその場を去った。すると闇をスクリーンにしてオドゥン・クリムジャが現れ、言った。
「人間共、聞け。これからはこの私自らが指揮を執る。お前達にもう居場所は無いと思え。明日から本格的に侵略を開始する。覚悟しておけ」
そう言ってオドゥンは消えた。それを見て一同は「仲間を捨てて利用するなんて……!」と怒りを感じ、皆で言った。
「人々を惑わす悪鬼妖魔!我々が成敗致す!我々は写導戦隊カゲレンジャー!必ずお前を封印する!オドゥン・クリムジャ!」
六人はカゲマルとシンカゲマルを重ね合わせ、空に向かって宣言したのだった。
一方、地下ではオドゥン・クリムジャがいつものように鼠を使って何かの探索行動をさせていた。




