写導戦隊カゲレンジャー11
『写導戦隊カゲレンジャー』11
・第十一忍法「カゲレンジャーの資格」
カゲシルバーこと犬神ホエルが仲間になって数日。ずっと腕太郎はモヤモヤしていた。自分がカゲブルーとして戦って良いものかと。それを誰にも相談出来ずにいた。
カゲレンジャーの五人と共にホエルは地下シェルターで変身テストをしていた。カゲシルバーがどれくらい変身を維持出来るかどうかを。人間の科学力の限界なのか、政府が開発したスーツではどうやら変身をしても十分間しか変身出来ず、一度変身したら五時間は変身出来なくなるという事が分かった。
次の戦いの為に各々が体を休めている中、腕太郎とホエルの二人は河川敷へ足を運び、腰を下ろした。
「あのさ、親父……?」
「何だ?」
「あ、いや……変身方法ってどうしてんのかなって……」
「何だ?ちゃんと見てなかったのか?コレだよ。シンカゲマル」
「シンカゲマル?」
「そう。進化させたカゲマル。とは言っても、古代の機械であるカゲマルよりは性能が落ちるけどな」
「ちょっと意味が分からない。どういう風に進化したの?」
「パワーはお前達カゲレンジャー五人分に相当するけど、変身時間に限りがあるようだな」
「そう、か……」
「どうした?」
「あ、その……ちょっと悩んでて……」
「何だ?父さんに何でも言ってみろ」
「それは……」
一方その頃、地下ではボン・ノワールが裁判に掛けられていた。
「ノワール。アミーゴ、ブレードのみならず、お前の自慢の弟子三人衆もまた封印された。次はお前だ」
「オドゥン様……今度はこの私めが自ら……!」
「封印される覚悟はあるか?」
「決して負けません!絶対に!」
「絶対だな?」
「はい!絶対です!」
「よし。じゃあ行け!」
「はい!」
ノワールは地上に繰り出た。そして自分の八本の触手を分離させ、人型にして街を襲った。
腕太郎が「それは……」と言い掛けたその時、スマートフォンのアラームが鳴り、ホエルが「話はあとだ!行くぞ!」と言って腕太郎とホエルも現場に向かった。二体ずつで行動している八本の触手を腕太郎とホエル、カイトと無一郎、ミトリとコンが、残る一組は自衛隊が対峙した。
腕太郎とホエルは二体の相手をした。変身する程でもなく、簡単に一体は倒し、もう一体は逃げた。追い掛けて倉庫内に入り、二人で捜索していたが、腕太郎は心ここに非ずといった様子だった。鉄屑の山の裏から出てきたホエルが肩の埃を払いながら出てきた。
「ここにもいないな……もう別の場所に逃げたのかもしれないな」
「なぁ、親父……?」
「何だ?腕太郎」
「俺さ、親父が帰って来てくれた時からずっと考えてたんだ」
「何をだ?」
「カゲブルーの、正式な後継者について……」
腕太郎はカゲマルを差し出した。ホエルはそれを手に取った。
「……カゲマルを俺に渡すと言うのか?」
「そう。最初はそう思ってた。だけど……」
「だけど?」
「俺、カゲブルーとして戦いたい!皆と、そして、親父と一緒に!許してくれるなら、俺をこのままカゲブルーとして戦わせてくれ!」
「…………」
すると腕太郎の背後から人型の触手が飛び掛かって来きた。ホエルはカゲマルで触手を切り裂き、倒した。
「……俺がカゲマルを使うのはこれが最初で最後だ」
「親父……」
「お前がもし、俺にカゲマルを渡すと言ったなら、俺はカゲシルバーの座すら渡すつもりは無かった。だがお前の覚悟は分かった。俺が許すも何も、お前のその気持ちがあれば、お前はもう立派なカゲレンジャーの一人だ。それも俺と違って正式な、な」
「親父だってカゲレンジャーの一人だよ。これからは、一緒に戦おう!」
「あぁ!」
一方、カイトと無一郎、ミトリとコン、自衛隊も簡単に人型の触手を倒していった。「何だ?呆気ないな」と思っていると、空が暗闇に包まれた。「何だ!?」と見上げると、ノワールが暗闇の空をスクリーンにして映し出された。
「人間共!よく聞け!我々はこの世を闇で包み込む悪の軍団『闇光師団』!私はボン・ノワール!これより、本格的に侵略を開始する!心しておけ!」
スクリーンに映し出されたノワールの背後の建物と風景から即座に政府が場所を特定した。一同はそこに駆け付けた。
「闇光師団!」
「私は最高幹部、ボン・ノワールよ!」
「そうか!ボン・ノワール!お前を封印する!」
「あんなの二度とごめんよ!」
「行くぜ、皆!」
一同は「応っ!」と言ってカゲマルとシンカゲマルを地面に刺した。
「ラーイト、アーップ!」
光がカゲマルとシンカゲマルから放たれ、犬、狼、蟹、鳥、狐、亀の影絵を投影した。スーツが出現し、六人は身に纏った。そしてカゲマルとシンカゲマルは再び六人をライトアップした。
「カゲブルー!ドッグ!」
「カゲシルバー!ウルフ!」
「カゲレッド!キャンサー!」
「カゲピンク!バード!」
「カゲイエロー!フォックス!」
「カゲグリーン!タートル!」
「人々を惑わす悪鬼妖魔!俺達が成敗致す!」
「やれるものならやってみなさい!?」
「写し、導く……!写導戦隊!カゲレンジャー!登場!いざ、出陣!行くぜ皆ぁ!」
一同は「応っ!」と言った。
「小癪なぁ!ショクーシュ!」
先程とは比べ物にならない数の人型の触手、ショクーシュが現れた。数だけでなく、圧倒的に強いショクーシュに悪戦苦闘した。そして五分が経った頃、シルバーの胸のタイマーが鳴った。
「しまった!残り時間が!」
「親父!ここは俺達に任せてノワールを倒してくれ!」
「分かった!」
ショクーシュの合間を縫って出て、シルバーはノワールに向かって行った。
「ノワール!」
「気安く呼ばないで!」
「お前を倒す!」
「やれるものならやってみなさい!?とさっきも言ったわよ!?」
「行くぞ!スワンアロー!」
スワンアローが放たれた。ノワールは飛んで躱した。
「鈍間!そんな攻撃、簡単に避けられるわ!」
「狙いはそこじゃない!」
「何ですって……!?か、体が……!?」
矢はノワールの影に刺さっていた。
「忍法、影縫いの術!」
「ぬ、ぐ、がが……!?」
「ラビットウィップ!」
ラビットウィップが更にノワールの体を固定した。しかし触手を伸ばし、新たに影が出来た所から攻撃をするノワール。
「バイソンナックル!」
バイソンナックルでやって来た触手を叩き落とした。
「ディアーソード!」
ディアーソードで触手を切った。
「ウルフスピアー!」
ウルフスピアーでノワールを貫いた。その衝撃で影縫いの術が切れた。しかしもう瀕死のノワール。
「ディアーソード!スワンアロー!ラビットウィップ!バイソンナックル!ウルフスピアー!合体!シンセイバイセイバー!ラスト十秒!行くぞ!シン!セイバイセイバぁああああああああああああ!」
カウントダウンが鳴り、シンセイバイセイバーはノワールを切り付けた。
「うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ぎぃやぁああああああああああああああああああああああああ!」
カウントが零になる直前でシンセイバイセイバーは最大出力を出した。出し切ると、変身が解除された。ノワールは力尽き仰向けに倒れたが、最後の力を振り絞って起き上がると「せめて最後のご奉公ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」と叫び、巨大化した。
「カラクリメカ、出動!」
カラクリメカが投影された影から出現し、五人はカラクリメカに乗り込むとカラクリ合体してカゲキングになった。そしてシンカラクリメカも出現し、ホエルはカゲウルフに乗り込み合体してカゲオージャーとなった。そこに無線が入った。
「俺も戦うぞ!」
「あれ?親父。変身時間は過ぎたじゃないか?」
「シンカラクリメカを使用する時は、カゲオージャーのエネルギーが切れるまでは時間無制限で変身出来るんだ!」
「シンカラクリメカは狼以外どうしてるんだ?」
「自衛隊がリモートコントロールしている!」
「そうか!じゃあ行くぜ!親父!」
「あぁ!」
二体のロボでノワールを攻撃。抵抗するノワールだったが、二体のロボは何とか巨大影縫いの術で動きを封じた。
「クッ……!動けない……!厄介な術め……!」
ノワールは無理矢理体を捩って影縫いの術を振り切った。しかしその一瞬の隙を逃さず、二体のロボはカゲキマルとシゲキマルを出現させ、合体させて二体で振り翳した。
「スーパーセイバイセイバーぁあああああああああああああああ!」
「この私が、この私がぁあああああああああああああああああ!?」
ノワールは切り裂かれ、元の大きさに戻った。一同はロボを降り、ノワールの下へと行った。変身が解けたホエルは封印の石を取り出し、ノワールを封印しようとした。ノワールは腰を抜かして後退りした。ホエルは構わず封印の石をノワールに向けた。
「ま、待って!?助けて!?」
「今更命乞いか?」
「そう!命乞いよ!助けて!?このままあの石に戻るのは嫌なのよ!」
「だからと言ってお前を見逃すわけにはいかない」
「それも駄目なのよ!」
「どういう事だ?」
「ここで戻ったら、封印どころか殺されてしまう!」
「仲間でそんな事をするのか?」
「する!あの男はする!」
「あの男?」
「そう!そうそう!そうだ!私達の組織の事を教えてあげるから、代わりに私を匿って!?」
「お前の言う事を信じる価値は?」
「私の力を半分、いや、四分の三渡すわ!それでどう!?」
「……どうする?皆」
「私達はただ美味しい物を食べたいだけなのよ~!ただそれだけなの~!助けて~!」
「私達、か……分かった。信用してやる」
「親父!?」
「今ポロっと言っただろ?『私達』と。そこに本音が混じってる。コイツの言う事は信用出来る」
「もしそれが外れていたら?」
「その時は、この世の終わりだ」
「私を信じて!?」
「……悪人でも殺しはしない。それが忍びの里、影の里の掟。そうだろう?」
「……そうだな、ホエル。俺もそう思う」
「無一郎さんも同意見か。皆は?」
「二人がそう言うなら、俺は良いぞー?」
「コンがそう言うならアタシも」
「親父がそう言うなら、俺も」
「皆がそう言うなら、俺も従う……」
「よし。じゃあお前の力の四分の三を貰うぞ?」
「はい!はい!はーい!良いわそれで!」
ノワールは力の四分の三を封印の石に吸い取られ、蛸の姿になった。
「あ、体残ってる」
「そりゃ力の四分の三を取るって約束だったからな」
「信用してくれてありがとう!」
「お、おう。っていうかこれがお前の本性か……」
「そう。これが私。只の蛸よ」
「只の蛸が喋るかよ」
「まぁ良いじゃないの!ささ、私達の事を話してあげるから!」
すると自衛隊が小さな箱を持ってきた。
「これを使って下さい」
「ありがとうございます」
自衛隊から箱を受け取り、ホエルはノワールに向き直った。
「一応居場所がバレないように目隠しと防音を兼ねて、この箱の中に入ってもらう」
「良いわ!それで!」
「じゃあこの箱に……」
ノワールは箱に入り、そして暫く移動させられた。その様子を甲虫が見て、どこかへ飛んでいった。
ノワールは地下シェルターの一室で箱から出された。
「ここは……?」
「それは言えない。さぁ、話をしてもらおうか」
「その前に、もう一つお願いがあるんだけど……」
「何だ?」
「私の部下を解放してあげて!」
「……そういう狙いか……」
「やっぱり封印……」
「待って待って!?違う違う!私みたいに四分の一だけ残してくれればそれで良いから!それだけでもお願い!」
「……もし不穏な動きを見せれば、今度こそ躊躇無く完全に封印するからな?」
「それで良いわ!お願い!」
「……分かった」
一同は今まで封印してきた闇光師団のメンバーを四分の一だけ介抱した。するとそれらは動物や魚、虫になった。魚達とノワールが歩み寄り、何をするかと思えば、抱き締め合った。
「おーいおいおいおい!お前達~!」
「マザー!申し訳ありませぬ~!」
「またお前達に会えて私は嬉しいぞ~!ごめんよ~!暗くて寂しかったろう~!?これからは私がここで一緒に暮らしてあげるからな~!?」
「ノワール様~!」
戸惑っていたほかの幹部の部下達も状況を理解したようでノワールを取り囲んだ。
「お前達もよく頑張ったな~!ブラックやダークやダルクにもお前達の功績は伝えてやれたら良かったんだがな~!ごめんな~!?」
「良いんですよ~!こうやって外に出られただけでも~!」
本気で泣き合う一同に、カゲレンジャーは心から彼らを許した。本当に、生きる為に、食事をする為にああいった事でしか腹を満たせずにいたのだと感じた。
「さぁ、話してもらおうか。お前達の全てを」
「分かったわ。皆、また後でね……?」
「マザー!」
「おい!お前達!マザーをどこへ連れて行くんだ!?」
「何。攻撃したりなんかしないさ。ちょっと話を聞くだけだ」
「そうなのですか!?マザー!?」
「そうよ。もう私達は人間達とは戦わないの」
「それがマザーのお気持ちなのですか!?」
「そうよ」
「そうですか……我々はマザーに着いて行きます!」
他の部下達も「私も!」「俺も!」と盛り上げた。
「じゃあ行ってくるからね」
「行ってらっしゃいませ!」
隔離された部下達は「まぁ、でも出られて良かったよな~!」「もうあんな暗い所はコリゴリだよ~!」「全部ノワール様のお陰だ~!」「マザー!万歳!」と喜んでいた。
ノワールは別室へ連れて行かれ、カゲレンジャーや政府の人間達に自分達の事を話し出した。
幹部構成は以下の通りである。まず自分、ボン・ノワール。人々の怒りを餌にする。正体は蛸。部下は太刀魚、鰻、鯰、黒鯛、メバル。そして次のダーク・ソウル。人々のストレスを餌にする。正体は蝙蝠。部下は梟、ハブ、ヤモリ。三人目はブラック・ガイ。人々の悲しみを餌にする。正体は甲虫。部下はゴキブリ、蛾、鍬形虫。最後の幹部はジョンノ・ダルク。人々の憎悪を餌にする。正体は猪。部下は狸、鹿。そして肝心要のボス、オドゥン・クリムジャ。闇があればそれで良いという考えの持ち主。闇があればそれだけで生きていける。正体は鼠。部下はハムスター、ショウガラゴ。
つまり纏めると、情報が正確であれば、後八体は敵を倒さなければならないという事だ。これで対策は取れる。これは大分アドヴァンテージがある。
その日は政府の人間が代わる代わる彼らを眠らせずに尋問した。カゲレンジャーの一同は帰って食事をし、風呂に入って寝た。
一方、地下ではオドゥン・クリムジャがいつものように鼠を使って何かの探索行動をさせていた。




