89, 音楽
「祭り日は毎年、いつも以上に音楽が聞こえてくるね。」
「確かにそうですね~。」
ハーディは周りを見回してみた。
ムーヴァは音楽の国と言われるだけあって、作曲家や楽団などがたくさん居る。今も屋台の横の小さなスペースや曲がり角、あちらこちらで楽器を片手に人々と歓談したり演奏する者がいる。
「あ、あそこのひと、楽譜を演奏者さんに渡してますね!!作曲家さんでしょうか。」
「こういう祭りは音楽関係の人々にとってある種の出会いの場なんだろうね。」
(出会いの場⋯⋯⋯。)
『シャルルさんって言葉選びが上手だなぁ』と思っていた時のことだった。ハーディ達が進んでいた方向から響いてきた音楽にふと意識が向かう。
「あっちから楽しげな音楽が。」
「気になるなら行ってみる?」
「はい!!」
「あっち人多そうだし霧も濃くなってきた、はぐれたらいけないから手を繋ごう?」
「あ、わかりました!!」
(私背が小さいですし、シャルルさんとはぐれたら絶対合流出来ないですもんね!!)
ハーディは差し出された手を握る。ハーディに合わせてかゆっくりめなペースで人の波を避けるように先導するシャルルについて行く。
(何故だろう。変に緊張します。)
ハーディは、イヴとなら沢山手を繋いだことはある。なんなら手を繋ぐのは楽しくて好きだ。怒られるの覚悟でイヴの腕にしがみつきに行くこともある。だが、今回は全く違う。
(私⋯⋯手汗出てたりしませんよね?!あぁ、心配になってきたら手がベトベトしてる気が⋯⋯。)
「ハーディ、あの人達?」
「ぐへっ!?」
「あ、ごめん。」
下を向いていたからいつの間にか立ち止まっていたシャルルに気づかず盛大に突っ込んでしまった。
「あ、この音楽です。」
「前の方行ってみる?」
「できそうですか?ここからだと人混みで何も見えなくて⋯⋯。」
「ここ通って⋯」
いつの間にか後ろに回っていたシャルルに優しく背中を押されながら前に進む。
演奏していたのは男女の2人組だった。不思議な絵の描かれた仮面を着けた女性の方は、吹いて鳴らす楽器のようなものと弦楽器を混ぜたような見たことのない楽器を、男の人の方は、アコーディオンを演奏していた。
「え?!アルトさん!?」
「知り合い?」
ハーディの呟きが聞こえたのか、男の人の方⋯⋯⋯、アルトが一瞬顔を上げた。ハーディと目が合って⋯そして、ニコリと微笑んで演奏に戻る。
(私の周りの人達って、多才な人が多いですねぇ⋯。)
ハーディは『自分も何かに挑戦してみようかな?』と、少しだけ思ってみた。多分、失敗するだろうが。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
【追記】
来週くらいまで更新をお休みします。すみません。




