87, 祭り讃える。
「うわぁ!!」
ハーディは窓を開けて感嘆の声をもらした。薄紫色の霧に包まれた空。それは、きっとこれから濃く、濃く街を覆うのだろう。
「祭り日です!!」
ハーディは手早く着替えるとお店の前に小さめの荷車を用意した。
「今回はどのくらいの期間になるんでしょう!!」
○△○
「祭り日。」
「それは、世界のお祭り。」
「種族の関係ない、万物の祭り。」
「紫色の魔力の霧が大地を包み、すべてを癒す。」
「紫色の魔力の霧が、敵も味方も曖昧にする。」
「さぁ、みんなで肩を組もう。」
「今日だけは、みんな仲間になろう。」
「さぁ、みんなで酒を酌み交わそう。」
「今日だけは、ちょっと贅沢しちゃおう」
「でも⋯⋯⋯」
「これだけは守ってね。」
「「今日だけは、争いをしたらいけないよ」」
「何故なら、紫色の霧に紛れて、存在ごと消されちゃうから。」
「濃霧に紛れて、何処かへ連れ去られちゃうから。」
⋯⋯⋯
○△○
「皆さん演技がお上手で⋯。」
ハーディは簡易の舞台の上で劇を披露し終わり、お辞儀をする子どもたちに拍手を送った。今彼女たちがしていたのは、祭り日を讃えるもの。全世界で唯一、改変なく共通する物語。土地事情丸無視の物語。
「この日、最初の1回だけのこれがいいんですよね。」
この公演は、2回目以降は無い。1年に1回だけの劇。もちろん場所を移動すれば見ることは出来るが、あまりそれをする人は居ないだろう。
「嬢ちゃん、ジュース1つくれ。」
「はーい。何味がいいですか?私はこの、祭りの雰囲気とマッチのブドウジュースがオススメです。」
「お!本当だ、紫。よし、これくれ。」
「はーい。中銅貨1枚ですね。」
「おう。」
公演を見終えた人がワラワラと広場の端のほうへ寄ってくる。
「ジュースいかがですか〜!!祭り日と同じ紫色。ブドウジュースありますよ〜!!」
こういうのは声を張り上げて自分の存在をアピールしなさいと果樹園老夫婦から習った。
「お、ハーディさんじゃん!!」
「あ、ヨハンさん!!」
訓練の時の軽装に帯剣し、両手に大量の串焼きを持っているヨハンがハーディに近付いた。
「早速商売してるっすね〜。」
「はい!!ヨハンさんはお休みですか?」
「いいえ〜そんなことは無いっす。たとえ祭りでも、霧に存在消されても、国は体裁的に争いに備えとかないとなんですよね〜。まぁ、少〜し内部事情言うと、軍部はサボりが黙認される日って感じっすよ。」
「そうなんですね⋯。」
「あ、ただ昨日、偶然副団長が団長に強制的に休み取らせてたから、団長は非番ですよ~。もしかしたら会えるかもですね。」
「会えたらうれしいですね。」
そしてしばらく雑談し、ついでにブドウジュースを購入し、ヨハンは去っていった。
○△○ オマケ ○△○
「ハーディ、居る?」
その頃、シャルルは居座り亭の扉を叩いていた。
「⋯⋯。」
叩いていた。
「もしかして、出かけてる?」
シャルルがハーディと出会えるまであと30分。
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