83, 誤魔化す気持ち
「さぁ!戻りましょう!!」
「何で毎度毎度見つけられるわけ?」
「シャルルさんが優しいからです。」
「どういうこと?」
そのとき、ハーディはシャルルと詰所に向かって大通りを歩いていた。
「おい誰か!!盗っ人だ!!そいつを捕まえてくれ!!」
後ろからそんな声が聞こえて、ハーディは振り返る。
「ハーディ、動かないでここに居て、わかったね?」
「⋯ぇ?」
その声の意味を理解したとき、いつの間にか横に居たシャルルは消えていて、目の前で男を取り押さえていた。
「この人がやったって見た人。」
「「⋯⋯⋯。」」
複数人が手を挙げたのを見て、シャルルはまた捕らえた男に向き直る。
「おじさん、盗まれたのは?」
「屋台の金だ。」
「お金⋯⋯⋯。あ、この布の袋?」
「そう、それだ!!」
何処からか取り出した縄を慣れた手つきで男に巻いていく。
「や、やめろよ」
「騒がないほうが身のためだ。お前を窃盗で憲兵の詰所へ連行する。」
「しょ、証拠は何だよ?」
「さっきの目撃証言じゃ足りない?」
シャルルが指を鳴らすと、辺りから水が集まってきて、人型が出来ていく。
「水は、何でも知っている。」
人型は屋台の前に歩いていくと、宙と話すような素振りをする。そして、何かを奪い去るような動作をして消えていった。
「話していた相手の店主と金はここにあるから表現の指定はしなかったけど⋯⋯。」
シャルルは男の胸元を掴んで立たせる。
「団に戻ったら、もっと詳しく再現してあげるよ?」
「⋯⋯。」
周囲から歓声が湧いた。ハーディはシャルルの一挙手一投足を見逃すまいと見つめ続ける。
(シャルルさんかっこいいな。すごいな。)
「ハーディ、ごめん。待たせた。」
「すごかったです!!シャルルさん!!」
シャルルは男を引きずりながらハーディに近付く。
「何かあると危ないから、今日はここまでで良い?」
「そりゃあ、お仕事の邪魔はできないですし、大丈夫ですよ。」
「というか、ちゃんと動かず待ってくれてたんだ。偉いね。」
シャルルは男の縄の先を掴んでいない方の手でポンッとハーディの頭を撫でた。
「じゃあ。」
「⋯⋯⋯。」
ハーディはシャルルが人混みに消えていくのを見送り、そして終始無言で家に帰った。ソファーに深く腰掛けて、深呼吸をする。
(何でいつも頭を撫でてもらっているのにこんなにドキドキしてるんでしょう?褒めてもらえたから?あ、
シャルルさんがすごい活躍をなさっていたから?あ、きっとそうですよ?!)
ハーディは頭をワシャワシャと掻き回した。
「ぇ⋯⋯⋯⋯えぇ⋯⋯⋯。」
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