76, 疎外感
「ねぇ、ハーディ。」
家に帰ってソファーでまったりしていると、突然シャルルが近づいてきた。彼はハーディの横に座るとハーディを見つめた。
「どうしましたか?シャルルさん。」
「頭撫でて。」
「あ、頭を撫でるんですね!わかりまし⋯⋯⋯⋯⋯⋯ふぁっ?!へ?頭を?」
(なな、な、な!?何事ですか!?)
ハーディはついうっかり出しかけた手を直前で止める。
「ほら、早く。」
シャルルはハーディの肩にグリグリと頭を押し付けた。グリグリされても痛くならないのは、彼が力の加減をしているからだろうか。
「⋯⋯。」
ハーディはそっとシャルルの頭を撫でてみる。手に絡みつくことも無いふわふわととした髪の毛は、ハーディの手に合わせて上下する。
「ふへ。ありがとう。」
「⋯⋯⋯、何か、嫌なことでもありました?」
「へ?」
ハーディは立ち上がり何処かへ行こうとするシャルルの腕を掴んで問いかけた。
(お母さんとか、お父さんに会いたくなったんでしょうか。)
撫でてもらいたくなる心理は、必ずしもそうとは限らないが、安心を求めている場合が多いと聞く。(イヴちゃん情報。)
「私は何か、あなたを不安にさせてしまうようなことをしてしまいましたか?」
「い、いや、別に」
「教えてください。」
「⋯⋯⋯⋯⋯。」
シャルルはしばらく考える素振りをしたが、やがて再びソファーに座った。
「ハーディ達が戻ってきて欲しいと思ってるシャルルは、どんな奴なの?」
「⋯え?」
「俺、ここに居るの、迷惑?」
ハーディは何故そんなことをシャルルが言うのかを考えて、すぐに原因に辿り着いた。
『早く治ると良いですね〜。』
『あら、ちっちゃなシャルルさんに戻ったんですねぇ〜。』
『・・・』
『・・・』
『・・・』
(私たちの発言のせいだ⋯⋯。)
「あなたが迷惑だとは、微塵も思っていません。でも、本来あなたが居るべき場所は、ここではないんです。」
「それはわかってるけど」
「あなたがいるべきなのは、お母さんとお父さんに愛されて、ちっちゃなゾエさんと遊びに出かけるような、そんな場所だったんです。」
今目の前にいるシャルルは、過去のシャルルだ。シャルルが紆余曲折を経験する過程の人格。でも、事故だとしても、彼も今を生きている。
(なんだか、言葉がでてきませんね。)
急に両親や本来の友と引き剥がされたようで、不安だっただろう。頼った大人に、存在を否定するようなことを言われて、傷つかない子供なんているわけ無いじゃないか。
(そんなことに、気づけなかった。)
「あなたと入れ替わるように、私たちの知るシャルルさんが居なくなっちゃったんです。」
「やっぱり、俺のせ」
「違います。魔力暴走は誰のせいでも無いんです。きっと、今もあなたを探している人達が居ます。私達みたいに、本来のあなたを探している人達が。」
「⋯。」
「なんか、聞こえは良いでしょうけど、結局あなたを否定しているだけですね。ダメだなぁ。巷で流行の小説の主人公なら、きっと上手いことを言えるんでしょうけど、私には無理そうです。」
「確かに、今の俺を否定してるだけだね。⋯⋯でも」
シャルルは呟いた。
「俺は、真剣に考えて、俺のために紡いでくれたハーディの言葉が、嬉しい。」
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